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96話 皇后エルドナ



 聖戦の4日前…


 アナ帝都城、メロディの部屋には、ブロディとココとスキンヘッドの姿が…


 メロディはブロディとココを見て、


「皇帝に頼んだ。 ワタシの付き人としてブロディとココは聖戦に参戦だ」


 ブロディは右手に持つ己のカタナを見つめ、

「ついに、この鞘を抜く時が来たようだな…」


 ココは不安そうに…

「ワタシなんかで役に立つのかにゃん…」


 ブロディの後ろに立つスキンヘッドは不安な顏でココを見つめ、

「なにせ…敵は雷神と登龍門最強ラドン…と、もう一人の『鷹』のシトリーも凄く強いでしょうからね」


 ココは唇を尖らせスキンヘッドに、

「お前は参戦できなくて良かったっと思ってる?」


 スキンヘッドはチラッとブロディの後ろ姿を見た後に、

「俺も聖戦に参加します…」


 ココは驚いて、

「はあ? お前が聖戦に? 自殺行為~」


 スキンヘッドは涙目でブロディの後ろ姿を見つめながら、

「革命隊のリーダーメロディさん、参謀ブロディさんが命がけで聖戦に挑むのに、幹部だった俺は黙って見ていられません」


ココ 「一応、ワタシも命がけで聖戦に出るだにゃん」


「ドトールの元革命隊の皆に声をかけて…聖戦に飛び入り参加する覚悟です」


ココ 「やめとけ、やめとけ、雷神は一人で二つの国を壊滅させたんだぞ…」


 スキンヘッドは半そでの左の裾を掴みながら…


「ブロディさん…おれの覚悟を見てください…」


 めくると、


 『ブロディ 命』


 と切り傷が…


ココ 「なんじゃ~? どういういみ~?」


 ブロディは、振り返り、切り傷を見て、


「スキンヘッド…ありがとうな」


 スキンヘッドは頭を下げて、

「ブロディさんの背中の飛竜…俺は好きですよ…ちょっとでも近づきたかったんです」


「スキンヘッド…」


「オレは先にドトールに行き、参戦する仲間を集います…またドトールで会いましょう」

 スキンヘッドは退室…


ココ 「ブロディさんはモテモテだね~」


 ブロディはタバコに火をつけ、

「まあな」


 メロディはココを見て、

「さっきからお前…まるで聖戦に参戦がイヤみたいだな? イヤなら出なくていいぞ」


 ココは嬉しそうに、

「とんでもない…モントリオ国の聖騎士、孔雀兜のロレディーナさんに、また会えるんだにゃん…」


「良かったな」



「ご主人様のおかげだにゃん♪」





 その夜…





 メロディは、皇帝アーネストに夕食を誘われた…


 メロディはブロディも誘ったが、ブロディは拒否。


 ココと共に、城の居館の豪華な部屋に招かれる…


 上座に皇帝…


 その右前に、メロディとココは並び座った…

 

 皇帝は後ろに立つ、いつもの4人の親衛隊に、


「下がれ」


「…はっ」


 親衛隊は皇帝に背を見せずに下がり、


 部屋には皇帝とメロディとココだけに…

 メロディは、目の前の料理を見て、ボソッと…

「意外に質素なんだな…」


 皇帝はメロディを見て、

「いまアナは大不況だ…経済が良くなるまで豪華な食は控えている」


「聞こえていました? そうなんですか…」


 皇帝は銀の盃を持ち、

「だが今宵は酒だけは最高の物を用意した…乾杯しよう…」


「何に乾杯しますか?」


「ここは次期聖騎士候補のメロディに任せる」


 メロディは少し考えて、


「陛下にお子が出来ますようにでは?」


「ははは…皇后はもう40半ばだぞ…まさか聖戦を前に、そのような答えが出るとは…フフ」



 メロディは従者から聞かされていた。

 アナ帝国ではほとんど表に出ない存在の…



 皇后エルドナ

 

 

