76話 ースフィア編ー エリーゼの街のディーバ 1
夜更けのホテルの部屋
結局、二人で色々話しながら葡萄酒を5本?も開けた~
この部屋まで、酔ったワタシに肩を貸し運んでくれたクロスから離れ、ヒールのままベッドに倒れる。 化粧も落とさないと…もういいけど。
「どうやら酒では俺の方が強いみたいだな…おやすみ…ん?」
ワタシはつま先でクロスの膝の辺りをトントン、
「どうしたスフィア?」
小さい声で、
「べつに…」
クロスはテーブルにある水の入った小さな壺から、木の器に水を汲んで持ってきて、
「水が欲しいんだな? 水を飲め」
「…ありがとう」
ベッドに座り、ゴクゴクと飲み終えた。 その後…来てくれた…
クロスの離れない口…あたまがまっしろになる
どれくらいしたのかな…離れた…
「酔っているのか? クロス?」
「酔ってない…」
ワタシはクロスの頬と髭を右手で優しく触りながら目を見つめ、心と、うらはらな言葉を…
「だめよ…ワタシは汚れている…ドトール闘技場で見ていっ‥うっん」
クロスは言葉を無視するように、また口づけをしてくる。
抗えない…男の手が身体に触れた。
「きれいだよ…スフィア」
「はずかしいよ…クッロスッの…治り草のおかげかな…ぁっ」
「このままいい?」
「うん…‥いいよ…だして…」
日差しが当たり目が覚める。
昨夜のはユメ?
すぐに濡れたシーツが思い出させる…
「クロス…ありがとう」
自然に呟いていた…
なんか、昨夜と同じ服なのは…と思い、ドトールに着いた時の恰好で宿を出て、馬を引きながら、すぐ近くのクロスの酒蔵に行く。
ブドウの山盛り入った箱を運ぶクロスはワタシに気付くと、すぐに箱を置いて、近づいて抱きしめてくれた後に…優しいキスをしてくれた。
「スフィア、ありがとう」
「こっちこそ…」
「スフィアのおかげかな? モロスが自分の意志で学校に行ってくれた…メノドコウガンメノドコウガンと呟きながら」
「それは良かった」
馬を見たクロスは、
「帰るのか? もっとゆっくりしていけば?」
「長居はしたくない…万が一、スフィアとバレたら大変だ」
「そうか…仕方ない、昨夜言ってたスフィアの計画…俺も協力するよ」
「ワタシとクロスは同等のバディだもんな」
「貴族会にも参加して金を使い、情報を聞き出してみる…どこに連絡すれば?」
「ならず者国家のルーベラの街の『ガトーレーズン』という店に手紙を送ってくれ」
「分かった」
「ワタシも手紙を送る」
ワタシは少し背の高いクロスを見上げ、
「クロスまた会おう、革命が成せばクロスにアナの国をやる」
『ああバディ…また会おう』
馬に乗り、走る。
おもしろいもんだ・・・
クロス…たった一日で昔のような精気が戻った。
金? 女? 子供の事? 野心? その全てで甦ったのかな…?
髪の毛も戻ればいいのにな…
金が減り、軽くなったおかげで、『ならず者国家』には7日で帰れた
今回の二つの目的の二つ目…
エリーゼの街のステージのある大きい酒場に来た。
ワタシは、ステージから一番遠くの円卓の席に座ると、
「何をお飲みに?」
「葡萄酒を」
「かしこまりました」
始まる。
《 最後はエリーゼの歌姫! リリアン! 》
大きな拍手の中、ワタシ同様に髪は長くなったけど…よく覚えている顏…
高そうな青のドレスを着てステージに現れる。
お前は結構有名になったから、ずいぶん前から知ってたよ…静かに暮らしていれば良かったのにね…
「みなさま…お越しいただきましてありがとうございます ええ…ワタシもう「ディーバ」になって4年ですかね?実は、その前には剣闘士をしていましたの」
「ははは」
「またまた」
「ありえない~」
「よ! リリアン! 相変わらずキレイだね!」
「惑星イチ!」
「天使の歌声!!」
掛け声の最中、
「どうぞ」
酒が置かれる。
「リリアンは元剣闘士なの?」
「お知り合いですか?」
「いえ」
「僕も詳しい事分かりませんが、マックス連邦から来たとか…失礼します」
静かになり、リリアンは歌いだす。
なるほど…すごく奇麗で上手い…思い出す、この声でワタシを…
フィナーレ前になると、観客を見回しながら、
「愛~を~~~~ころし~て~~~その愛で~~~っっっ ~~~」
フフ…気づいた…?
