55話 -スフィア編ー ドトールの剣闘士
その時…
指揮官室の扉がノック無しにゆっくり開いた。
大柄な男、髪は長く、歳は40代ほどだった。
その男、スフィアとミスティとグルギュラを目でトン、トン、トンと視察、すぐさま、その男の直感か、一番近い距離に居たスフィアに剣を突き出し突進した。
速い、躊躇も無い。
だがスフィアは、その突きを冷静に体を90度にしてかわした!
その男、かわされた直後にグっと足を止め、脇の隙間から後ろのスフィアに剣を突く!
スフィアは、それを「ある」と読んでいた…
後ろに重心の寄った男に、スライディングの様に両ひざに絡ませて、『カニばさみ』で、その男を後ろに倒し、石の床に後頭部を強く打たせた。直後、スフィアは己の肘を、男の眉間に強く振り下ろした。
間近で見ていたミスティとグルギュラは、起きた事が理解できない。
スフィアは死体と化した男を指さし、
「ミスティ、この男は暗殺者だ、かなりの手練れ…おそらくドトールの剣闘士」
ミスティを強い眼差しで見る
その目に呼応するようにミスティも見返し、
「どうして? 中に?」
「ハルゴ砦の指揮官のお前を殺すためだろ? 指揮を下げた直後に戦えば結果は目に見えている」
「そうじゃなくて…どうして中に入れたのかよ?」
「皇太子アーネストを見くびっていた、暗殺者が来たという事は見張りの油断だな、まさか今夜、こんなに早く来るとは、誰も思ってなかった…少数精鋭の刺客を闇夜に乗じて送って来たんだな」
「スフィア? じゃあ皇太子アーネストは40万の兵を連れて来るの? こんなに早くどうやって?」
スフィアは呆れた顔でミスティを見て、
「分からないのかミスティ?」
「分かりません」
「皇太子アーネストは兵の数を盛りまくり、世間には40万の大軍と情報を流したんだよ…」
ミスティが真剣な眼差しでスフィアを見て、
「なんで?」
グルギュラが…
「なるほど…なら世界最強の「怒髪天」も来るか怪しいな?」
「ああ…来ないかもしれない」
グルギュラは少しほっと顔で、
「アナめ…姑息な真似を完全に騙されてたぜ」
すぐにタバコを取り出し、火をつけた。
指揮官室でタバコを吸うグルギュラをボ~っと見ていたミスティが、
「あ!? そういう事か!? 戦わずに降参させて勝つため? 戦う前に敵の恐怖心を煽るため? 時間がかかるはずと思わされるため?」
グルギュラはタバコを吹かしながらミスティを見て、
「そうです」
するとミスティは熟考を始め
「まだ分からない、なぜ、ここが指揮官の部屋だと分かったのか?」
グルギュラは、え?っとリアクションした後
「表に「指揮官ミスティの部屋、入る前にはノックして」って貼ってるじゃないですか?」
ミスティはひたいに手をやり、しかめっ面で、
「くっそういう事か…」
その時、またノック無しでスーっと扉が開く、顔を出したのは、かなり若い金色の長い髪の美しい女だった。
女は死体を見て、ハッと、
「父上!?」
スフィアは死体を指さし
「この死体? お前の父さんか?」
金色の髪の女はスフィアを睨みつけ
「お前か? 父上を殺したのは?」
「戦争だ仕方なかった」
顔だけ出していた、金色の髪の女は部屋に入り、カタナを鞘から抜き、剣先をスフィアに指して憎悪の眼で、
「ワタシの名はアビゲイル…父上の仇を討つ…」
すぐさまグルギュラは、タバコを捨て、剣を抜き構え、それを見たミスティも剣を抜き構えアビゲイルに剣を向ける。
しかし、スフィアは二人に、
「必要ない」
グルギュラはスフィアを見て、
「この女も殺すのか? さっきみたいに?」
その問いに、スフィアはアビゲイルを見つめながら、
「うるさい」
金色の長い髪のアビゲイルはカタナを、両手で立てに持ち…ジリジリとスフィアに間合いを近づけてきた…




