40話 薄暗い雨の日 3
外したオリバーは! それも予測してたように! すぐさま後ろ回し蹴りをメロデイに!
それも飛んで避けるメロディ!
飛んだメロデイは心の中で
(こんなにも速かったのか? くそ、ガントレットがあれば抑えれた!)
すぐさま次の横切りの剛斬撃が空中のメロデイを襲う!
なすすべなく、メロディの腹はグチャっと裂けた。
深手だった。
それを見たブロディは膝をガクッと落とした。
それが見えたメロデイは心の中で、
(そんな顔するなブロディ… 狙いは外さない)
メロディの足が地に着いた瞬間!
「トドメ!!!」
(そう来ると思ったよ…ワタシの勝ちだからな…)
コブシを握った中腰のメロディは無表情で落ちてくる大剣を見る…
(勝ったと思ったんだろ? だから全力で考えなく単純に振り下ろす)
メロディの右の拳が大剣へ! バルムートの神技『白刃ぶん殴り』!
ぶん殴られた大剣パトリオットは逸れ地を砕く!
「なっっ?」
驚くオリバー!
直後、大きく振りかぶって渾身の力で!
「うおおおおぉぉぉ!!」
メロディの『極めの打撃』がオリバーの顔面のど真ん中に!
「ぶえぇぇぇっ!」
オリバーの巨体は吹っ飛ぶ!
メロディは倒れたオリバーに、
「はぁはぁ…まだだ…コイツはこんなもんじゃ殺せない…死ぬまでぶん殴る」
腹から血を出しながらメロディはオリバーに歩み寄る。
オリバーはゆっくりと立ち上がるが、ダメージ大きく膝がガクッとなった。
「クソがぁぁ…! バルムートもお前も! うっとおしいんだよ! お前らがいなければ! 俺のアナの聖騎士が! クソが!!」
凄い形相で大剣を持ちオリバーは気合を入れて立ち上がるが、すでにメロデイの間合い…
「ふん!!」
メロデイの追撃の『極めの打撃』を脇腹に喰らう
「ぶッッ!!」
肋骨が砕け致命傷レベルのオリバーは命の終わりを感じた…
脇腹を両手で押さえるオリバーの…その口から…
「す、すまなかった…も、もうゆるしてくれ俺の負けだ…」
「なに?」
「仕方なかったんだ…」
「仕方なかった?」
「あの時…バルムートを試合後に殺せと命令があった…ゴホ」
「どういうことだ?」
メロディは臨戦態勢を解き、顔を近づけた。
「ゴホゴホ、陰謀があった…黒幕がいる…ゴホ」
「黒幕?だれだ!? えっ」
その一瞬! オリバー! 持てる力でメロデイの深手の腹に手刀を刺す!!
メロディの膝は地についた…
「ぐっそ…オリッバァァ…」
オリバーはフラフラで立ち上がり、
「馬鹿か? 黒幕なんているわけないだろ? カスが首を叩き切る」
大剣をゆっくり手に取る。
メロディは大剣を見つめ、
「バルムートさま…ごめん」」
すでに、ブロディは走っていた。
大剣が、振られた時、ブロディは渾身の力でオリバーの首にヒジ打ちして突き飛ばす。
スッとすぐ立ったブロディ。
戦っていた二人は倒れていた…
右側には仰向けののメロディ、左側にはうつ伏せのオリバー、うつ伏せオリバーの動きは完全に止まった。
「ブッロ…ディ…おね‥が‥い」
「なんだ?」
「かたき…をと…て…その‥カタ…ナで…」
ブロディは鼻から下が完全に潰れてしまったメロデイの無残な顔を見つめる。
しかし、顔よりも腹の深手が酷かった。
「メロディ? お前はそれでいいのか?」
薄暗い雨天を虚ろに見つめるメロディは、
「う‥ん…」
「良くないだろ!!」
「かく‥めいがんば‥てブロディな‥らできる…は‥やくオリバ‥ころ…してよ」
その時…
城門が開いた。 音で、それに気づいたメロディは、
「はや‥く‥ブロディ…に」
城から聖騎士ググが数名の騎士を連れ出てきた。
スキンヘッドも同じタイミングで革命隊の仲間をたくさん連れて来た。
ブロディは 手のひらを突き出し革命隊に来るなと合図を送った。
スキンヘッドは悔しそうに、
「ブロディさん…やっぱり」
と呟いた後、革命隊に隅に隠れるように指示を出した。
騎士の一人が異変に気付き、
「なんだ!? どうした!? 衛兵! 集まれ!!」
ブロディはカタナを投げ捨ててメロデイに・・・
「メロディ、これでオリバーは殺せなくなった」
「にげ・・・てブロデ・・・逃げて・・・おね・・がい・・・にげ・・・て」
ブロディは遠くの雨雲を見つめた後、倒れたメロデイに優しい笑顔で、
「メロディ、お前の人生はこんな薄暗い雨じゃないよ」
と言い、両手を上げた。
「ブロ…デ…ィ‥‥」
両手を上げたブロディは、
「ワタシはブロディ!! 革命隊のリーダーだ!! 今ここで投降する!!」
すると、騎士達の中から白馬に乗った聖騎士ググが、ブロディの前に来た。
ブロディは馬上の聖騎士ググを見上げ、
「革命隊の存在をもちろん知っているよな? バカで有名なクソ女でも?」
聖騎士ググは、すでに存在に気づいていた隠れて見ている革命隊達と、倒れているオリバーをチラッチラと見た後、アナ帝国第16代聖剣『ホーリー・ググ』を抜き、その聖剣の先をブロディに指し、
「冗談抜きで、なんか怪しいとは思っていたんだけど、まさかリーダーとはね? ダサすぎる生き恥レベルの入れ墨されたクソ以下女が…」
「我々、革命隊8271名は、たった今をもって解散する」
聖騎士ググはブロディを睨みながら、
「へえ?それは助かるわ…8271か」
「その代わり条件がある、メロディの治療をしろ…」
聖騎士ググは 白馬からシュっと降り、ブロディの前に立った、顔と顔の距離はすぐ近く、
「ブロディ? それなら誠意を見せてよ、死んじゃうわよ?この赤毛」
「誠意? なにをしたらいい?」
「いつものアレ見せてよ? 生き恥を」
ブロディは躊躇なく背中の飛竜の入れ墨を露わにした。
聖騎士ググはつまらなさそうに、
「あっさりとしたらつまらん…飛竜か?」
聖騎士ググが死にかけのメロディを見て、
「強大な飛竜は神の使いか? …革命を捨ててまで、助けたいとかお前にとって、この顔の潰れたゴミは神なのかな?」
「お前に言う必要は無い」
「そうだな。 はっきり言って知る必要も無いわ。 2人とも、もう二度と会う事も無いしな 脱獄不可能ドトール刑務所で死ぬまで仲良くしてなされ…」
聖騎士ググは集まってきた衛兵達の方を向き、
「木偶の坊と赤毛の治療をしてやれ!」
聖騎士ググはオリバーとメロディの治療を指示した後、衛兵に手枷を付けられるブロディの耳元で皮肉な笑みを浮かべながら、
「お前ごときが革命をほざくは100年早い…」
シュっと白馬に乗り城内へ消えた。
ブロディは城内に連行され…
ブロディの革命の夢は途絶えた…
遠くの雨雲の隙間には、虹があった。