エピローグ 絶て!!
聖戦の日の昼。
俺は、ドトール女子刑務所に下りた後、
スフィアの落ちた、奈落への崖際に歩んだ…
「すまんが!! 誰か来てくれないか!!」
誰も来ないから、建物に歩んだ。
入ると、女囚は皆、鍋など到底、武具とは言えぬモノを俺に向け構えている。
両手を広げ、
「争う気などない!」
1人の若い女が来た…
「男の人がなんのようですか!?」
「頼みがある…」
「なっ、なんですか?」
来る途中に、仕入れて背負っていた長い長い縄の塊を下ろし、
「ここの奈落の崖の下にいる女を助けたい… 俺の体に縄を付けて飛び下りる… みんなには俺と女を持ち上げてほしいんだ」
「崖の下…? スフィアですか?」
「ああ…」
「2か月も経ってますし…絶対に死んでいます」
「死んでない」
向かい見つめ合った… 長い沈黙に…
「タダとは言わない…」
俺の最後の金の入った布袋を女に渡す。
中を見た若い女は、
「こんなに? 分かりました… ワタシはこの刑務所のボスのエリです」
「ありがとう」
エリの取り巻きの女がエリに耳打ちしだした。
エリはこっちを向きながらの声が聞こえた、
「大丈夫…あの目は信用できる…あの目は女のためなら死ねる目だから…」
俺は縄を、腹に縛り海へ飛び下りた…
バシャ――ン
いたんだ…
そこに…
スフィアが…
その時、最高に感動した…
泳ぎ寄り…
何を食べてました?
何を飲んでました?
問うと、
「ずっと岩壁沿いで、貝を漁ったりテングサを食べ、雨の多い時期だったようでフードの服についた水を絞って飲みました… あなた誰ですか?」
え?
「まったく目が見えないんです…」
そうですか… この声は? 覚えていますか?
「いいえ… ごめんなさい…」
とりあえず…
合図のために、縄をグイっと引っ張り、力強く抱いたスフィアごと…
上の女囚達に上げて貰った。
女子刑務所を出る…
持っていた金は、上のリフト係の買収と、下の女囚への報酬でほとんど使った。
看守も女囚も、スフィアが救出された事は話さないだろう、
逃がした重罪を受けるから…
グテっとしたスフィアを馬の前に乗せて走る…
当然… 聖戦も気になるが…
俺にとって、前にある温もりが一番大切だった。
アナ帝国を出て、
ならず者国家の小さな町の、小さな茶屋で馬を止める。
目の見えないスフィアを誘い、外のテーブルの椅子に座らせた…
小柄な店主が注文を聞きに来たから、
「水をくれないか?」
「…はい、他には?」
「あ…うん…」
ポケットの中をまさぐる…
ほんの僅かだけある金…
それを手渡して、
「彼女に… なにか温かい物を…」
「ならウチは温かいココアがおすすめです」
「ああ… たのむ…」
「1つで?」
「ああ…1つでいいが… これで足りるのか?」
30代くらいの小柄な無精ひげの店主は、小さく頷きながら、
「はい」
あの店主… 昔… どこかで会った事があったかな…?
スフィアの背中をさする…
大変だったな…?
病気だった体… 大丈夫か…?
ココア2つがテーブルに置かれる…
「え? 1つだぞ?」
「気持ちです…」
頭を下げた後に、調理場に入って行く。
俺は、ありがたくて… 調理場の方へ頭を下げた。
「本当にありがとう… スフィア…飲んで」
スフィアに器を握らせた。
ふぅふぅ… 顎を何度も上げ、美味しそうにすぐに平らげた。
「まだある… 飲んで」
おかわりの器を握るスフィアを見て、
すごくうれしかった。
それも、すぐに平らげた。
スフィアが言う。
「あの… スフィアってだれですか?」
「あなたです」
「ワタシはスフィアじゃありません…」
「スフィアですよ」
「ルカです」
「うん…ルカでいい。 名前はどうでもいい…生きてさえくれれば…きれいごとじゃないんだ…心から生きてさえくれていれば… 俺は幸せなんです…」
両目を瞑ったままのルカは… こっちを見て…
「ありがとう… あなたの名前は?」
「え? あの…ラドス…? ラドス」
ならず者国家のルーベラにある、俺の借り家に帰った頃…
聖戦で雷神が負けた事を知った。
ルカとは、すぐに結婚した。
毎日、妻の病気が治りますようにと願いながら、山に治り草を取りに行った。
妻は、身重でも指圧の仕事をして金を稼いだ…
ルカはすごい頑張り屋さんだ。 やっぱり… 頭が上がらない…
1年後…
2人の間に、双子が生まれた…
母乳を飲んでスヤスヤと眠る双子…
妻が俺に聞く、
「名前は?」
「姉はリンカ… 弟はルカが決めるんだろ?」
「シトリーはどうかな?」
「シトリー? それはやめておけ」
「うん…わかった…やめる」
妻は少し考えて、
「ラドスとワタシの名前を取って…ラルカ…どうかな?」
「それがいい」
盲目の妻は、双子の頭を順々に撫でながら、
「リンカとラルカ… 健やかに長生きできますように…」
その後、
平穏にただ過ごす…
俺は闘争に満ち溢れた過去を… あえて忘れて…
数年後…
アナの聖騎士メロディが、アナの皇帝アーネストの嫡男を生んだ後すぐに、妊産死した。
皇后の陰謀説もあったが… そんなもの部外者は誰も知るよしも無い…
その数か月後…
死んだメロディを称えるためにか…
メブディというペンネームの誰かが書いて、
出版された『永久聖騎士伝説』…
買って読んでみた…
あまりに事実無根な酷すぎる内容…
徒党を組んで勝ったアナが正義の国?
