30話 ブロディ24歳
ロメロは酒場ソールドアウトに到着した。
カウンターでは、肉料理を前にブドウ酒を飲むメロディと、カウンターの向こうに店主の姿があった。
「ロメロ、待ってたぞ」
と、メロディは横に座ったロメロのグラスに、『✖』のラベルの貼られたブドウ酒を注いで、
「ロメロ♪ 一番安い酒の方が飲みやすくて美味しいよな♪」
「そうですね」
ロメロはカッと飲み干し、手酌で酒瓶からブドウ酒を注いだ。
店主にメロディはニコニコと、
「ソールドアウト、今日は初めてロメロに負けた」
店主はびっくりた顔で、
「すごいじゃないですか!? ロメロ君!」
嬉しそうにグラスを持ったロメロは、
「奇跡ですよ」
店主はマッチで、ロメロの咥えたタバコに火をつけて、
「この店が革命隊集会以外で満席になるレベルだよ~」
ロメロは他に客の居ない店内を見渡し、
「そのレベルです」
と、ぷは~~っとタバコを吹かした。
店主は「ジョークだよ~」と言いたかったが言えなかった。
店主はメロディに、
「リーダー? ブロディさんと他の幹部は、まだ帝都に?」
「うん、でも今朝、手紙がきた。 ワタシも呼ばれたから明日の朝に帝都に向かう」
ロメロは心配そうに、
「一人で大丈夫ですか?」
メロディはブドウ酒を一気に飲み干した後、ロメロをジロリっと睨んで、
「ワタシはブロディと違う、一人で問題ないもん」
数日後の昼…
帝都の大広場のバザーに…
なお一層、金色の髪が長くなったブロディの姿があった。
その後ろには幹部のスキンヘッドと黒人、その後ろには屈強な革命隊が7人。
革命隊を連れ歩くブロディの前に、
バザーを管理する 下っ端の性悪そうなネズミの様な顔をした公安の男が立った。
「ブロディだな?」
「お前だれ? その顔どっかで見た事あったかな?」
ブロディはタバコに火をつけ、公安を見下し、
「何か用?」
公安はブロディの腰のカタナと、後ろの革命隊を気にしながら、
「バザーの出店者達から公安に陳情が殺到してるんだよ…お前たちミカジメ取ってるそうだな?」
「誰が言ってるの?」
「それは言えん…」
ブロディはため息を吐いた後、
「仕方ないね」
ブロディは後ろのスキンヘッドに、
「おい」
スキンヘッドは黙って小さな布袋をブロディに渡した。
ブロディは、その布袋を公安に突き出し、
「いつまでも、こんな所に居る下っ端じゃ大変でしょう?」
公安は布袋に一点集中しながら、
「なんのマネだ?」
「2金ある。毎月、アンタにこれだけ渡してやるから。仕事は適当にやれ」
公安は素早く布袋を取り、懐に入れてブロディに、
「3金だ! 次回からは3金だ!」
ブロディはタバコの煙を公安に吹きかけた。
「2金だよ…背伸びすんな…」
公安は、
「ちっ…」
と去って行った。
黒人がブロディに、
「ブロディさん…そろそろ時間です」
ブロディは長い金の髪をなびかせ、
「ルマンド侯爵はワタシとしか会わない…お前達はアジトで待ってて」
「分かりました」
と黒人は革命隊の方を振り返り、
「酒場で待機だそうだ」
革命隊を連れて行った。
一人残っていたスキンヘッドはブロディをジッと見つめていたが、
「お前もダメだ…すまない」
「わかりました…」
渋々、スキンヘッドも革命隊の方へ…
ブロディはルマンド侯爵の屋敷へ向かう。