63話 ースフィア編ー フレデリクスの斧
ハルゴ砦へ向かうアナ帝国の兵の群れの、逆を走りたいドトールの剣闘士を乗せた馬車。
馬車使いは叫ぶ、
「どいてくれ! ケガ人がいる! 急いで医療班に診せないと危険な者もいる!」
狭い山間に来た先頭の兵達は馬車が通れそう隙間を作った。
「うわ!! なんだこりゃ!!」
「あっあれ? もしかしてバルバトスか?」
「手足が無い剣闘士もいるぞ!」
はるかに自分達より強いドトールの剣闘士達の惨状を目の当たりした兵達は、歩みを止めた。
馬車は兵達を分け進んだ。
やがて先頭の兵たちの元へ、馬を早く走らせフレデリクス将軍が来た。
右手に持つ大きな斧の先を兵達に突き出し、
「どうした! お前たちが怖気づいてたら戦にならん! 数では圧倒的優位! 進め!」
フレデリクスの檄にも兵達は進行を未だに躊躇…
「お前たち先行兵は刑期5年以上の罪人兵! 一人殺せば! 刑期を一年短縮してやる! いや! 3年だ!!」
兵達はそれぞれの顔を見つめあい、
「一人で3年か…」
「戦わなければ敵前逃亡罪で酷い目に合うだろうしな」
「俺、ドトール刑務所で刑期20年だから…ここでワンチャン賭けた方がマシか」
兵達は進行を始める。 だが足取りは妙に重たい…
フレデリクスは先行兵を見張るように後ろを進む…
スフィアとドトール剣闘士が衝突した山間に来た。 その場でレナの兵達600人は△の隊列を組んでいた。 その先頭にはスフィアがいる。
歩みを止めたアナの兵達をよそに、フレデリクスは地形を見渡した後に、レナの兵を見て考察する。
(どういうことだ?
確実に左右の山に伏兵を忍ばせると思っていたが??罪人兵で伏兵をおびき出し、本体で敵兵を仕留めよう思っていたのだが…敵はおおよそ600か? 敵は主力をハルゴ砦に回す必要がある以上、あれ以上にココに兵を回せるとは思えない。 こっちは2万…30倍以上の兵力差…行くか? いや…なぜ伏兵をしない? ドトールの剣闘士と戦って、ケガ人らしい者も見当たらない)
フレデリクス、△の先頭のスフィアを見る。
(あの女匂う…バルバトスは泥まみれだった。あの女だけ異様に泥を浴びている、あの女がバルバトスを倒したな。 そして、あの位置にいるという事は破格の強さをもっているのであろう。つまり、あの女さえ殺せば…)
フレデリクスは斧をスフィアの方へ向け!
「全軍!! 先ずは先頭のあの女だけ狙え!! 罪人兵達よ! あの女の首を取った者はフレデリクスの名に懸けて免罪と1000金を約束する!! 罪人兵では無い物には金2000を約束する!!」
すぐさま後ろにいた、全力疾走の投げ槍隊の一部が罪人兵を越えた!
フレデリクスはアナの兵を鼓舞する
「いけいけいけ!! 早い者勝ちだ!!」
罪人兵も!
「やべえ! 急がねえと!!」
「1000金が!!」
ズワ~~~~っと、アナの兵が向かってくる。
笑いながらグルギュラは剣を構え!
「スフィア! お前モテモテだな!?」
「シトリー以外はうれしくないよ」
投げ槍がヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒューーーーン
飛んでくる!!
スフィア! 聖剣『ステラジアン』を掲げ!
「コッチも行くぞ!! 留まっていたら!! 1000を超す投げ槍隊の餌食になる!!」
「おう!!!」
ズチャズチャズチャズチャ、濡れた地面を、レナの△隊列の兵団は走り!
アナとレナの兵は衝突!!
狭い山間!
スフィア先頭のレナの兵団は貫通するように、進軍!!
「ぐうぇ」
「いたあぁぁ」
無数のアナの兵の断末魔が鳴き響く!
瞬速で切りまくるスフィア!
「まだ400!! まだまだー!!」
「まだ500!! もっと!!」
もはや目測を失い、助走して投げるスペースも無い投げ槍隊は逃走を図るが、狭い山間での兵の密集、アナの兵の混乱は増すばかり…
フレデリクスは、スフィアの姿とこの戦況に…
「狭い山間であの女……士気を失ったわが軍の兵が10人がかりずつでも確実に倒せない…このままでは…最悪の事態だけは…」
フレデリクス!
「どけどけ!!」
後ろへ馬を速く走らせる!
パッパカパッパカパッパカパッパカ
吊り橋を渡り、アナ帝国先鋒軍の後ろの所まで来た。
副将がフレデリクスに、
「どうしましたか!? 将軍!?」
フレデリクス!
斧を振り上げ!
スコーン
斧を振り落とし吊り橋を傾ける。
何十人かのアナの兵が谷へ落ちた。
副将は激怒し、
「将軍! 味方になんて事を!? それにレナの王都!ハルゴ砦への! 最短距離のこの跳ね橋をずっと防衛して来たのに!! 落とせば向こう側から妨害され二度とここは通れなくなる!!」
「北に20キロ回れば橋を使わずにハルゴ砦へ続く道はある!!」
フレデリクスはさらに斧を振り上げ、落とし、吊り橋を切り落とした。




