22話 「犬」のスフィア
明るい月が照らす路地
武闘ラドンはメロディに言い放つ…
「すぐそこに河川敷があったな? そこならお前を即死確認した後に、川に即ポイ捨てできる。ついて来い」
河川敷へ歩く5人。
前列はラドンに小太り。
後列はメロディにブロディとその部下スキンヘッド。
スキンヘッドは前を歩くラドンと小太りを見ながらブロディに話しかける。
「ブロディさん…ドトールの『クロス男爵』の子、引きこもりの『モロス』が、あんな大物を連れて来るとは思いませんでした」
「まあ…クロス家の財産をモロスから大半パクったからな」
「しかし、登龍門ラドンとか…クロス家の範疇を越えています。クロス男爵は爵位は持つが財・地位・血統どれを置いても爵の中では低く…そんなパイプがあるとは思えません」
「たしかに…」
その時
前列の足が止まりラドンが、
「スフィア様?」
続いてモロスも前の人影に喋りかける。
「スフィアさん? どうしてここに?」
人影がモロスに話しかける…
「モロス、もう行かなきゃいけないの。 ワタシがここに来たのはモロスに別れの挨拶をするため」
「もう行っちゃうの!? スフィアさん!? こんな夜に!? どうじて!?」
人影は右足の古傷のせいでやや足が悪そうに近づくと、月の明かりにその顔がさらされた。
白いフードの服を着た
ベリーショートヘアー
右の隻眼を白い布で隠す女 『犬』のスフィア 40歳
スフィアは モロスに近づき…
「昔のドトール闘技場に詳しい年寄りがワタシの事に気づいたかもしれないから…急いで街を出たいの…またクロスとモロスに会いに来るから」
「でも…金をブロディちゃんから返してもらわないとパパに怒られちゃう…だからラドンさんにお願いして…グス」
『犬』のスフィアは 背の高い『蛇』のラドンの眼を見上げ、
「ラドンは血に飢えた武闘ラドン…戦いたい気持ちは分かるが、今は我慢してくれ、頼む」
「勿体ないお言葉」
「時が来れば好きなだけ殺ればいい」
ラドンは両こぶしを重ね 頭を下げ
「承知…」
再びスフィアはモロスを見て、
「安心しなさいクロスは怒らない」
「え?」
「クロスから話を聞いて、ワタシ共から心ばかりの金を渡した、クロスはもう全然怒ってない」
「ほんと?」
ほっとしたモロスは すぐさまブロディを見つめ、
「でもブロディちゃんと…僕ちんはブロディちゃんと結婚したいんだ…絶対に永久にぃぃ…グワラマギィィ…バロゥムカァァ」
とブツブツとニヤケて何か独り言を呟きだした。
スフィアはモロスの肩をパンと叩き、
「先に帰りなさい…」
「うっ…うん…」
モロスは ブロディをチラッと凄く悔しそうに見た後、両手を広げヒョッコヒョッコと小走りで家へ帰っていった。
「心底、変わったデブだ」
と呆れた顔のラドンの横で、スフィアはモロスの後ろ姿を真顔で見つめ、
「ああ見えてモロス君はとてつもないサディストだぞ、いい管理者になる」
直後、んっ? と、ガントレットを装着したメロディを見て、
「ドトールの剣闘士?」
メロデイはスッとガントレットを構え臨戦態勢になり、
「違う」
スフィアはメロディに笑みを浮かべ、
「そそられる…ラドン、こんなゴチソウをごめんね」
フードを被り顔を隠し、
「ラドン、雷神が待ってる、行くぞ」
ラドンもフードを被り、
「スフィア様? 足は大丈夫ですか?」
「まだ動く」
スフィアとラドンはサッと闇夜に消えた…
その直後だった。
ドッドッドッドーと白馬に乗った、20代半ばくらいのこの国では非常に珍しい東洋人の女が現れ、
「あなた達! 片目の女を見なかったですか!?」
スキンヘッドが、
「さっきアッチに!」
と南を指さすと、
東洋人の女は大声で!
「Ⅹ! 黒バラ! 孔雀! みなみ!!」
去った。
スキンヘッドは、困惑しながら、
「Ⅹ、黒バラ、孔雀って…まさか上位聖騎士? まさかな…」




