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85話 ースフィア編ー スフィアへの褒賞


  「先生! 治りますか!?」


  「ありったけの! 治り草を持って来い!」


  「はい!」




 








 

 …ん? ここは?


 ひゅいっと背を上げると… ベッドの上… あ? グルギュラの屋敷だ。

 両手には布がグルグル巻き… 嗅ぐと治り草の匂い。

 布の中の両手は動く感触。


 これは、かなりの日数を眠っていたな…

 両手のグルグル巻きを外し、

 腹に巻かれている布を触る…治ってるぽいな。


 起きて、

「おーーい! 誰かいるかー!」


 反応はない…

 お腹すいた…


 誰も居ないから、近くにかけてあった『鉄仮面』と背中に刺繍されている道着を着た後に、そばにあった、ワタシの(きん)の入った布袋を手の取り、屋敷の外に出る。

 外の馬置き場に、ワタシの馬があったから水車小屋に帰るために乗ると…


 お? 近くの登龍門広場に人がたくさんいる…


 行ってみようか。



 長い龍が一周する登龍門広場には登龍門の全ての武闘が集まっているようだ。

 

 龍の頭の上には、老人と鉄仮面グルギュラが見えた。


 老人の演説中だった。


《 ワシは老いた! これから登龍門は! ならず者国家の初代聖騎士グルギュラが()べる! 》


 老人は武闘を見渡して、


《 異論はあるか!!》


 広場の武闘共から、

「ない!!」

「世界中から武の極みを目指す者が集う登龍門は! グルギュラの時代だ!!」

「グルギュラ!! グルギュラ!! グルギュラ!!」

 

《 静粛に!! 新頭領グルギュラから言葉がある!!》


 シーーンっとなった後で、

 老人は立ち位置をグルギュラに譲った。

「おれは! グルギュラ!! と言っても、皆、俺のことを知ってるだろうけどな!! 俺の聖剣を持って来い!!」


 すぐに、左手の無い懐かしい顏の男が剣を持ってきた。

 それを手に取り、掲げ、

「これは! 新しくできた! ならず者国家の聖剣『登龍』だ!!」


 周りの武闘は、新聖剣『登龍』を見て、

「おーー!!」

 興奮している。


「腕に自信があるヤツはいつでも、この聖剣を奪いに来い! 強いヤツが聖騎士やればいい! それが俺のやり方だ!! もちろん! 誰にも負ける気はしないがな!!」


「よっしゃ!! 挑んでやるぜ!!」

「俺が取る!!」

「いや俺だ!!」


 ワタシは馬上で腕を組み、

「ほう…とても良い演説だ…騒がしくなってきたな…フフ」


 続いてグルギュラは、

「俺はこの歳で童貞だ!! もう40だ!!」


 広場の武闘はシーーーンっとなった。


 グルギュラはコッチを向いて、

「俺は20年以上前に女にうつつを抜かし! 戦地から逃走した事がある! それが原因で多くの仲間が死に…色々とあった…それから戒めとして女を絶っている…まあ生まれつき女と縁が無いのもあるがな…だがもうチャンスがあれば童貞を卒業する!!」


 その言葉は… ワタシに言ってくれているのか?

 

「俺はもう…逃げねえ!! 全ての事から!!」


 広場は歓声に包まれた。


 馬上のワタシはグルギュラへ右手を出し、グッドポーズを決めた。

 呼応するように、

 グルギュラはワタシの方を向いたまま胸に右手を当て、小さく頭を下げた…



 さてと… 行くか…

 

 聖騎士グルギュラ、がんばれよ。



 

 馬を走らせる…



 登龍門を出る…


 しばらく走ると…


 あ?


 ちょうどいい、茶屋がある!


 ごはん食べよう!


