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64話 ースフィア編ー フレデリクスの最善策



 人間の命って重たいの? 尊いの?


 シトリーと暮らした3年


 町の人間はみんな、人の命が一番大事って言ってたな


 特に年寄がよく言ってたっけ?

 戦争で若い人間が少なかったからな


 あの日、シトリーがずぶ濡れになった夕暮れに

 町で奇麗な虹が見えた、

 町中のみんな虹に願い事していた


「長生きできますように」

「息子が生きて帰ってきますように」

「病気が治りますように」


 同じような願い


 シトリーも虹に向かい座って拝んでいた

「何を願ってる?」と聞けば「ひみつ」と言われたっけ

「お前も何か願えよ」と言われたから

 座って虹を見つめたけど


 何も願いが思いつかず


 何かいいことありますように、と願ったけど

 その日も次の日も、何もいいこと無かった


 でも、いつか、いいことあるのかな?


 虹への願い


 いつか、いいこと…?


 人間の願いは、人間の命が一番大事?


 それなら


 なぜ人間はワタシを殺そうとする


 今、ワタシは敵兵であろうと…人間を殺している


 ひたすら切る切る切る切る切る

 ひたすら殺す殺す殺す殺す殺す

 キルコロスキルコロスキルコロス

 キルコロスキルコロス?

 人の名前みたい


 ワタシは身体は人間

 敵もワタシをワタシ達を

 勝ち戦なら、キルコロスさんしたんだろうね

 ドトールの剣闘士達が狩りの様に

 ワタシの体の部位を持って帰って金に換えようとした様に

 敵兵は、きっと残虐なキルコロスさんになるんだろうね


 動物の村で

 ワタシが最初に見てキルコロスした、人間たちも醜かった


 町の老人の願いと矛盾している


 人間の天敵は人間


 この矛盾は人間だから、ひり出せるモノなんだろうね


 ははは







 アナ帝国の兵は、将のフレデリクスに後路の吊り橋を絶たれ、戦意喪失、武器を放棄し、ぞろぞろーとスフィアに対し屈み始めた。



 大雨では落ちきれないほどの返り血を浴び、顏が真っ赤のグルギュラはスフィアに、

「決まったな? どうするスフィア?」


 顏が赤く染まったスフィアは、ひれ伏した敵兵たちを見ながらボソっと、

「ワタシは虹なのかな?」


「 虹? 何言ってんだスフィア?」


 スフィアは返り血を手の平でグググっと拭い、グルギュラの方を向き、

「フフ…なんでもない」


 ん?っと

 グルギュラはスフィアの膝を見た。

 プルプルプルと小さく震えている。


「スフィアお前? 大丈夫か?」


「心配するな、まだ動く」


 トロンとした目を見たグルギュラは心配そうに、

「いや…一人で1万殺したんだから疲労も凄いだろうけど? そうじゃなくて」


 スフィアは笑顔で

「一万じゃない、もっとキルコロスしたよ」


「キルコロス? 切る殺すか? おまえ本当に大丈夫か? たまに戦地で頭がっ」

 スフィアはグルギュラの話を遮るように、

「大丈夫って言ってるだろ? しつこいな? まあグルギュラは変わらないでいてくれ、いつまでも童貞のままじゃダメだけどな」


「おい!」


「フフ…さて」


 スフィアは下向いて息を吸った後、敵兵に、


「アナの兵!! レナは投降を認める!! 武器を捨てて我々について来い!! レナ王都で、お前たちの身を確保させてもらう! 案ずるな! 命の保証もゴハンもちゃんと出るし! 戦争が終わればお前たちをアナに返す!!」


 アナの兵は、それぞれの顔を見合い、うなづいたり、耳打ちしたり、首をかしげたりしていた。


「ついて来い!!」


 レナの先方隊に、投降したアナの兵はついていく、同国の死骸が多すぎて避け切れず、グッ、グッ、っと生死の差を踏みしめながら…




アナ600

レナ20000 の先方戦は


アナ死者 約11000 投降約2000

レナ死者 5


レナの完勝






 その夜…


 アナ帝国の後方の軍に早馬が来た、馬から下りた兵は急いで皇太子の陣幕に向かった。


 幕の前で、

「皇太子! 急報です!」


「はいれ!」


 酒を飲む皇太子アーネストは顔を赤らめて、

「何事だ?」


「先方隊が敗れました。 砦で無く、先方隊同士の衝突にて」


「おいおい? フレデリクスは2万だぞ? ハルゴ砦の兵は全体でも4000もおるまい・・・ありえん」


「 敵の先方隊600に、フレデリクスの2万は敗れたのです。おそろく敵兵の損害はゼロに等しいかと」


 皇太子は酒の入った器をポイっと投げ捨て、

「バカな…ありえん…」


「事実です」


 酒瓶を手に取り、

「まことならドトールの剣闘士は? 王者バルバトスは無事か?」


「ドトールの剣闘士達は敵兵一人の首も取れず撤退、バルバトスも、もはや虫の息と治療班が申しております」


 酒を飲もうとした酒瓶を持っていた手がピタっと止まる。

「あのバルバトスが? バルバトスはアナ最強だぞ…」


「剣闘士の話では、敵の「スフィア」という女に背骨を砕かれ右腕を潰されたと」


「スフィア?」


「フレデリクスの2万も、その女のせい…」


「スフィアとは何者だ!? 聞いたことも無いぞ!」



 陣幕にフレデリクスが入って来た。

 神妙な面持ちで膝を地につけ頭を下げて、


「申し開きはありませぬ。 皇太子、ワタシは死罪を願い出て参りました」


「フレデリクスよ、なにが、レナに奇跡など起きないだ?」


「ワタシの独断でハルゴ砦に繋がる吊り橋も、切断した事もお詫びいたします」


「ハルゴ砦への吊り橋まで? 気でも狂ったか?」


「狭い航路での戦いは中止し、回り道で攻めることを進言いたします」


 フレデリクスは皇太子を見上げて、

「皇太子! ビジャ国の聖騎士怒髪天キングレオは!?」


 皇太子は酒瓶を持ち飲みながら、

「王都で遊ばせておるわ、ずる賢いビジャ国に借りを作りたくないからな。 世界の聖騎士序列1位は我が国の世襲のボンクラだから、怒髪天は実質世界一位の聖騎士、窮地で怒髪天などを借りたら、ビジャ国はふっかけてくる」


「どうか、怒髪天とビジャの兵の召集を…アナの最大の力は領土と財です…」


「お前などに忠告されとうない! この者を! 王都へ送れ!」


 すぐさまザザザっと親衛隊が4人来て、フレデリクスを捕らえる。

 フレデリクスは拘束されながら、

「アーネスト様! あなたが死ねば、これからのアナ帝国は終わり! どうかどうか! どはつっぅぅてっっんっっ」



 フレデリクスは口に布を入れられ、連行された。




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