6話 ースフィア編ー 感謝の言葉
体の洗い場で…シトリーはスフィアに体の洗い方を指導。
「この水でこの布を濡らして拭く」
「この水でこの布を濡らして拭く」
シトリーはスフィアの長々ネッチョリした黒髪を困った顔で…
「うむむっ、これ洗うのにどれだけの水がいるんだ?…切るか」
「切るのか?」
「どんな髪型がいい?」
スフィアはシトリーの髪を見て、
「シトリーと同じくらい」
ハサミを手に取ったシトリーは、
「ベリーショートてのになるけどいいのか?」
「よく分からないから、それでいい」
シトリーはニヤっと笑い、
「後悔するなよ」
ハサミで切り出したが、すぐシトリーが!
「油で! ハサミが!? クソ髪が! 貴重なハサミをクソが!」
洗い場から出てすぐ戻って来た、シトリーの手にはナイフ!
「クソが! クソが!」
「痛い! 痛い!」
30分後
疲れ果てたシトリーは、
「やっと終わった…」
勝ち誇った顔で、切り落ちた大量の黒髪を見て、
「クソ髪がざまあみろ…はは」
シトリーは手鏡を持って来て、後ろから手を伸ばし、映ったスフィアの顔を見ながら。
「どうだ?」
スフィアは目をパッチリ開けて、
「これがワタシ?」
「そこそこ似合ってるじゃない? まあ100パーセント俺のおかげだけどな」
スフィアは鏡に映る、シトリーに笑顔で、
「やるな、シトリー」
シトリーも鏡に映るスフィアにニコっと。
「どういたしまして」
「さあ、体を洗え」
「うん! この水でこの布を濡らして拭く」
すると、急にシトリーはスフィアを睨み、
「スフィア」
「なにシトリー?」
「出てきてら、体を隠せよ」
「うん…分かったよ」
洗い場の戸を閉めた。
その夜
綺麗になったスフィアと、家主のシトリーは晩御飯。
食卓にはパンと水だけ、シトリーはパンを見つめ、
「ごめんな? ちょっと料理とかできなくて、それに金もないから、バターとかジャムも調味料もない、なんか悪い」
「いいよ全然」
スフィアはパンをちぎりモグモグ…
「うまい!」
と笑顔。
「味無しパンがそんなに美味いか? どんなもん食べてたんだよ?」
「シトリー、明日からワタシがご飯作るよ」
「え? 明日からって? お前、今晩だけじゃないのか?」
「ワタシ決めた、シトリーと結婚する。 人間の男と女は結婚しないとダメだもんな」
「お前まだ子供だろ? それに、俺にも相手を選ぶ権利があるわ」
「ワタシじゃイヤか?」
「イヤに決まってるだろ」
さらに夜
月光を利用してシトリーは勉強していた。
「難しすぎる、くそ集中できない、くそ、それが原因だ…」
興味深そうにスフィアが来て、のぞき込んできた。
シトリーはシッシッして、
「邪魔になるから、あっち行けよ、もう寝ろよ」
勉強の問題を見たスフィアは、
「ふむふむ簡単じゃないか? シトリー? こんなのも分からないのか?」
「原始人やってました、のお前に分かるわけないだろ? これは凄く難しい高学な問題なんだ…さすがの俺でもてこずってる…うむみむみむ…ええい、寝ろ」
スフィアが、
「問11の計算式だけは確かに基本が出来てないと難しいな…基本分かるか?」
「え?」
「ダケダケ法だよ」
「いや、忘れたのかな…ははは」
さらに夜
スフィアは寝室のベッドで眠っていた。
「う~んベッドって柔らかく寝ずらいな」
スフィアはゴロンとベッドから落ちて、固い床の上でリラックスした表情になり、
「これくらいが丁度いい……zzz」
翌朝
シトリーは、スフィアの部屋を開けた。
「おい! あれ?居ない? そうか…スフィアは森に帰ったんだな」
落ちていたスフィアの薄汚い毛皮の服を見て、
「コレは捨てておいてって事か? 汚いクソ髪も捨てないと…裏で火をつけて全部焼くか、邪魔なだけだしな」
その頃、近くの山では…
ステラジアンを腰にかけ、狩りに来たスフィア。
「う~ん…シトリーに肉でも食べさてやろうと思ったけど獲物がいないな」
スフィアが遠くで野鳥が飛んだのを確認し、石を投げようとしたが、
「くっ遠すぎるか、仕方ないキノコにするか」
仕方なく、キノコ狩りに変更した。
昼頃には、シトリーの服屋から勝手に取ってきた風呂敷の中はキノコで一杯になる。
「うん、美味いキノコばっかりだ、良かった。 帰るか」
スフィアは帰りの道中…話をするレナ国の兵二人を見つけた。 得意の茂み隠れ近づき、話を聞く…
「なんかアナ帝国のサラマンドが死んだらしいな?」
「まじで?」
「目撃した王族武将が言うには、謎の子供が体術で武器持ちのサラマンドを殺ったらしいぞ」
「まじで? 体術でサラマンドを!? 子供が!?」
「俺、戦場でサラマンド見た事あるけど、サラマンド無茶苦茶つよいぞ」
「こっちとしては死んでくれてありがたいな」
「聖騎士がその子供を見つけ次第、連れて来いと言っていた」
「へえ?」
「子供に報奨金100金出すらしい。そして戦力に加えたいと言っていた。連れて来た者にも報奨金がでるそうだ」
「100金ありゃ、馬が3頭くらい買えるじゃないか? すごいな」
茂みに隠れていたスフィアは心の中で、
(やった! シトリーに100金やれば喜ぶだろうな)
っと喜んだが、
「その子供の風貌は不潔な原始人、足まである汚いベットリ髪、薄汚い毛皮のボロを着ているそうだ」
「なんだそりゃ!? 妖怪みてえだな! 今の時代にそんなのいるか!?」
すぐさま、スフィアはキノコの入った風呂敷を持ち、急いで「髪の毛…毛皮…」と呟きながら、シトリーの服屋に帰った。
服屋に着くと…
裏で大きな火がたかれていた、火を棒で突っつくシトリーが笑顔で、
「おう、戻ってきたのか? よく燃えるぞ、スフィアの髪と毛皮」
スフィアは大きな炎を見上げ、
「本当によく燃えるね…」
「油がたっぷりだったからな~」
スフィアは、
「シトリー」
「なに?」
スフィアは唇を噛み締めて涙を浮かべ、
「燃やしてくれて…ありがとう…シトリー」
「え? あっどういたしまして」