それに、涙を流し降伏したレナは悪しき国?
存在を完全に消されているアナの16代聖騎士ググ…
アナの聖騎士メロディは、相棒ブロディの操縦する飛竜に乗り、空を飛び回り悪と戦う正義の美しきスーパーヒロイン…
黒魔術を使い世界の支配を目論む両目のあるスフィアは邪悪な魔女… 奈落で落ち死ぬ時は泣いて命乞い?
スフィア自慢の雷神は、メロディのガントレットパンチで宇宙の彼方まで飛ばされた。
雷神の配下の『蛇』と『カラス』はシュルシュル、パタパタと何処へ逃走。
アナの帝都広場でレナの国王と共に、さらし首にされたミスティ様まで… 肉欲に溺れた奸臣とされている…
死んだメロディが月で永遠に生きているだと?
ふざけるな!!
こんなバカげた内容はありえない!!
こんなのひねくれたガキが思い描いた話だ!!
だから俺は、文など書いたこと無いが、
真実を記した『真』の聖騎士伝説を書きたいと思い…
その日に、
書屋で、無地の分厚い本と、ペンを買った。 …翌日、辞書もな。
バン!!
『真』聖騎士伝説を全て読み終え… 本を強く閉じた…
俺は少し目を閉じた後に…
妻のルカいや… 対面に座るスフィアを見る…
窓からの夕の日差しを顔に浴びながら、こっちを向いている…
俺は言った、
「あなたがスフィアです… アナへの復讐が始まる真聖騎士伝説の続きを俺に書かせてください…」
「ラドン… ワタシの記憶は1週間前に甦っていたのです…」
「え?」
「1週間前、子供2人をローラおばさんの本の読み聞かせに行ったとき…子供たちと一緒に『永久聖騎士伝説』を初めて聞き始めました、そして昨日、最後まで聞き終えました」
「それで…?」
「よみがえってしまった…」
「怒りでよみがえったのか…? あの闘争心が!?」
スフィアの閉じた目から… 涙がこぼれた…
俺が初めて見た… スフィアの涙…
両膝に置いた手が震えている…
「なぜだろう… ワタシには…あの本を書いた者の気持ちが‥‥‥痛いほど分かるんだ…」
「わかる? なにが?」
「死にたいほどの後悔が…」
「後悔?」
スフィアは声を震わせて…
「ラドン…もう…止めよう…」
「うっ…」
「折れれば…もう…この星に…たくさんの後悔は生まれないんだ…」
それを聞いた時、俺は自然にスフィアの前で両膝と両肘を床につけ…
真聖騎士伝説を開く…めくる めくる めくる
この本で俺が書いてきた…数えきれない死が俺の胸に熱く訴えかけてくる…
まるで… 絶て!!と
「……うあああぁぁ!!おぉぉ!! あぁぁ!! うぅっ…あぁぁ!!」
俺の書いた本で… 俺が…泣いた…
「ただいま!!」
「ただいま…グス…おねえちゃんにぃぃ」
「どうしたのお父さん?」
「なんでもないのよ… コショーを誤って顔にかけてしまったの」
「うわ~」
「それはきついな~グス」
「今日は外で食べましょう」
「やった~!」
「うん!」
「なにを食べたい?」
「やきにく!」
「ぼくも! おにく!」
「うん、今夜は、家族4人で美味しいお肉を食べに行きましょう」
翌日、
家の近くの『家族の絵』を描きますの看板が表に出てる、アトリエで、
若い画家 「それじゃあ…お父さんとお母さんは後ろで手を繋いでくださいね? お子さんは前で手を繋いでください」
ルカ(元スフィア) 「じゃあ…ワタシの右手はリンカの右肩を触るわね、あなたはラルカの左肩を左手で触って」
ラドス(元ラドン)「よし」
若い画家 「それいいですね? 家族が一つに繋がってます。 では… あまり動かないでくださいね」
若い画家は、描き始めた。
途中、ラルカがくしゃみをした
ワタシはラルカの頭を撫でて、また手をリンカの肩に置く…
目は見えないけど大切な温もりが伝わる
ワタシは愛するあなた達が
生きているという事だけで幸せです
