9話 ースフィア編ー ハルゴ砦へ
翌朝
シトリーの服屋に、昨日来ていた坊主頭の兵隊が来た。
隊長グルギュラは服屋の戸をドンドン叩く。
「スフィア! 迎えに来たぞ! お前まで病気になったと言わんだろうな!?」
すぐさま戸は開き、腰に聖剣『ステラジアン』をつけたスフィアが出て来た。
グルギュラはスフィアの顔をイヤらしい目で見て、
「昨夜で女になったか~?」
スフィアは真顔でグルギュラを見つめ、
「なった」
童貞のグルギュラはまさかの答えに、
「え?」
スフィアはスッとグルギュラを通過しながら、
「お前もがんばれ、いくぞ」
グルギュラは、キョトンとスフィアの後ろ姿に、
「いや、俺が隊長なんだけど…」
スフィアは兵隊のうちの一人を真顔で見つめ、
「向かう先は?」
「南に4キロ…ハルゴ砦だよ」
「よし」
一人でハルゴ砦へ、歩み始めた。
スフィアの後ろ姿を見ながら兵が、
「隊長、なんなんですか? あの女?」
グルギュラはタバコに火をつけ、
「ふう~ たま~にあんなのがいるのよ」
「ところで、いつ逃げますか?」
グルギュラは『ステラジアン』を腰に付けたスフィアの後ろ姿を見つめながら
タバコを吹かし、
「そうだな…もう少し留まってみるか…行くぞ」
グルギャラ達兵は、スフィアの後を追った。
そのあと…
静かに服屋の戸がスーッと開き、ソーっとシトリーが顔を半分出し、遠くなって行く、スフィアの後ろ姿を見つめながら…
「スフィア、約束だ…帰って来たら結婚しような…」
ハルゴ砦へ向かう道中、スフィアは前列で並び歩く、背の高いグルギュラの顔を見上げながら、
「グルギュラ、お前の知る限りの敵軍の情報を知っておきたい」
「あ? 呼び捨ては止めろ、隊長だ」
スフィアは、
「フッ」
と鼻で笑った後、
「隊長、敵軍の情報を知りたい」
「アナ帝国の主力40万、指揮するのはアーネスト皇太子」
「ほう? アナの皇太子自ら出向いて来るのか? ならば、皇太子を生け捕りにするが得策」
グルギュラは呆れた顔で、
「おう、そうだな。それに先方はフレデリクス烈将軍率いる兵5万」
「フレデリクス? どんな奴か情報はあるか?」
「斧を使う名将だ」
スフィアはジロッとグルギュラを睨んだ。
「なんだそれは? 他には無いのか? 過去のフレデリクスの陣形とか? 戦績とか?」
「おいおい。 知るわけないだろ? 俺たち『31番隊』は先方隊の駒だぞ」
スフィアはグルギュラを叱りつけるように!
「それでも情報くらい集めろ! 死ぬぞ!」
その後に、バラバラと歩く後ろの8人の兵達の方を振り返り!
「お前達もだ!」
と怒鳴った!
グルギュラは少し困惑しながら、スフィアに、
「おっおい…それと敵軍の先方隊にはドトールの剣闘士が数十名参加するようだ」
スフィアは再び歩き出し、手をアゴにやり、
「厄介だな? プロか…」
グルギュラはため息をついた後、
「そして、まあ…皇太子のすぐ近くには、ビジャ国からの助っ人聖騎士キングレオよ」
「聖騎士キングレオ?」
グルギュラは後ろを歩いている、左手の無い兵に、
「おい、お前の父ちゃんは見た事あるんだろ? スフィアに教えてやれよ」
「はい。キングレオもうとにかくデカい。そして黒色の布の様なモノで顔も頭もグルグル巻き」
後ろを振り向かず歩く、スフィアは興味深そうに、
「フフ 敵に恐怖心を抱かすために、特異な雰囲気を醸し出しているのかな」
「違う。顔がおぞまし過ぎるからビジャの王に隠せと命じられたそうだ。 怒ったり本気になると、頭部の布の隙間から逆立った髪が突き上がる。だから『怒髪天』と呼ばれている。」
スフィアは歩きながら、左手の無い兵の方を向き、
「武器は聖剣か?」
「聖剣は奴に取っては飾りだ。 奴の武器は鎖だ。 連結されている鉄の一つの大きさは人間くらいの大きさ。 それを全力で振り回し敵たちを…ははは、まじで会いたくねえ…」
スフィアは、怒髪天の鎖をイメージして、
「人間じゃないな?」
「父も言ってた」
スフィア達の前にハルゴ砦が見えてきた。




