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70話 ースフィア編ー 引きずる足の行き先



 4日後の朝…


 今、感謝とお詫びの言葉をテーブルに削っている。

 この体と…折れた心…もう戦いは無理…ここに明日まで残っても、きっとワタシはクロスの期待には応えれない。


『クロス男爵 ありがとう レナに戻ります

 期待に応えれずごめんなさい       』



 山小屋にあった黒い服を羽織り、右足を引きずりながら山小屋から出る。

 3つ、薬草と空いた酒瓶と…手鏡を持って、

「あっちがレナだな…おそらくレナまで400キロか…山を進もう、慣れてる」

 一日、10キロ進めれば約一か月と少しで帰れる…



 湧水を見つけては、飲み、瓶に汲む。

 追われる身…夜に火を起こす、キノコやカエルを焼いて食べる。

 薬を眠る前に塗る、効いてきている。

 かなり見た感じもマシになってきた。

 治っていく肌を鏡で見るのが今一番の生きがい。

 寝る時、よくタヌキやシカなどの色々な動物が…ワタシに寄って来て、

 添い寝してくれる…温かい。

 フフ…なついてくれる動物は絶対に食べないからな…



 1か月進んだ…この山? あそこだ? 

 ワタシがアナの兵をたくさんキルコロスした所だ。


 明日には…町に戻れそう…


 シトリー…結婚しようね…約束だもんな!


 山を進む間、『シトリーの服屋』を、ワタシとシトリーでやっていく事をずっと考えていた。 シトリーが店番、ワタシはずっと(はた)を織るの…片目で片足悪いワタシはあんまり表に出ない方がいいだろ? 私達の子供をしかったり、ほめたり、機を織りながらするの。 出来た服を子供に着せたり、シトリーに着せたり…もちろんお客さんのが一番だ!


 だけど…今は…シトリーに抱きしめてほしい…





 翌日の朝…



 3年過ごした見慣れた町…


 寝ずに来た…

 はやく会いたかった。

 ちょっとだけ…会うの怖いけど…



 シトリーの服屋の手前の角まで来た。

 ドキドキする…


 顔を出して、服屋を覗く…


 変わらない店。シトリー相変わらず寝坊助だな? まだ窓を開けてない…

 最初の言葉は「おはようシトリー」だな…


 手鏡を見て、右目が見えない様に髪でちゃんと隠した。


「ふ~…よし!」


 覚悟を決めて、シトリーの服屋へ、右足を引きずりながら歩んだ。




 その時、

 服屋の窓が開いた。


 ん? え?


 なにあれ?


 立ち尽くし、目はかっ開いた


 赤子を抱えた女


 身体が冷たい…いやだよ…なんだよこれ…


「あなた! 早く起きて! 子供に乳をあげるから! ごはん手伝って!」


 やめてくれよ

 シトリーが見えた

 記憶通りの、いつもの笑顔


 めまいがした


 いや‥ これ… まさか…?


 うっ


 気持ち悪い…



 ワタシは顔を真っすぐのまま腹に手をおく…


「うごいた? やめろよ…」


 服屋の戸が開いた。


 思わず背を向けた。


 足を引きずって服屋から離れる。


 離れる… 離れていく…


 おい? 呼び止めないのか? ワタシだぞ? シトリー?


「え? スフィア? まさか?」


 シトリー… 気づいてくれた‥


 ワタシは歩みを止めた。




 来ないの? シトリー? 来てくれないの? 


 再び動いた腹を触ると‥


 わけが・・わからないきもちになり  足をひきずり歩く


 戸が閉まる、

「トン」

 別れの音。



 シトリーは悪くない

 シトリーは悪くない

 悪いのは他の人間たち



 自然に? 倒れたかった? つまずいた…

 なかなか立てなかった…


「まさか? スフィアちゃん? 戦争で死んだと聞いたけど…」


 シトリーの服屋の隣のおばさんだ…


「スフィアちゃん、大丈夫? あなた…その目…それに足…」


 急いで起きて、おばさんを見つめ、

「安心しろ、お前は殺さないからな」


「え?」


ワタシは笑っていた。

「シトリーと約束したからな」



 町の人間がワタシを見る。 この町に初めて来た時と似ている。


「哀れだな」

「みじめだな」

「可哀そうに」


 人間の目に所詮言葉、どうでもいい。

 始めて来た時は、傷ついたけど、今は本当にどうでもいい。




 今からワタシは…あの森に帰る…


 ワタシと同じ様な者が待つ


 雷のよく落ちる…あの森に…




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