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86話 ースフィア編ー この身体…



 zzz… ん?



 鳥のさえずりで目覚めた。まだ早朝…

 重い酒やブドウ酒を飲みすぎて…知らぬ間に、茶屋のテーブルにもたれたまま眠ってしまったようだ。


 向かいで、オールバックのベン髪、鋼の様な顏のラドンが座っている…

「お目覚めで?」


「お前? 眠ってないのか?」


「スフィア様の安全のために、こうして番をしておりました」


「ありがとう…寝首を掻かれたら終わりだもんな…」


「はい、たとえ武神スフィア様といえども」


「ワタシは神じゃないよ、ワタシの神は別にいる」


「昨夜、おっしゃった…スフィア様の身体から出てきた『雷神』?」


「ああ…この星を統べる雷神の前では、ワタシは番犬でいい…お前は…?」


「蛇」


「なら、ワタシとお前は雷神を守護する『犬』のスフィアと『蛇』のラドンだな」


 ラドンは両コブシを重ね、

「承知」

 コブシを解いた後。

「スフィア様…いい匂いがしますね?」


「ルカという香水だ。ワタシも気に入っている」

 ワタシはサッと芦毛の馬に乗り、

「ラドン行くぞ、雷神たちの元へ」


 ラドンもシュッと黒馬に乗り、

「お願いします」




 ワタシが前で、馬を走らせる…

 夕刻には、都市ルーベラを越えて水車小屋が見えた。

 小屋を指差し、

「アレが我々の拠点だ…」

「なるほど…」

「小さくてボロいけど、まだ住める」


 ワタシの存在に気付いた、我が子シトリー(11歳)が走ってきた。

「おかあさん! おかえりなさい!」


 ワタシは馬から降りて、

「シトリー、ただいま」

 帰りの道中で買った、イチゴパイの入った袋を子に渡す。早速、袋を開けて、

「イチゴパイ?」

「好物だろ?」

「うん!」


 喜ぶ、我が子をナデナデしながら、

「ラドン、ワタシの子シトリーだ」


 ラドンは馬から降りて、

「クスクス、元気な男の子ですね」


 ワタシはシトリーに、

「アモンと雷神は?」


「修行に行ってる。ボクは家で本を読んで勉強してた」


「そうか」


 馬を引き、水車小屋へ…中を覗き…

「う~ん…ラドンの寝るところ…あるかな…」

 ラドンは笑い、

「私はルーベラの街で借り家で住みます」


「なんか悪いな…(きん)なら、たくさんある、家賃は出す」


「感謝します」

 

 その時、雷神とアモンが帰って来た…


 ほう… 雷神が血だらけとは… 

 なかなかハードな修行をしたようだな…


 ラドンは、雷神とアモンに頭を下げ、

「マスターアモン、雷神、初めまして、ラドンと申します」


 アモンは、ラドンを見た後に、ワタシを見ながら、

「スフィア? この男は?」


「登龍門最強のラドンだ」


「ほえ~? この男があのラドン? なんでココに来たんじゃ?」


 ラドンは、その問いに、

「スフィア様の革命に加わりたく、ワタシが配下入りを所望いたしました」

 アモンは、その答えに、

「登龍門に行って、ラドンを獲得するとは…さすがはスフィアじゃの~、ところで登龍門トーナメントの結果は?」


 ワタシは残念に目を瞑り、

「準優勝だ」


「ほえ? スフィアより強い者がおったのか?」


「まあ、そういう事だ、まだまだ精進しないとな」


 ワタシはラドンを見下ろす血だらけの雷神を見上げ、


「雷神…まだ動けるか?」


 雷神はラドンから、コッチを見下ろし、

「無論…」


「ならば、ラドンと実戦練習といこう…ラドンいけるか?」


「承知…」



 丁度いい岩に腕を組んで座り、雷神とラドンの戦いを見る…


 実戦練習と言ったのに本気で戦う二人の闘争心に…この身体が熱くなる…



 ワタシはもう36歳だ…


 そろそろ、革命のために動かないと…


 おそらく、この身体がしっかり動くのは後10年あるかないか…


 それまでに、燃え尽きたい…


 この闘争心と共に…

 



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