拍手とよいしょ掛け声の中、頭を下げ終えたリリアンは顔を上げた時、確認するように、チラっとコッチを見た…
確実に気付いたな…
席を立つ…
~~~控室~~~
「どうした? リリアン?」
「帰るのよ!! どけ!!」
「その格好のままっうわ!」
ヒールを脱ぎ捨て、全力で走る! 酒場の前に留まっていた商売馬車に乗り!
「とにかく遠く!!」
「はっはい!」
「街から離れたらアルフォート! 金はある!!」
「アルフォートまで? 分かりました」
12時間後…
ならず者国家のアルフォートの街を走るリリアン。
「はぁ…はぁ…はぁ…なんでアレが…」
昔のハルゴ砦の戦いを思い出す。
「見つかれば絶対に殺される……復讐するために来た? やば…もう引退するし…」
下町の古いレンガのアパートの2階に上がり、カギをガチャガチャして部屋に入り、一息ついた後に、タバコに火をつける。
「ぷふう~~ まあ…とりあえず大丈夫でしょう…10以上の住まいの中から一番目立たない、この場所に避難したからね…」
ドン!!
ハンマーでドアを強く叩くような音に、心臓が止まりそうになる。
「やめてくれよ…きたのか…」
ドン!!
精神的追い込まれた、リリアンの心の選択肢は…
1 自殺
2 謝罪
3 殺す
3を選んだ。
もしも用に壁にかけてた剣を手に取り、
ドン!!
(スフィア…死ね!!)
ブッさす!
手ごたえなし!
もう一度! さす! 手ごたえなし!
(え?)
剣で空いた穴から外を覗く…
誰もいなっ?
直後!! 目に衝撃が! 意識を失う…
さて、
軽くビンタすると、椅子に縛り付けたリリアンは目覚めた。
「黒サラシ女、目覚めたか? 刺して来そうだから蹴りでドアを叩いてたんだよ」
すぐに、
「スフィアーー!! 許してーー!!」
青いドレスを揺らし、椅子をガンガンしながら…
「安心しろ? 右目は失明してないよ? ワタシと違ってね?」
「スフィア!! お願い!! 金? 金? 金でしょ! 全部出す!!」
「いらないよ…」
ワタシの言葉に…サアーっと青ざめて…顔を逸らし、
「なに? なに? じゃあなに? え? え?」
「なんか…随分と昔と変わったな? 黒サラシ女…誤解するな…ワタシはお前には感謝してる…」
黒サラシはワタシの顔をジーと見た少し後で、
「いやあ~~!!」
「お前が金目当てに、ワタシを売ってくれたおかげで、ワタシはこうして生き残れたんだしな? お前が首謀者だろ?」
「そっ…そっそっ」
「スクラップのゴミ犬をね?」
「ちっちっ…つがう! あれは!…演技!!」
「他の三人の逃げた仲間と連絡を取り合ってるか?」
「うん! 取ってる! たまに!」
「三人の住まいを教えろ? それでお前は助けてやる」
「本当に!? 約束してくれる!?」
「ワタシは約束は守る」
「分かった…」
「それとやっぱり金も貰っとく、動かせる金は全部渡せ、お前に報酬として500金以上は渡してやる」
「はい! 助かります!」
ワタシは「ステラジアン」を抜き、刃を黒サラシ女の足にピタリつけ、
「約束は守れよ…さもないと人顏皮被りと同じにする」
「命に懸けて絶対に守るわ!」
剣を鞘に戻し、
「おまえ大きな馬車は持ってるか?」
「別邸にあります!」




