80話 ースフィア編ー 登龍門 2
影武者鉄仮面の傍に落ちている斧を拾い、上を向き振りかぶり
「グルギュラ! 下りて来いよ!」
天井のギッギッギ…という音が聞こえる方へ!
「早く出て来い!」
斧をぶん投げる!
斧は天井にズバ!っと突き刺さった時、
「うわ!! やめてくれスフィア!!」
という…懐かしい声がした。
「早く出て来い! 後5! 4! 3! 2…」
カウントダウンを始めたら、天井の一部がカパっと開き、上から縄ハシゴがヒュル~と垂れて、ゆっくりと鉄仮面が下りてきた。
丸みにある黒い鉄仮面の口の所は顎まで開いていて、さっそくタバコに火をつけ吹かし始め、
「久しぶりだな、スフィア」
「なんで、そんな仮面をつけてるんだ?」
グルギュラは、影武者を見て、
「イメチェン。 そんなことより、まずはコイツの治療が先だって…おい! 誰か!」
下から上がってきた二人の弟子に、
「治療してやれ!」
「へい! 師匠!」
影武者を運ぶ。
グルギュラはコッチを向いて、
「あの影武者を覚えてないか? ハルゴの戦いで俺の部下の左手の無い男だよ」
「ああ~…アイツか?」
豪華な椅子にグルギュラは座り、
「なんでココに? まさかお前…明日のならず者国家初代聖騎士決定トーナメントに?」
「そうだ。 聖騎士に興味は無いけどね」
鉄仮面グルギュラの口角が上がり、
「スフィア…俺はもう昔の俺じゃないぞ…」
ワタシは腕を組んでグルギュラを見つめる。
「ほう…」
どうやらハッタリでは無いな…
見つめるワタシに、
「お前…なんか変わったな? なんというか…髪とか歳じゃなくて」
「母になったからな…ん? 一緒に逃げた金髪の女アビゲイルは?」
「あの後、すぐに逃げられた…」
「やっぱり」
グルギュラは屋敷に泊めてくれた。
その夜は、明日がトーナメントだから酒は無いけど、
色々と話した、二人のあれからの事、あの時の事、
最後に、土下座で謝ってきた、
「もういいよ」と返した。
「本当にすまない」と返してきた。
翌日の早朝…
屋敷の前にグルギュラが弟子30人以上を引き連れて、
「油断するなよ、スフィア…あ? じゃなくてドッグ」
「ああ…」
馬で近くの登龍門広場へ行く。
着くと、すでに500人くらいの…武闘共が…
おそらく聖騎士の地位を目指して集った、ならず者国家以外の武闘もいる。
臨時馬置き場に、馬を置き、
「オープン参加者はこっちに!」
という声のする方へ行くと、テーブルの上には名簿表が置かれている。
「名前を書けばいいのか?」
「書いて!」
『DOG』
と書いたら、
「それじゃあ、中に入って!」
受付を済ませ、広場に入る。まだぞろぞろと名簿に名前を書く武闘がわんさか。
だいぶ待たされる…ワタシはストレッチをしながら、
「凄い数だな…みんなそんなに聖騎士になりたいんだな…」
隣の太り切ったデカいデブが、
「おい! 女! 試合にワンピースだと! お前からブッ倒してやるからな! ブヒヒ!」
ワタシは見上げ、
「ならワタシも約束しよう、お前からブッ倒してやる事を」
デカいデブは、ゆっくりと力強くキルユーポーズをワタシに決め、
「俺はブッチャー…後悔するなよ…俺は昔は、あのドトール闘技場の王者だったんだぜ…」
「あ? あいつか?」
「ブフフ…2秒だ…2秒でブッ壊してやる…」
無視して、受付を見る、そろそろ…終わりそう。
最後の一人? なんだ~? あの恰好?
グルギュラといい…最近は顔を隠すのが流行っているのか?
まあ…ワタシも長い髪で右目を隠しているけど…
顔を隠す赤のマスクに大きく『Z』と黒で書かれた鎧を着た人間がラストだ。
広場を一周する長い竜の石像の頭に立つ老人が大声で、
《 今ここにる1287人のうちトーナメントに入れるのは2人! トーナメントは8人制!》
さすが腕自慢の集まり…会場は無反応…驚きもしない…
《 試合形式は!! 登龍門名物!! 金玉狂乱闘争撃!! 》
周りから、
「あれか…」
「でも殺戮無しだよな…?」
《 1時間後! この金の玉二つを持っていた者二人が予選突破! 言っておくが! 今回に限り人を殺めた者は即刻失格!!‥‥では始めい!!》
老人が 一個の金玉をビューーーンと投げる!
年の割にすごい肩だ。落ちた所で争いが始まる!
もう一つの金玉も振りかぶって…
お!? コッチ来た!!
来る!
隣のブッチャーが右手一本で飛び取った!!
「ブヒヒ!! もう誰も奪えねえぜ!!」
飛びながら! 握っていた左手から! 粉を撒く!
ワタシは瞬時に離れたが、浴びた武闘は、
「息が…ぜえぜえ…」
「呼吸が…苦しい…」
「ブヒヒ!! 酸欠粉はまだまだあるぜ~~」
周りの武闘達に、大きな袋を見せつけた後にワタシを見て、
「おう! 良く逃げたな! ワンピース女!! かかってこいや!」
さてと…どうするか…今、アレを倒しても…まだ一時間あるしな…
気張っても体力の無駄だ…
背を向け歩くと…前に『Z』マスクが居た。声をかけて来た。
「戦わないのか? あんな雑魚に挑発されて悔しくないのか?」
声が女? 右手には鉄の棒を握っている。
ワタシは腕を組みながらZマスクを見つめ、
「金玉は2分前くらいに取りに行けば問題ない。体力の無駄だ。」
「でも、それじゃ面白くない」
「なに?」
ブッチャーに、鉄の棒先を引きずりながら、向かうZマスクの後ろ髪を結んでいる。
Zマスクに気付いたブッチャーは、
有無言わさずに、粉を投げる!
残像が見えた!
なんて速さ…?
おそらくワタシより…速い…?
残像の先に残ったモノは…両足を砕かれもがくブッチャーと、
金玉を左手で、ポンポンするZマスク…
恐ろしい剣術…
直感がする…
意図は分からないけど…
顏隠す…あの女…おそらく…
聖騎士黄金世代の一人の…
Ⅹか… アヤ…




