表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

21


 冒険者支援学校? とわたしが首を傾げると、兄はわたしに向けて微笑んで見せた。


「その名の通りさ。冒険者を支援する学校。――育成、とも言うのかな。そこでは剣術やら魔術やら、冒険に必要な知識を教えてくれるらしいよ」

「そんな学校が……? おとうさま、わたくし、ぜひ入学したいですわ!」


 目をキラキラと輝かせて言うと、「まだダメ」と指でバツマークを作られた。じゃあいつなら行って良いのかとワクワクしながら父を見る。すると、父は小さくため息を吐いて、「せめて十二歳までは家に居て欲しいなぁ」と口にした。

 十二歳。あと七年か。……まぁ、そうよね。今、五歳のわたしが冒険者支援学校に入学できるわけもないか。わたしはこくんと父に向かってうなずいたら、父はほっと胸をなでおろした。


「それじゃあ、そこに入る前に基礎などを知りたいですわ!」

「んー、それはさっきの子たちにも必要だから、そうだね、家庭教師を雇おう。魔法の使い方と――護身術は身につけていたほうが良いだろうし」

「……冒険者になることは止めないのですか?」

「ラヴィは私の子だよ?」


 答えになっているような、なっていないような……。それでも、わたしの目標は大体定まったわけで。わたしと兄は顔を見合わせて、にっこりと笑う。剣術は姉と一緒に教わろうかなーなんて考えていると、ぐう、と盛大にわたしのお腹が鳴った。

 それを聞いて目を丸くする父と兄。そして、ふっと笑うと父がわたしの傍まで来て、頭をポンポンと撫でた。


「ごめんよ、ラヴィ。すぐにご飯を用意させるからね」

「……はい」


 顔が赤くなっているのがわかる。緊張が解けてしまったのもあるだろうけど……。イヤ確かにお腹も空いてるけど……!

 父が部屋から出て行ったのを見て、兄はじっとわたしを見た。そしてにこっと微笑んだ。


「……さて、ラヴィ? どういうことか教えてくれる?」

「え、えーと?」

「魔力切れになったラヴィが、こんなにも早く回復していること、ティアナさんが『聖』属性だと知っていたようなこと、僕に話すことがたくさんあるよね?」


 ――う。説明しないとダメ、よね……。わたしは手短に兄に説明すると、兄は小さくため息を吐いてそれからわたしの額にデコピンした。デコピンされたところを両手で押さえると、肩をすくめる兄と目が合う。


「……色々規格外な妹だよ、ラヴィは」

「あはは……」


 兄にも一応無限魔力のことは伝えた。そしたら、秘密にしようねとわたしの頭を撫でてくれた。やっぱり無限魔力って珍しいのか。

 そんなことをしていたら、父が扉を開けてご飯を持ってきてくれた。寝込んでいたからと甘いミルク粥にしてくれたみたい。パン粥。ああ、風邪をひいた時に母が作ってくれたなー……、ん? 待って? この記憶はどっちの記憶だ?


「ラヴィ?」

「あっ。えへへ。いただきます」


 両手を合わせてスプーンを手に取り、一口食べる。優しい甘さのパン粥は熱々で。しみじみと美味しかった。私が食べるのを、父も兄も微笑ましそうに見ていたのが気になるけれど……。

 ミルク粥は日本でも食べていた。あちらの母の顔も思い出せないけれど……。ううん、もしかしたら思い出せなくても良いのかもしれない。だってもう、わたしは日本に戻れないのだもの。

 ――この世界で生きていく。ぎゅっとスプーンを握って、それからパクパクとミルク粥を食べていく。全て食べ終わって「ごちそうさま」と手を合わせてから父へ視線を向ける。父は、どうした? とばかりに首を傾げた。


「おとうさま。冒険者になるために必要なことを教えてください」

「……ラヴィ。本当に冒険者になるつもりかい?」

「もちろんですわ。わたくし、この世界を自分の目で見て、自分の足で歩いてみたいんですの」


 にこっと微笑んで見せると、父は困ったように眉を下げた。父も冒険者だったのだから、わたしの気持ちをわかってくれるハズ。そう期待して父をじっと見ると、降参とばかりに両手をあげた。話してくれるみたい。


「本当、私の子だなぁ、ラヴィ。私が親に言ったことと同じことを言っているよ」

「えっ、おとうさまと同じことを?」


 ってことは、父もそう言って冒険に出たのかな? どんな冒険をしてきたのかも気になる。すごく気になる。後で聞かせてくれないかなぁと目を輝かせていると、父は「その話はまた今度ね」と空になった食器を持っていく。


「ええっ? 今でも大丈夫です!」

「だーめ。ラヴィはもう少し休んでいなさい」

「もう大丈夫なのに?」

「そう。ランベルト、ラヴィを頼むよ」

「わかりました。行こう? ラヴィ」


 兄は立ち上がってわたしに手を差し出した。わたしはその手を取って、椅子からおりる。そして兄に手を引かれるまま寝ていた部屋に戻された。そこにはアメーリエが居て、兄はアメーリエにわたしのことを頼むと一言口にして廊下へ戻る。ぱたん、と扉が閉まった。


「それじゃあ、お嬢様。着替えて横になりましょうね」

「休まないとダメ? せっかくだからみんなとお話ししたいのに」

「ダメです。今日は大人しくしていてくださいませ!」


 アメーリエが「めっ」と人差し指を立てて顔を近付ける。怒っている、というよりは心配してくれているみたいね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