27話 第一回革命隊決起集会 3
振り下ろされたロングソードは!
メロディにガントレットにがっちりと握られた!
「なにぇっ?」
「軽い~~そこそこ速いけど」
メロディはシュっと、瞬速でロングソードを取り上げた!
「え?ちょっ?」
「断言する…お前は弱いものイジメしてただけだ」
直後!
「ぎゃぶえぇぇ!」
ロメロの左膝を破壊するローキックが…
瞬く間に終わり、若い客達は無言の静寂の中…
椅子に座っていたブロディは、もがき苦しむロメロを見ながら、タバコを灰皿に捨て、
「後はよろしく」
と言うと、無言でスキンヘッドと黒人が、店内からロメロを引きずり出した…
「見たか?」
「あのロメロが…」
「つええ…」
客の声を遮るよ様に、メロディは拳を挙げ訴えかける!
「革命の若き志士達よ! 永久に語り継がれる伝説は今! この場所から始まる…!」
と、ブロディの台本通りのセリフを言った。
若い客達未だに静まり返っていた…だが、心の中では、はけ口の無いずっと溜め込んでいた閉塞感は、この時の勇ましいメロディを見て決壊していた。
静寂をかき消す声が、
「ワタシ入ります!」
店の手伝いのクミであった。
クミはブロディを見つめ、
「ワタシは二人の子のシングルマザーだけど入れますか、年は若くはないですが」
ブロディは、クミに右の手の平を突き出し、
「だめです。あなたは子供を育てないといけない」
クミはうつむき…
「そうですか、そうですよね」
ブロディは優しくクミの肩に手をやり…
「クミさんの夫は、病気で亡くなったと聞きました。」
クミは声を震わせて…
「はい…薬を買うお金が無くて…」
ブロディは優しくクミを抱きしめ、優しい顔で…
「クミさん泣かないでください。 我々、革命隊は、あなたの様な人たちのために戦うんです。陰からワタシたち革命隊の成功を祈って頂ければ」
「分かりました…革命の成功をお祈りします…」
クミはブロディに深々と頭を下げた…
あちらこちらから、
「オレ入る」
「私も」
「お前入るか?」
「ああ」
「ならオレも少し怖いけど」
「変えないと俺たちで」
「そうだ革命だ」
店内は覚悟の雰囲気に包まれた。
流れを読んだブロディは長い紙をおもむろに取り出すと、
「革命隊に入隊する者は! この入隊書状に名前を書き! その上で拇印を押してもらう!」
ブロディは己の手首を、勢いよくスッとナイフで切って、
「っっっぅぇ!?」
近くにあった皿に、ボトボトボトと血を注ぎ、
「…拇印はこのブロディの血で文句ないだろう!?」
「はい!! 入ります!!」
「ブロディさんの血で血判状…?あつい!」
「オレが一番乗りだ!」
我先に血判状に群がった!
人心掌握に成功したブロディは、切った手首を布で巻きながら心の中で、
( ちっ、予定よりも調子に乗りすぎて手首を深く切りすぎた…まあ…予期せぬ『剣闘士のイチャモン』と『クミさん』のハプニングがあったが、逆に結果オーライか…? 本当はメロディに手首切らして『不死鳥の血判状』とかいうのでもっと煽りたかったが… 断られたから仕方ない…)
10分後…
全て34名の血判状は出来上がった。
ブロディは新たな革命隊に、
「月2回、この酒場で革命活動集会をする。次回は14日後だ。それと、帝国に不満がありそうな者はスカウトしろ。ただし直接、集会には連れて来るな、平日にこの酒場に連れて飲みに来い。ソールドアウトに言えば後日、この酒場でワタシとスキンヘッドが面談する」
革命隊一同は、
「はい!」
ブロディは革命隊を見渡した後、
「ワタシとメロディは去るが同志諸君は、この酒場でどんどん飲んで食べてくれ! ではまた次回会おう!」
「はい!」
メロディとブロディは酒場の外へ、
ブロディは、ロメロのロングソードを興味深そう見つめるメロディに笑って、
「メロディ、さあワタシ達も飲むか? 反省会だ」
「え? でもどこで?」
「ワタシの借宿でいいだろう? ブドウ酒もあるぞ?」
「ブドウ酒? 分かった行く」
二人は酒場ソールドアウトを後にした。