59話 -スフィア編ー 聖剣 ハルゴ3443
二週間後…
ハルゴ砦の軍事演習中…
鋭い眼差しで演習を見守るミスティの元へ、小走りで一人のボロを着た中年の男が来た。
「アナ帝国は動きました、先方は予想通りフレデリクス烈将軍、ハルゴ砦に到着までおそらく後3日」
ミスティは両手を腰の横にやり、小さくうなづく、
「ついに来たのね」
その表情は不安げだったが、強い顔に変わり叫ぶ。
「演習!! やめい!!」
兵達の動きは止まり、続いて発す、
「4番隊から44番隊!! 前へ!!」
キビキビと600人の兵が整列した後、ミスティは台の上へ歩む。
兵の皆はアナ帝国の兵が遂に来たか? と悟っていた。
台の上のミスティ、腰の剣を抜き、天に掲げ!
「この剣はレナの王から授かった聖剣!! レナの聖剣は授かった者が名をつけてよいとなっている! ワタシはこの聖剣を『ハルゴ4334』と名付けた!!」
兵達を見渡し、
「名の由来は分かるな?」
ミスティはうなづく兵達を見つめながら、
「このハルゴ砦に集った若き3443名達だ」
ミスティは聖剣の先を兵達の左隅を指して
「マルコ!!」
マルコという兵は驚いて、
「はっ、はい!」
次に井戸に居た女の兵を指し、
「フローラ!」
雑用担当のフローラも驚いたように、
「はっはい!」
「クルスワイド! ダイアン! ローラ! ヘンリクス! パーラ!
約100人の名前を呼び、その者の場所を聖剣で指した。
「その他の兵のハルゴ砦の全ての3443名の若き兵達よ!!」
もう一度、聖剣を高く掲げ!
「この聖剣はワタシの聖剣では無い!! お前達の聖剣『ハルゴ3443』だ!!」
兵達は槍を突き上げ!
「おおおーーー!」
「この聖剣の価値はアナ帝国の聖剣「ホーリー・ララ」を遥かに凌ぐ!! 敵は3日後に来る!! 殺せ!! 戦え!! 焼き尽くせ!! アナの全てを!! この聖剣『ハルゴ3443』の名に懸けて!!」
兵達は槍を上げながら!
「アナを殺せ!! アナを殺せ!! アナを焼き尽くせ!! アナを焼き尽くせ!!」
ミスティはしばらく兵の絶叫を聞いていたが、やがて手の平を出すと、兵達は絶叫を止める。
ミスティは前に呼ばれた600名の兵を聖剣で左右になぞり、
「先方隊は、明日から2キロ離れた森に左右に分かれ伏兵し、フレデリクスの先方隊を迎え撃て、この戦いの要所だ、フレデリクスの先方隊を破れば、後はこのハルゴ砦で皇太子アーネストの兵を迎え撃てる」
先方隊600名は、
「は!」
ミスティはもう一度、聖剣を突き上げ、
「勝てば! お前達はこの聖剣と共に! 永久に語り継がれよう! ハルゴ砦の奇跡と!!」
「レナ国万歳!! ミスティ万歳!!」
兵達の絶叫の中…
ミスティは台から降り、自信気な顔で右手を突き上げながら、ゆっくりとハルゴ砦の中へ…
中に入ったミスティは、フラフラガックガクと何度かこけてしまいそうになりながら階段を上り、なんとか5階までたどり着き…指揮官室の扉を開け入り、すぐにスーッと、べッドにもたれ込んだ…
「できた…できた…」
震えながら涙が出ていた。
号泣するミスティ、
「パパ! ママ! ごめんなさい! 重い罪を犯しました!!」
腰の剣をパン!と投げ捨て
「レナの王族の身でありながら、ただの剣を聖剣と偽りました! ワタシは兵も国も偽りました!!」
ずっと…
部屋の椅子に座っていたスフィアは、落ちた剣を拾い。
「上から見てたよ、指揮官」
ミスティに剣を差し出す。
「スフィア」
「これは最高の聖剣になる」
「この剣が?」
「お前の座右の銘があったろ? 言ってみろ」
「勝てば官軍、負ければ賊軍?」
「ハルゴ砦の戦いに勝てば、その剣は聖剣になる」
「うん…うん…」
笑顔のスフィアはミスティの肩をポンと叩き、
「よくやったぞ、ミスティ」
ミスティはグスっと涙顔で、
「うん、この一か月…スフィアに言われて100人の顔と名前、頑張って覚えた…」
笑顔のスフィアはグッとミスティを抱きしめ…
「両親にも感謝した方がいい」
「なんで?」
「ミスティを頑張り屋さんに生んで育ててくれたんだから」
「うん…」
「それに声が大きいのも、両親に感謝だな?」
「うん、感謝する」
スフィアは手と体をパッと放す…
ミスティは少し寂しそうな顔だったが、切り替えた顔で、
「もう行くの? 戦地に?」
スフィアは立ち上がり、ミスティに頭を下げ
「ミスティ指揮官、フレデリクスの先方隊は、ワタシ達600人にお任せを」
静かに部屋を出たその顔は、戦を待ちきれないように…




