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57話 -スフィア編ー リンゴの味



 その日の朝の、女指揮官ミスティの発言から、明らかな変化が生まれた。


 ハルゴ砦の若い兵達は、軍の演習修練にも、今まであった…「敵は40万どうせ負け戦」という悲壮感は無くなり、俺たち私たちが、レナ国をハルゴ砦を守る決意の集合体と化した動きと覇気。

 元来、レナの国民は、永きに渡り世界最大アナ帝国と戦い続けた民族。 その演習修練の中に一人、際立った兵がいた。


 スフィアは棒を持ち、

「さあ、かかって来い」


 グルギュラ率いる31番隊の棒を持つ9人はスフィアに一斉に襲い掛かる。

 しかし、20秒後にはグルギュラ以外の8人は片膝立ちや、ダウンしていた。


 スフィアの強さを知る、一人残ったグルギュラは慎重に剣を構え、

「スフィアいくぞ」


「隊長、来い」


「ふりゅあ!!」


 長身のグルギュラの剛撃!


 カーン! カン! カン!


 スフィアとグルギュラは棒を重ね合う、グルギュラの動きにスフィアは心の中で、


( 予想通り、グルギュラのセンスはズバ抜けている。 長いリーチを生かす戦法を独学か? 動きも速く、スタミナも力もある。 コレはいずれ、凄い戦士になるぞ )


 スフィアとグルギュラのハイレベルな戦いに周りの兵も横目で見学を始める。

「すげー」

「あの新人の女、あのグルギュラと渡り合ってやがる」


 スフィアとグルギュラの演習は、グルギュラの攻撃を、余裕を持ってスフィアがひたすら棒で受けるばかり、まるで、師匠が弟子の腕を試しているような光景であった。


 周りの兵達も、それに気づき始め

「ていうか、あれ? スフィアの方が強くないか?」

「うん多分、確実に強い」



「あ? しまった?」


 スフィアの棒がグルギュラの剛撃に飛ばされた。


 直後、グルギュラ!

 本気の一撃をスフィアに振り落とす、その時のスフィアの表情は笑っていた。


 スフィアに体90度にされ、かわされ、振り落とした両手の手首に、すぐさまスフィアのカカト落としが!

「ぐっ!?」

 グルギュラは両手首の骨折を予感した。

 が、スフィアのカカトは寸止め…


 スフィアは中腰のグルギュラの耳元で、

「剣、槍、矢、斧は人を強くするが限界がある…放った軌道を変えれない」

 グルギュラはスフィアの方を向き、脂汗を流しながら、

「お前? どんなレベルなんだよ?」


 スフィアはグルギュラから背を向け、

「トイレ」


 スフィアは砦の中へ。 その道中、腰の聖剣『ステラジアン』を触りながら、


「しかし、アモンの『ステラジアン』は放った軌道を変えられる、ワタシならばな」



 スフィアの去った演習広場では、スフィアvs31番隊を見ていた男女の兵達は、


「スフィアだっけ? 凄いなありゃ」

「先方隊の31番隊…あのグルギュラ隊長が完敗だぜ」

「でも、指揮官ミスティさんはスフィアさんより強いんでしょ?」

「昨日は戦う前に、スフィアさん降参しましたもんね?」

「先方隊にスフィア、ハルゴ砦に指揮官ミスティ心強いな」

「私たちも頑張りましょう! せい! や!」


 演習修練を始めた。




 その夜…

 ハルゴ砦内外で、矢をせっせと作る兵達の中…



 ハルゴ砦の牢の中に、石畳に横座りのアビゲイル。 相変わらず、手枷をつけられ、口には布を巻かれている。

 そこに夕食を乗せたボンを持ったグルギュラが来て、牢のカギを開け、中に入り、ボンをアビゲイルの前に置き、

「食べてくれ」


 アビゲイルは金色の長い髪を首を振りなびかせた後、野良猫の様な目でグルギュラを見上げる。

 グルギュラは口の布を外した。

「自殺はするなよ、スフィアが憎いんだろ? なら生きて復讐しろ」


 アビゲイルはグルギュラを呆れて疲れた様に、

「あんな化け物…どうやったら殺せるのよ?」


 その言葉にグルギュラは「ぷっ」と笑った後にタバコを取り出し、マッチで火をつけ、

「確かに、あれは化け物だな? 返り討ちにあうだろうな?」

 タバコを吹かした。


 アビゲイルはパンを手に取り、ムシャムシャと食べながら、

「うまい、グルギュラ…お前…朝の約束守れるんだろうな?」


 グルギュラはタバコを吹かしながら、

「もちろん、そのつもりだ」


 アビゲイルはリンゴを手に取りかじりながら、

「酸っぱい…グルギュラ? 一番、手柄を立てるという事はスフィアより手柄を立てるって事だぞ? お前に出来るのか?」


「やってみる」


 黙々とアビゲイルはゴハンを食べ尽くした後に、

 グルギュラの吸っていた、牢の中での二本目のタバコをサッと奪い。 一口吸い、すぐ返して、グルギュラを睨みつけ、


「グルギュラ、お前が一番の手柄を立てなければワタシは自決する」


 グルギュラの吸ったタバコにはリンゴの味がした。





 指揮官室の扉を力強いノックの後、扉が開く、中には話しをするスフィアとミスティ。

 グルギュラはスフィアにグッと近づき見下ろし、


「スフィア殺す気で武術を教えてくれ、お前に少しでも近づきたい」


 スフィアは笑みを浮かべながらグルギュラの顔を見上げ、

「いい目つきだな? もうカードゲームをする気は無くなったか?」


 グルギュラは腕を組み、

「俺はお前のババを引いたみたいだな…」




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