72話 ースフィア編ー さようならレナ国
ワタシの体から出た神の子と、アモンを連れて森を出た。
目的地は「ならず者国家」だ。
アモンが歩くのが遅い…まあ仕方ないけどね。
途中、シトリー住む町に寄った。
いま…ワタシは口を布で隠した姿で、町一の金持ち「ブタモンド」の屋敷の中にいる、
「おいブタモンド? 家にある金はこれで全部か?」
「はい! 510金あります! だから殺さないで!」
ワタシは屋敷にあった大きな袋にテーブルの上の金を入れながら、
「わかってるよ、約束は守るからな」
隣の部屋で口には布、手足は縄で縛っている年上妻同様に、ブタモンドを縛った後、部屋を出て、ブタモンドの年上の妻を見た。
「う~~う~~」
何かを伝えたがってる目、部屋に入り、口の布を下す。
「どうした?」
「おねがい…だんなをころして…」
「なぜ?」
「ワタシの胸を見て」
襟を下す、傷がある、ワタシの体中にある傷と似たような傷…
「ブタモンドが?」
「ええ…あの男…財産目当てで求婚してきて、彼を信じて金と会社の名義を渡せば、ワタシはこのザマよ…王都の愛人に…ワタシの親の遺産が渡されているわ……もう二人の間には子供もいる…ワタシとの間にはいない…」
「ひどい話だな、たしかに生きる価値のない人間だ」
「おねがい…もう我慢できない…屈辱に」
ワタシは左目をつむり、
「あいにくワタシは約束は守る、ブタモンドを殺さないと約束したからな」
妻の手足の縄を解き、
「お前自身で考えてブタモンドを断罪しろ……やっぱりこの金は返す…公安にはワタシが殺したと言えばいい」
金の入った袋を置き
「西へ逃げたと言ってくれれば逆方向だ、そう言ってくれれば助かる。 お前もワタシが捕まれば都合が悪くなるだろ?」
「わかったわ…ありがとう…スフィア」
「はは、バレてた?」
「あなたの織った服は、未だにたまに着ているわよ」
じっと妻を見て、
「ありがとう…ではまた」
「持って行きなさい、それ」
「いいのか?」
「依頼料ってところかしら」
ワタシは袋から、400金を出して床に置き、
「これくらいでいい、じゃあな」
背を向け出口へ、そこで後ろを見る。
包丁を持った妻が、ブタモンドの部屋に入って行く、その目は、さっきと別人。
とてもいいことをした
気分がいい
軽くなった袋を持って外へ出る。
シトリーの服屋だ…
もう寝てるな…
戸の前に来た、戸締りしてても、開け方は分かっている。
クイッと斜めに上げ気味で、戸をスライドさせる。
1歩、2歩、3歩…歩む…
うわ…だいぶ変わってるな…下着の場所が奥になってるよ…
見つかったら気まずいなんてもんじゃないから…もう出よう…
振り返り、1歩、2歩、3歩、
その時、後ろから、
「スフィア…?」
ドキ!!
シトリーの小さな声、胸が熱くなる。
馬鹿みたいだけど…裏声で、
「ちがいます…何も取ってませんおじゃましました」
「ぷっぷぷ…相変わらずスフィアは面白いな?」
相変わらずの大好きな答え…
浮気して…なんか責任とか無いの? 本当にやさしいバカ。
走って逃げようと思ったけど、足が止まった。
「裏切ったオレに怒ってるだろうけど…ちょっと待ってくれ…渡さなきゃいけないモンがあるんだ」
裏声で、
「あの…スフィアじゃありませんからね…」
足音が近づく、手にトントンと何かが当たる、見る、
『聖剣ステラジアン』
だ…まさかの…
「聖騎士ミスティ様が俺の店に持ってきた、返すべき場所が他に分からないと」
「あのミスティがレナの聖騎士?」
思わず裏声を止めてしまった。
「知らなかった? レナを救った軍功を持つ聖騎士として世界の聖騎士序列も6位だぞ…聖剣はハルゴの戦地に落ちていた、レナを救った聖剣『ハルゴ3443』を持つ聖騎士ミスティだ」
なんか、すごくうれしかった。
がんばれミスティ…
「マントには「ハルゴ砦の奇跡 生きる伝説 聖騎士ミスティ」と書かれているらしいぞ」
文字数多いな…字を間違えるなよ…「岩」じゃないぞ「砦」だぞミスティ…
後ろから優しく抱き着いてきた。
「ごめん…スフィアは死んだと聞いたから」
手で手を放す、
「もういい…シトリー…気にするな」
最後に後ろを振り向く…作った笑顔で…
「がんばれシトリー」
「スフィア……髪長くなったな…なんだよ…その眩しい笑顔…」
シトリーの後悔の顏。
歩む出る、すぐに走った。
収穫はたくさんあった。
『金』に『ステラジアン』に……あのシトリーの顏。
5キロ離れた大きな木の下で、アモンが子を抱え待っていた。
「どうじゃ? 収穫は?」
「金とコレが手に入った」
両手に持った、金の入った袋とステラジアンを見せると、アモンは目を輝かせ、
「おおう~~聖剣ステラジアン~~ 良かったな~~!」
「ステラジアンはワタシが預かる、いいな?」
「ああ、かまわんよい」
ワタシは進むべき方向から見えだした朝焼けを、長くなった髪をかき上げながら見上げ、
「さあ行こう、ならず者国家へ…」




