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45話 ドトール女子刑務所のボス 2



 4年前の帝都闘技場の近くのとある安酒場。

 ガヤガヤと狭く賑わう酒場の隅の二人席で、

 当時16歳のココと、

 当時22歳のレデイーナの姿が、


 レデイーナの服は貧臭ただようツギハギだらけ、しかし、美しい金色の髪と美しい目力を持っていた。


 ココはキラキラ輝く憧れの目で、

「レレッレデイーナさん! どうぞ!」

 レデイーナのグラスに酒を注いだ。


 ボロを着ていても美しい気品を持つレデイーナは、

「ココちゃん、ありがとう」

 笑顔をココに返した。


 その笑顔を見たココは、うっとりと見とれていたが、思い出したように…あたふたとメニューの書かれた紙をレデイーナの前に置き、

「愛想悪くて安くて汚いけど美味しいお店です! 人殺しの前科がある私にいつも優しくしてくれるレデイーナさんに感謝の気持ちです! 金は私が払いますから! 私は今日はデスマッチで勝ったから、お金ありますから!」


「ココちゃん大丈夫よ、ちょっと待って」


 レデイーナはポケットからツギハギだらけの布袋を取り出し、ジャラジャラと中のお金を目視確認、

「うん…ん? うん……なんとかなるわ」


「いえいえ! そんな! 剣闘士の未勝最低給で家賃に食費払っていたらお金は無いはずです! レデイーナさんのソードにもお金かかりますし」


「大丈夫よココちゃん、そのために帝都で一番安い借宿に泊っているんだから。 それに毎朝、牛乳配達の副業もしてるんだからね。 フフ、今は牛乳配達の給料の方が高いけど」


 ココは尊敬の眼差しで、

「ウワサは本当だったんですね? 剣闘で傷ついた体でも牛乳配達してるってのは?」


「本当よ」


 ココは横を通った店のぼ~っとした従業員に、


「おい! お前! すぐに肉と酒の追加をたくさんな!」


 店の従業員は「ほ~~い」と答え、オーダーを通しに行った。

 ココはすぐさま、

「レデイーナさん…せめて割り勘にさせてくださいって」


「ありがとう気持ちは受け止めておくわ…やっぱり先輩のワタシが出す…遠慮なく食べてね」


「レデイーナさん…」


 この時、ココは心の中で、謎が多く優しくて神秘的なレデイーナの事をもっと知りたいと思っていた。


 すぐに追加の肉と酒はボンと置かれた。


 ココは一番、気になる質問をした、

「レデイーナさんって…本当は強いんじゃないですか?」


 レデイーナは酒を飲みながら、

「どうしてそう思うの? ココちゃん?」


 ココはくせ毛を触りながら…

「いや…これは私の勘なんですけどね。 ワザと負けてる気がするんです」


「そんな奇特な人いるわけないじゃない、ココちゃん」


「でも…もうレデイーナさん帝都闘技場に来て295連敗くらいしてますよね。それでも休まず出るって凄すぎます」


 ココは酒をグイっと飲んだ後、

「それに、どこの国から来たのかも隠してますよね?」


 レデイーナは吸い込む様な笑顔で、

「誰にも言ってないけどね、モントリオ国よ、知ってる?」


 ココはぼーっと笑顔を見ながら、

「知ってます…」


「アナ帝国には及ばないけど大きな国…女聖騎士の孔雀兜って知ってる?」


「孔雀兜? 知ってますよ孔雀兜の『ロレデイーナ』。17歳で女聖騎士になった人ですよね? 今はまだ世界の聖騎士の序列は下位だけど…そのうち最強聖騎士『Ⅹ』を超えうる怪物だとか」


「詳しいわね? 今はある理由でもっと強くなるために修行に出てるそうだけど…それがワタシ」


「え?えええ?」


「フフ、本気のワタシと戦ってみる? ココちゃん得意のデスマッチで? 目潰し殺法で?」


 ココは空いてたレデイーナのグラスに酒のおかわりを注ぎながら、

「からかわないでくださいよ、レデイーナさんが怪物の孔雀兜なわけないじゃないですか?」


「ココちゃん、ごめんね、からかって。 ところでココちゃん、もうデスマッチ無くなるよ? どうするの?」


 ココは不安な目で酒の入ったグラスを見つめ…


「皇帝アーネストがデスマッチを禁止にするんですよね…どうしようかな…」


「普通の闘技にしたら?」


「そうですよね…それしかないですよね? でもワタシはデスマッチしかした事ないから、噛み付きと目潰ししかした事ないから…」


 不安なココにレデイーナはグラスを突き出して、

「乾杯しよう」


「乾杯?」


「いつでもワタシを頼りなさい、弱いけど普通の闘技を教えてあげるから」


 ココは凄く嬉しそうに!

「はい!」




 乾杯をいざ交わそうとした、その時だった…


 レディーナさんの肩をポンと叩く、この国では非常に珍しい東洋人の女が、


「出ろ」


「アヤ? 何事?」


「スフィアが仲間を連れ、ドトールに向かっている…あれもいる」


「雷神・・」


 「雷神」と言ったレデイーナさんの目つきが明らかに変わった。

 アヤと言う名の、髪を結んだ女はワタシの方をチラッと見て、

「『Ⅹ』と『黒バラ』が外で待っている。 急げよ」

 東洋人の女は外へ出た…


 レデイーナは、

「ココちゃん、ごめんちょっと出かけてくるわ」

 小銭の入ったツギハギの布袋をテーブルに置いた。



 ワタシは永い別れを感じたから…


「ワタシも付いて行ったらダメですか!?」


 レデイーナさんは別人の様な鋭い眼差しで、

「ごめんなさい…足手まといになる」


ワタシを突き放した。




その怖い顔が最後。 二度と会う事は無かった。

例え、あの優しいツギハギのレデイーナさんが偽りの姿だったとしても、暗黒の人生を光に導いてくれる存在を無くしたのね…ワタシは、新しいワタシを失ったわ。


レディーナさんが、今何をしてるのか知りたいし、もう一度、会いたいの…




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