52話 「犬」「蛇」「鷹」
3週間後…
ヤン国王の居城の広い謁見の間に…
雷神のペットの「犬」「蛇」「鷹」の姿があった。
3体のペットは400を越す兵達に囲まれていた。
国王の横には聖騎士 紫龍の姿が、腰の聖剣が輝いている。 国王とスフィア達の間には、ヤン国の武将5人が壁となっていた。 すでに武将5人は臨戦態勢。
ごっつい鎧兜を装着した国王はスフィアに、
「で、雷神抜きで話とは?」
スフィアは国王の座る王座の後ろの垂れ幕を見て、
「フフ、王の後ろには長槍兵12名ほど」
次に開いたままの大きな窓の外をチラッと見て、
「向こうの2つの物見塔には弓狙撃手14名、フフ」
国王はほくそ笑み、
「シッシッシ…なにせスフィアにラドンだ…用心に越したことはない」
国王は「鷹」のシトリーを見て、
「誰かね、そのヤサ男は?」
スフィアはシトリーの前に手の平を出し、
「雷神のペットの一体「鷹」のシトリーです。そして、ワタシの不肖の息子です」
続いてスフィアは聖騎士紫龍を手の平で指し、
「「鷹」を聖騎士紫龍との決闘を願い、国王に会いに来ました」
そのスフィアの言葉を聞き…
国王は紫龍に手でコイコイと、そして紫龍に耳打ち…
「紫龍…勝てそうか? あの若造に?」
紫龍は、容姿端麗な若いシトリーをジロジロと吟味して…
「勝てます」
「よし」
話がついたのを確認したスフィアは、
「国王、いかがですか? 紫龍が勝てば、我々はヤン国を素通りし、二度と襲わないと約束しましょう」
国王は心配そうに、
「もし紫龍が負ければ?」
スフィアは周りを見渡した後に、目の前で壁になっている武将を眺め、
「これだけの手勢…いったん引きます」
国王はう~~んと悩んだ素振りを見せた後、紫龍の目をジロリっと見つめ、
「頼んだぞ紫龍」
紫龍は頭を下げ、
「おまかせください」
紫龍とシトリーは謁見の間の中央に立った。
シトリーはポツリと、
「聖騎士か…まあ虫は虫だけど」
と言い、剣『ステラジアン』を出し構え、
「来い紫龍、このステラジアンで駆除してやる」
と紫龍に強がってみせた。
紫龍もポツリと、
「あれがスフィアの剣ステラジアン? まさに親の七光りのボウヤが…」
と言い聖剣を構えた。
国王が、
「始めい!!」
紫龍は飛び掛かる!
すかさず、シトリーは大きな純白のマントをパサーっと紫龍の前に放ち、
紫龍の視界を遮った直後!
シトリーのステラジアンが紫龍の頭部の辺りを突き刺した!
体全体に被さった、純白のマントで隠れていたが、刺さって立ったままの紫龍はビックンビックビクク、と体が揺れていた…
シトリーはシュっとステラジアンを抜き、シュっと振って血を払い、鞘に戻して、マントを被ったまま力なく倒れた紫龍に、
「そのマントは汚れたから、くれてやる」
ヤン国からしたら、酷い結末に国王は激怒し、
「なんたる! 卑劣な!」
武将や兵に、
「殺せ! スフィアを殺せ! あの卑怯者を殺せ!」
総攻撃を命じた!
兵達はざざーっと一斉に雪崩の如く!
2分ほど経過した…
王座に座るスフィアの姿があった。
その左右には無傷のラドンとシトリーが立っていた。
王座の真下には、兜を外した国王がひれ伏す。
それを見下ろすスフィアは、
「国王…なさけない姿ですね…」
「すまないどうか…許してくれ」
スフィアは声を荒げ、
「あなたの兵! はっきり言って酷すぎる!」
すぐさま40体ほどの死体を指さし、
「なんだ! あれは!」
「我が国の兵であります」
「そう……顔を上げなさい国王」
「はい…」
国王が顔上げると、スフィアの…
パーーーーーーーーーンっと!
シンバルを強く響かせる様な音の平手が国王の頬を襲った。
「ぐべっっっぇ! すいま・・ひぇん・・こうぎぇきしちぇ・・」
スフィアは怒った顔で、
「違う!!」
もう一発パーーーーーーーーンっと平手打ちを、
「ぎゃゃっーてっッ!」
二発の平手打ちで国王の顔の原型は無く、歯はほとんど残って無かった。
首の骨+延髄の損傷と脳震盪も起こしていた。
「ぐぬぅえうえぇ・・ぇえ? ぽってぽ~」
「たかだか40人殺られたくらいで国王を置いて逃げる兵しか居ないのか!? アレが聖剣を持つ聖騎士か!? お前は何を考え国造りをしてきた!?」
「だりぇかあぁ・・・だすけえで~」
スフィアは国王の髪をブッチブチブチブチと握り摑み持ち上げ、
「ぎゅおう・・ゆうああぁぁぁぁぁ」
持ち上げられた時、国王は死を覚悟した。
「闘争への侮辱…久しぶりに嫌なモノを見た…お前の責任だ、ラクには死なさんぞ…」
1分後…
3階にある謁見の間の窓から人の様なモノが、ヒュ~~~ンと投げ飛ばされ…離れた庭園の池に落下した。
謁見の間の窓際で、たたずむラドンは、庭園の池に浮かぶ人の様なモノを見て、小声で…
「無残…まさに泣きっ面に金的…」
両手の平をパンパンとはたいたスフィアは、ラドンとシトリーを見て、
「雷神がマスターと待っている、行くぞ」
シトリーが嬉しそうに、
「母さん…どうだった? 俺の戦い?」
直後、スフィアはパンっとシトリーに平手打ちを、頬を打たれ驚いたシトリーは、
「痛っ…母さんどうして?」
スフィアは呆れた目でシトリーを見つめ…
「なんだ? あのマントは?」
親子のヤリトリを見て、ラドンは下を向き静かに、
「クスクス」
と笑った。
シトリーは不思議そうな顔でスフィアを見つめ、
「かあさん…?」
その顔にスフィアはもう一発パンッと平手打ちし、
「せっかく、お前の実力を試すために紫龍戦の場を用意したのに姑息な真似をするな! 雷神の眠りを守護するのに、そんな戦い方で守れると思っているのか!」
「ごめんなさい」
「シトリーお前はマスターから、そんな指導しか受けていないのか? 言ってみなさい?」
「いいえ…」
「半人前のクセに自分の色を出すな! 人を舐めるな! 死ぬぞ!」
「はい…」
落ち込んだシトリーを見て、スフィアは、
「分かったらいい…いくぞ!」
少し右足が悪そうに、先に謁見の間を出た。
落ち込んでいるシトリーの肩を、ラドンは優しくポンと叩き、
「スフィア様なりの、おやこころだ…」
フッと笑い、「がんばれ」と言い、ラドンは謁見の間を出た、
残されたシトリーは、
「あのオッサン…まあまあ悪い奴じゃないな」
と言い、二人の後を追った。




