8話 ースフィア編ー 初めての夜
その夜
食卓に対面に座るスフィアとシトリーの間にはパンと水。
シトリーは悲しい顔でスフィアを見つめた。
「ありがとう、スフィア…本当にごめん」
スフィアはニコリと、
「いいよ」
シトリーは目の前のパンを見下ろしながら、
「最後の夜が、パンだけって寂しいな」
「まだ最後って決まった訳じゃないからな」
シトリーは、更にうつむき、
「オレ情けなくてごめん…本当にごめん」
スフィアは優しい顔で、うつむくシトリーを見ながら、
「もう謝るな、シトリーらしくない、さあ食べるぞ」
スフィアはパンをちぎりモグモグ
「うまい!」
と笑顔。
それを見たシトリーは、
「ははは、はは、スフィアはは」
笑いながら涙を浮かべ、
「戦争なんてくそ…」
「戦争が嫌いなのか?」
「あたりまえだろ? 父さんもスフィアも戦争で…くそ」
スフィアは腕を組み、真顔で
「ワタシはそう思わない、戦争があったからシトリーに出会えた」
うつむいたままだったシトリーは顔を上げて、
「何を言ってるんだ? スフィア」
スフィアは腕を組んだまま目をつむり、
「何かのために戦って死ぬことが悪いのか? 苦もせず動物の肉を食べ、のうのうと生きる事が正しい事なのか? 戦争は、次ぎに繋がる事もあるんじゃないか?」
「俺には分からないよ」
腕を組んだま目をつむるスフィアは少し考えて…
「シトリーの嫌いな戦争を無くすには、この星の全ての人間に絶対的な『革命』を起こす必要がある。 ようするに、絶対的な何かによる支配だな。 突如、空を飛び現れ、見た人間は死んでしまうような存在 まあ…人間が見れないモノ? 神とかになるのかな? 見た人間が存在を許され無いならワタシはそれの「番犬」にでもなって『革命』を手伝うか」
イメージしてフフっと笑いだしたスフィアを、シトリーは悲しい目で見つめ、聞こえない様にぼそぼそと…
「壊れた…? 俺のせいで…? ごめん」
目を開けたスフィアは、悲しそうなシトリーを見てニヤリと、
「安心しろ、シトリーは絶対に殺さないからな」
「はは、隣のオバさんも殺さないでくれよ。 いつも服かってくれるから」
スフィアは真顔で、シトリーを見つめ、
「分かった、約束する」
「ははは、なら金持ちのブタモンドさんも殺さないでくれ」
スフィアは首を振りながら、
「アイツは駄目だ」
シトリーは、「ぷ」っと笑って、
「相変わらず、面白いなスフィアは?」
「そうか?」
シトリーは立ち、棚から、いつも飾っている様に置いていた酒瓶を持って来た。
「これ、開けちゃおうぜ」
瓶には笑顔の猫のラベルが貼られていた。
「ブドウ酒? いいのか?」
「親父の酒だけど今夜、開けよう。 俺たちはもう15歳だ、そろそろ酒を飲んでもいいだろう」
「シトリー? …飲んだ事あるのか?」
「ない、スフィアもだろ?」
スフィアは緊張するようにブドウ酒を見て…
「もちろん…」
木の器に二人は酒を注ぎ合い、器を手に取り、
シトリーが、
「それじゃあ乾杯」
スフィアはシトリーを見つめ、
「なんに乾杯する?」
シトリーが思いついたのは、
「じゃあ、明日、兵役に就くけど、その先…この星に起きる「スフィア革命」に」
スフィアは嬉しそうに、
「スフィア革命? いいなそれ」
二人は器を重ね、
「スフィア革命~ かんぱ~い」
「あっうまいなスフィア」
「コレが酒か? おいしい」
それから1時間以上、酒を飲みながら出会ってからの昔話で花を咲かせていた。
「そうそう、それからずっとベリーショートだよな? ははは…くっそ燃えたな? クソ髪、ははっ」
「そんなにおもしろいか?」
その時、シトリーが
「横に座っていいか?」
「うんいいけど、どうした?」
「いや…」
シトリーは横に座った。
スフィアは目の前のシトリーの目を見つめ、
「どうした?」
お酒の力が、後押ししたシトリーは、スフィアの唇に遠慮がちな口づけをした。
すっと口を離したシトリーは、
「ごめんスフィア」
無表情なスフィアはシトリーを見つめ
「酔っているのか? シトリー?」
「酔ってないよスフィアが好きだ…スフィアは? 俺の事を?」
スフィアは優しい顔で、
「言わす必要があるのか? がんばれシトリー」
「スフィア?」
スフィアは微笑み…
「奪え、いや…奪ってくれ…ワタシを」
「うん…」
シトリーはスフィアの手を取り、
「ベッドに行こう」
誘われ立ったスフィアは、
「シトリーお願いがある」
シトリーは不安な声で、
「なっなに?」
「優しくして」