その夜、家の前で夫婦で肩を寄せて座り、
真聖騎士伝説の本を燃やし黙祷した。
涙が止まらなくなったワタシを、夫は優しく肩を抱いてくれた
32年後
子がたくさんの騒然とした朝の食卓、
リンカの旦那が仕事に行く、
「リンカ行ってきま~す」
「いってらっしゃ~い」
子供のお弁当の料理しているリンカは、
「おばあちゃんまだ寝てるのかな? 珍しいわね~」
起きたばかりでアクビをしながら来た長女を見て、
「あんた、ルカおばあちゃんを呼んできてよ」
「ふぉあ~~い」
長女は起こしに行く、
「おばあちゃん♪」
ドンっと、ベッドの上の掛布団に上半身を当てて、
「朝だよ~♪」
「おばあちゃん?」
肩を強くさする…
「お…おばあちゃん…?」
長女は驚いた顔になり、
「おかあさん!! おばあちゃんがぁぁぁ!!」
母に知らせに行った
やすらかな顏で永眠した、真っ白な髪のスフィアの上には
手をつなぎ合う、家族4人の絵が飾られていた
ドライアース 瞼の向こうの太陽
FIN
強さ序列
1位 若きスフィア
対個人155 対複数143 計298
闘争心100
2位 雷神(★巨体)
対個人150 対複数145 計295
闘争心90
3位 ハルゴ砦の奇跡時の怒髪天(★巨体)
対個人139 対複数150 計289
闘争心55
4位 聖騎士Ⅹ(★巨体)
対個人115 対複数115 計230
闘争心75
5位 『蛇』のラドン
対個人122 対複数105 計227
闘争心95
6位 メロディ (VSスフィア・雷神の闘争心オーバーヒート時)
対個人136 対複数50 計186
闘争心110
7位 聖騎士 堅獣ゲッペル(★巨体)
対個人102 対複数85 計185
闘争心60
8位 聖騎士 黒薔薇のフィーン(裏切者)
対個人106 対複数65 計171
闘争心60
9位 聖騎士 孔雀兜のロレディーナ
対個人110 対複数60 計170
闘争心60
10位 ハルゴ砦の奇跡時のドトール闘技場王者バルバトス
対個人128 対複数40 計168
闘争心60
11位 聖騎士 至高の聖者サラ
対個人96 対複数70 計166
闘争心95
12位 聖騎士 老将ドリアス(裏切者)
対個人92 対複数65 計157
闘争心60
12位 聖騎士アヤ(明鏡止水)
対個人97 対複数60 計157
闘争心75
14位 『蛙』のクーニャ
対個人94 対複数55 計149
闘争心80
15位 猛将 首狩りのサラマンド
対個人70 対複数75 計145
闘争心40
16位 聖騎士 大器晩成ルナ
対個人130(★対巨体のみ) 対複数10 計140
闘争心60
16位 聖騎士メルル+シャイニングトライデント装弾数1
対個人135 対複数5 計140
闘争心60
18位 アナ帝国の聖騎士ググ
対個人91 対複数45 計136
闘争心40
19位 鉄仮面グルギュラ
対個人85 対複数50 計135
闘争心30
20位 不殺のバルムート
対個人100 対複数30 計130
闘争心30
21位 ロメロの父の剣闘士ゴメス
対個人90 対複数30 計120
闘争心65
21位 オリバー
対個人80 対複数40 計120
闘争心45
23位 聖騎士シャーロット 武器クナイ
対個人68 対複数50 計118
闘争心60
24位 ココ
対個人82 対複数25 計107
闘争心65
25位 『鷹』のシトリー+ステラジアン
対個人55 対複数45 計100
闘争心40
26位 フォックス 武器 聖弓
対個人63 対複数35 計98
闘争心60
27位 ドトール闘技場四天王ロメロ
対個人60 対複数30 計95
闘争心40
28位 レナの聖騎士ミスティ
対個人25 対複数15 計40
闘争心70
読んでいただいた方に
ありがとうを