 元帝都闘技場の剣闘士の女である。

 20年ほど前に帝都闘技場に来た皇太子に見初められ公妾(こうしょう)になる。

 その後、当時の皇太子妃は子を産む直前に妊産死で他界したことにより、

 エルドナは皇太子妃になった。

 しかし、その後は二人の間に子はできないでいた。

 アーネストが皇帝になってからは、老朽化しているドトール闘技場よりも、新しい帝都闘技場に予算を費やすように皇帝に進言している。



 

 メロディは皇帝に、


「でも子供は欲しいのではないですか?」


 皇帝は、杯を前に出し、


「では、乾杯はそれにするか?」




 その時…


 カチャ…


 ドアが開き…


 金髪の巻き髪、純白のドレス

 皇后エルドナが入ってくる…40半ばとは思えない若さと美貌であった。


 一目見た、メロディとココは…

 心の中で… 同じような事を


 (ブロディに… 似ている… )


 皇后エルドナは、皇帝の横に立ち…左手で肩を触った後に、首を傾けてメロディを見て…

「ドトールの赤い髪のメロディですね? あの邪悪なスフィアを殺してくれた…」

 傾けたまま笑顔を向ける…


 メロディはペコっと頭を下げる…


 皇后は笑顔のまま逆方向に首を傾け、


「素晴らしい乾杯ですね…お子を?」


「はい…」


 皇帝は皇后に顔を向け、


「盗み聞きしていたのか?」


「いいえ、偶然にも前を通った時にお声が聞こえました」


「フフ…しらじらしい」


「ワタクシも乾杯に混ぜてください…スフィアの死にも乾杯したいのです…フフ」


「よかろう」


 もう一つあった杯を皇后が手に持つと皇帝が酒を注ぐ、皇后の口から、

「メロディさん…以前からワタクシは陛下に、若い側室を取ることを進めているのです」


「そうなんですか?」


「陛下には子を持つ兄弟がいらっしゃいますが、お子がいなくては陛下自らの血が途絶えてしまいます…良ければメロディさん…側室になってくれませんか? これワタシ本意で申してます」


「ええ~?」

 驚くメロデイに、皇帝は…


「フフ…スフィアを殺した…赤い髪の黒い口隠しの聖騎士が側室か…意外と悪くないかもな」


 皇帝からの視線を逸らしながら、メロディ


「ちょっと…乾杯しましょう!」






 夜更け…

 

 ココに「おやすみ」の挨拶をした後に、部屋に戻ったメロデイ…


 テーブルの灰皿には吸い殻が山盛り…


「けむた! 窓開けてこれかブロディ!」


 ベッドに座り、ラッパで酒を飲むブロディは、


「遅かったな? 盛り上がったのか?」


「皇帝の……側室になる約束した」


「え? おまえが? ははっはあ?はははは! ははは!」


 ブロディはベッドに寝転がり大爆笑。

 少し機嫌の悪くなったメロディは、

「本当だからな? ワタシがブロディに嘘ついたことあるか?」


 ブロディは座り直し、


「はあ~おっかし~…」


 立つメロディと座るブロディは見つめ合う…


 ブロディの口角の上がった口から、



「なら、お別れだ…」



「え?」


「おめでとう…がんばれ」


「なんで? なんでだよ?」


 ブロディは目を瞑る…

 メロディにとっては長い沈黙が続く…



 まっすぐな目と笑みが向けられ、


「メロディ…理由は…聞かないでくれ…」


「ブロディ…胸が熱いよ…」


 ブロディは立ち…

 

 近づく…


 右手を差し出した、ブロディの口から、


「聖戦…」


「聖戦?」


「ワタシとメロディにとって最後のビッグイベントだ…」


「最後…なんか嫌だよ…」


「二人で力を合わせて絶対に勝つぞ…」


「やだよ…最後って…最後までついてきてくれよ…」


「この手を握れ…メロディ…」


 メロディは涙が浮かび始め…

「ドッキリだったら許さないからな…」


「お願いだ…聖戦に勝ったら…ワタシを絶ってくれ…」


 メロディは手を掴む…

 離したくない二人の手が…


 

 やがて離れる…



 

「メロディ? 久しぶりに一緒に寝るか?」


「ブロディ?」




 《 帝都のバザーで出会った… あの日の夜の様に 》




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