79話 ースフィア編ー 登龍門 1
登龍門で行われる、ならず者国家の初代聖騎士決定トーナメントの前日…
水車小屋では…
家族が見守る中、巨体の雷神は4メートル以上もあるから小屋に入れないけど…
ワタシは聖剣ステラジアンを置き、
「ステラジアンは置いていく」
アモンはステラジアンを見て、
「うむ、万が一、それで、アナ帝国の聖騎士『ググ』の従者にスフィアとバレても大変だし、ついカッとなって、ソレで殺しちゃうかもしれんしな…髪はどうする? 切るか? 戦う時に長くて邪魔じゃろ?」
「大丈夫、長い間、髪で右の隻眼を隠すのにも慣れているしね」
シトリーが笑顔で、
「おかあさん! お土産買ってきてね! お菓子がいい!」
ワタシは頭をナデナデして、
「はいはい、ちゃんとアモンと修行するのよ」
「うん!」
金や化粧品などが入った袋を持ち、外へ出る。
ほりの深い雷神の目が、ジッとワタシを見下ろしている…
見上げ、
「雷神? お前も戦いたいのか?」
「無論…」
「残念だが、まだその時では無い。 ワタシの居ない間はとにかく走りまくれ」
「承知…」
「帰ってきたら、ワタシが鍛えてやる」
雷神は頷いた。
馬に乗り登龍門へ走る。
後ろから「がんばれー!」とアモンの声が聞こえた。
右手を上げて応えた。
最寄りの都市ルーベラの服屋に入る。
さてさて…試合用はどんな服装にしようかな…?
「動きやすそうだしコレがいいな、白しかないか…返り血が…まあいいか」
白のワンピースを試着室で着て清算した。
再び馬に乗り走る。
10時間ほど走って…
向こうに巨大な風船が見える…立てに大きく『登龍門』と書かれている。
登龍門の周りには野営する人たちでたくさんだ。
着いた…
武の極めを目指す者が集う登龍門は町だ。 町のどこでもが戦い場所と聞く。
ただ今回は町の中央の、長い竜の石像が一周している登龍門広場が試合会場。
明日の試合会場を馬に乗ったまま見て回る…
一周している長い竜の石像には名前が彫られている。
『 XXX年 4月13日 ヴィオラ 』
『 XXX年 4月16日 ザッキオ 』
なるほどね…さすがは登龍門…武の極めを目指し死んでいった者たちの名か…
竜にズラーっと数えきれない数…彫られた穴には血の跡がついている。
死んだ者の血を擦り付けるんだろうね…
ん?
真上の…竜の頭に…長身の男が腕を組み、まっすぐ立っている。
風になびくオールバックのベン髪… こっちをジッと見下ろしている。
当然、目が合う… 鋼の様な顏だ…
一瞬で分かる… 世界最強と呼ばれる男 ラドン…
見上げながら、
「ラドンか?」
「お前は?」
ちょっと考えて、
「ドッグだよ」
「いぬ? クスクス…いい名前だな…俺は『大蛇のラドン』と呼ばれている…」
ラドンは高さ6メートルくらいの所から、スッと飛び降り、
ワタシの馬の前に立ち、鋭すぎる眼差しを送ってきた…
「明日は出るのか?」
「もちろん、聖騎士には興味無いけどね」
ラドンはパッパッと、ワタシの右足と隠している右目を見て、
「右目と右足が不具で出るのか?」
「ああ、まだまだ動けるからな」
ラドンは背を向けて、
「俺とグルギュラはシード…必ず上がってこい…フッ」
え? いま?
グルギュラって言った?
「おい! グルギュラを知っているのか!?」
「鉄仮面の名はグルギュラだ…赤い屋根の3階立てがグルギュラの家だ…」
「ありがとう」
「フッ…グルギュラは用心深い男だぞ…」
ラドンはゆっくりと去る。
「赤い屋根か…ん?」
すぐ見つかった…
馬を蹴り、向かう。
途中に…
上空の巨大風船と繋がるロープを、脂汗を垂れ流しながらも…必死の形相で掴むイカツイ顏した『スキンヘッド』の男がいた。 周りのよそ者から、
「登龍門の入門テストだって、3日間、ずっと飛ばない様にしてるんだって」
「飛ばしたら?」
「しらない」
「もう限界そうだけど…」
グルギュラも、アレをしたんだろうなあ、とか思ってたら、
『登龍門 ナンバー2 鉄仮面の家』
という表札が見えた。赤い屋根の家。
馬から下りて、入る。
「ごめんください!」
弟子みたいな若いのが6人くらい来て、
「なんじゃ!」
「ナンバー3の組の殴り込みかい!」
「グルギュラはいるか?」
「スマキにしろ!!」
襲い掛かってきた!
10秒くらいで全員を半殺しにして…
倒れた一人の髪の毛を掴み持ち上げ、
「おい、階段が無いぞ、どうやって上の階に行くんだ?」
「ぶっ…ぶえぇぇ…そこの…水瓶を動かせばぁぁ…」
「これか?」
動かすと、上から木の梯子が下りてくる。
上る。
二階にも、弟子が数人…
同じ作業を繰り返し、壁にかけてた絵画を下すと、上から木の梯子が下りてくる。
上る。
三階は…とにかくタバコくさい…
豪華な椅子に座る鉄仮面の後頭部が見えたけど、換気するために窓をパンチで割ると。
「だれじゃ!! われ!!」
斧を持った鉄仮面が襲い掛かってくる…
仕方ないからハイキックを首へ。
「あぶえぇ!!」
断末魔? …しまった! 首の骨を折ったかもしれない!
慌てて!
「グルギュラ! 大丈夫か!?」
鉄仮面を外した! 血を吐いたヒゲズラのオッサン??
「え? だれだこれ?」
冷静になり、
「影武者か…だんだんムカついてきた…色々と姑息な真似を…あの時も…ワタシに痺れ薬を…」
ん? いま…ギって音がした?
部屋を視察する…
天井に小さな穴が開いている…