 馬から下りて、茶屋の前のテーブルに座ると、

 若い女が、テーブルの上に水を置いてくれて、

「なんにしましょう? ウチは温かいココアがおススメです」


「そんなものより、なにか食べる物ある? 金ならたくさん持っている」


「魚のスープ、卵と野菜のソテー、イノシシの塩焼き、キノコのパピヨットです」


「山の中なのに随分と御馳走だな? 全部、欲しい」


「はい」


 若い女は、調理場へ、

 どうやら夫婦で営んでいるようだ。

 しかし、こんな山の中で営業するなんて、ほかにお客さん居ないし…


 トットットット


 馬が走ってくる音がした。

 人を乗せた馬は、店の前に止まる。

 

 おいおい…

 乗っているのはラドンだよ…


 馬から降りる。こっち来る…手には(かめ)を持っている…

 向かいに座った…


 殺し合いのリベンジマッチか? しょうがない男だな…フ

 ワタシはラドンを笑いながら見つめ、


「はやる気持ちは分かるがココじゃダメだ、店に迷惑ががかかる…少し待ってろ、後で相手してやる…手前に丁度いい場所があった」


 ラドンはドン!っとテーブルに瓶を置いた!

 後に、テーブルに両手と頭をガン!っとつけて!


「スフィア様!! 俺に盃を!!」


「はあ~?」


 ラドンは両手をつけたまま、顔をあげて!


「この俺っ…あ? この私を倒した後に「殺す価値も無い」と言い残し! 聖騎士アヤ戦での鬼神の様! 決勝では不戦勝を拒否し鉄仮面グルギュラを鼓舞!!  合気の最終奥義『空』を極めし…あの伝説のハルゴ砦の奇跡のスフィア様!!」


「弟子にしたらいいのか? だけど…お前、もう充分過ぎるほど強いぞ」


「違います…数日前、私がグルギュラ屋敷にスフィア様の見舞いに行った時に、グルギュラに打診されました…」


「なんて?」


「スフィア様は革命を起こそうとしていると…手伝ってみないかと」


 ワタシは腕を組んで、少し考えて、

「確かに登龍門最強のラドンが来てくれたら、こっちとしてはありがたいな」


「この星に革命…本気ですか?」


 ワタシは腕を組んだまま、ニヤリと笑った後、

「本気だ…この星の全ての聖域をぶっ壊す…」


 ラドンはキラキラの瞳+物凄い真顔を向けて来た後に、勝手に木の器に入っていた水を飲み干して、持参の瓶の酒を注ぎ、ワタシの前に置き、


「ぜひ盃をお願いします…スフィア様…」


「ああ…ラドン…よろしくな…」


 ワタシはブドウ酒どころじゃない重い酒をグッと飲み干し、盃を返し、注ぐ。

 ラドンはワタシの左目を一点集中しながら盃を飲み干した。


「俺の登龍門はスフィア様にある…」


 そうボソッと言った後に…

 店の若い女が、頼んだ料理をテーブルに置いた。

 料理を見たラドンは、物欲しそうに、

「御馳走ですね」


「お前も食え、ラドン」


「ありがとうございます」


 ワタシは店の若い女に、

「ごめん! お箸もう一つと取り皿一つ!」


「は~い」


「それと持ち込みだけじゃ悪いから、酒も頼む!」


「はい! ありがとうございます! ちょうど良い品のブドウ酒があります!」


 その後は、酒と御馳走を食べながら、

 ラドンと革命の話と、闘争について語る…

 すごく楽しい時間だった。


 ほかに誰も客は来なかったから、

 夜に、店の夫婦も呼び、一緒に飲んだ。


 小柄な店主がワタシとラドンのサインが欲しいって言ったから、

 生まれて初めてサインというモノを書いた。

 あ? しまった…初めてだから…左隅に小さく名前を書いただけだ…?

 すぐに、ラドンも同じ紙にサインを書いた。

 すぐに店主はサインを書いた厚い紙を、店に飾った。



『 スフィア  ラドンは


  何があっても最後まで


  スフィア様についていく 』


 


 ラドン… ありがとうな





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