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19話 メロディ17歳


 メロディは呟きながら近づく、

「え?」

「バルムート様?」

「うそでしょ?」

「うそ」

「だいじょうぶ生きているかも」

「・・・・死んでなかったらいい」

「ゆめ? ゆめならさめろ」



 審判の「危ないから来るな!!」の声は聞こえず…


 触れたバルムートの骸はまだ温かった。その手から伝わるように…目の前の剣闘士達に押さえつけられているバルムートを殺した男への…わなわなと沸きあがる憎悪の熱が心を支配した。

 この卑劣すぎる男の名はオリバー…バルムート様は不殺…不殺? ならこの男は?




 メロディは速く、オリバーを殴るために走る!


 押さえつけられながらも、近づく敵に気づいたオリバーは!


「カスが」


 とボソッとメロデイに言い放つ。


 メロディにとって信じられない言葉が聞こえてしまい「なに?」となった一瞬!


 押さえつけてた剣闘士の隙間から強烈な前蹴りがメロディの腹部を襲った!



 10歳への身体へのオリバーの本気の蹴り…

 メロディは吹き飛び、意識も飛んだ…




 バルムートの死後、タイガは全くと言っていいほど悲しみを出さなかった。

 バルムートの子を宿していたからかもしれない。

 バルムートが生涯で稼いだ資産が全て手に入る権利がバルムートの子にある。

 新たな子の存在と、タイガの切り替えの早さは、メロデイとタイガの親子の関係に亀裂を生む。



 男の子を生みタイガはますます変わる。


 今までは質素だった館の内装は豪華に…


 今まで来なかった化粧・香水・宝石売りが来ては母に愛想を振舞う…


 性格までも、《《今まであった愛が見つからなくなる》》。


 そして…


 年々… ふくよかになっていく…



 7年後のある日…




 メロディ 17歳




 ずっと毎日、欠かさず滝で修行を続けるメロディは大木を殴りながら自問する。


 ワタシは母さんを…… ぜったいに否定しない…


 でもワタシはどう生きればいい?


 剣闘士? なってもオリバーはもういない…


 アナの聖騎士ググの直属の騎士になってしまった。




 修行を終えて、館に帰ると、

 最近、よく来る笑顔の多い中年の借金取りが来ていた。


 メロディが、家族の晩御飯を作る向こうで、昼からブドウ酒を飲む太った母と、借金取りがテーブルで座り話しをしている。


「タイガさん、この館を売ればなんとかなりますよ。 十分に残ります」


「いやです、この家を売ったら何処で住むのよ? それに死んだバルムートに思い入れもそれなりあるの」


「なら、アレを売ってくれませんか?」


「アレ?」


「バルムートの『ガントレット』を高額で欲しがっている貴族のコレクターがいるんです。 ドトール闘技場史上最強と呼ばれた王者『バルバトス』から子『バルムート』へ受け継がれたガントレットですよ」


「高額って? 幾らくらい?」


「500金で買ってくれるらしいですよ」


「え!! そんなに? 余裕で借金返せますね♪」


 米を洗っていたメロディは、ピタッと手を止め…心 配そうな顔でタイガを見て、


「かあさん…」


 酒を飲むタイガはジロッとメロディを見て、


「おまえは黙ってなさい…」


 そう言われたメロディは

 ( かあさん、それだけはやめて )

 と心で願ったが話は進んでいった。


 研ぐ… コメと水の感触のむこうで、にこやかに話す太ったタイガ…


 メロディは初めて母を否定した。





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