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第三百八十二話 新たなパーティー

 

「やっぱり俺たちだとお前らの足を引っ張るだけだからさ」


 先に目を覚ましていたユーリが話しているのはアキとケント。


「本当にいいのか?」

「もちろんよ」

「……すまん」

「謝るなって。俺たちも諦めたわけじゃなくて、俺たちのペースでやってくからさ」

「そうか」


 観戦していた末の結論。


「あんたいい加減にしなさいよ!」

「モニカさんに言われたくないけどね!」


 遠くから聞こえてくる声。


「サナも起きたようだな。呼んでくるよ」

「ああ」


 ぎゃあぎゃあと騒いでいる姿、元気いっぱいに声を出しているサナの姿に気付いたユーリが歩いて来る。


「あっ、ユーリ……――」


 向けられる笑顔が複雑な感情を招いた。


「――……ごめんね」

「いや、仕方ないよ。サナが謝ることじゃない。俺も何もできなかった」


 尚も笑顔のままのユーリ。どうにも達観しているように見える。


「それで、これからのことだが……」

「……うん」


 これから何を言おうとしているのかわかる。離れたところにいるアキとケントの姿を見れば。


「さて、と」


 立ち上がり、パッパッと裾の埃を払いサナはヨハンに笑顔を向けた。


「じゃあちょっと行ってくるね」

「わかった」

「またあとで」


 笑顔なのだが、憂いを帯びた表情。

 寂しそうに手を振りながら、これまで共に活動していたパーティーとの最後の話し合いをしに行く。


「なんだか悲しくなるわね」

「ええ。シェバンニ先生も言っていたように、出会いと別れは繰り返すものですわ」


 死ぬまで共に添い遂げるなど、それこそあり得ない。恋愛感情に発展した一部の者のみ。


「ナナシーとサイバルは?」

「あちらで話を」


 サナとユーリが向かった先とは別にシェバンニと話をしている姿があった。

 丁度話を終えたところで、ペコリと頭を下げたナナシーはヨハン達に向けて手を振っている。


「お疲れさまナナシー」

「ちょっとやり過ぎちゃった? 思っていたよりも強かったから」

「ナナシー、前より強くなった?」

「ええ。長から出されている条件だしね」


 人間の世界で生活する代わりとして提示されている条件。生き抜くだけの強さ。

 長寿のエルフは一定の年齢に達すると成長曲線は緩やかになるのだが、ナナシーはまだ成長過程にある。


「ヨハン達ともできたりするの? できれば本気で」

「さぁ、どうなんだろう?」


 どこまでを差しての本気ということなのかわからないが、否定しきれないのは時折模擬戦形式の授業はあった。


「できなくもないですわ」

「そうなの?」

「ええ。例年通りであれば二学年の試験は団体戦になることが多いですもの」


 エレナによると、毎年各学年の試験は試験が近付くまで公開されていないのだと。冒険者らしく即時対応を見るような内容が多いのだがそれでもいくらか傾向はある。


「そうなんだ」

「今年をどうするのかはさすがにわたくしも存じ上げませんが」

「俺はごめんだぜ」


 溜息を吐きながら口にするレイン。


「なになにぃ? レインは嫌なの? そういえば前に私に負けたものね」

「いや、俺だってあれから強くなってるっつの!」

「へぇ。じゃあどうして?」

「べ、別に……特に理由があるわけじゃねぇけどさ」


 微妙に口籠る様子にナナシーは首を傾げた。


「どうしたの?」

「な、なんでもねぇよ」

「何を話してるの?」

「あっ、もういいのサナ?」

「……うん」


 ほんの一瞬視線を彷徨わせて表情を落としかけたのだがすぐに微笑む。


「やっぱりアキもケントも考えは変わらなかったわ。いえ」

「むしろ俺達を応援してくれている」


 話し合いの際に掛けられた言葉。

 あれだけの実力を持ち合わせているエルフの二人が近くに居る方がユーリとサナはもっと成長が見込めるのではないかと。足を引っ張るのも嫌だし、自分達は自分達のペースで活動を続けて行くのだと。


「そっか」

「じゃあこれからはその四人でパーティーを組むってことね」


 確認する様に問い掛けるモニカの言葉にサナとユーリは顔を見合わせて小さく頷き合う。


「よろしく頼む」

「ああ」


 ユーリとサイバルが握手を交わす中、手を差し出そうか僅かに躊躇するサナ。


「あっ」


 そのサナの手をナナシーがしっかりと掴んだ。困惑した瞳をナナシーに向ける。


「さっきはごめんなさいね」

「い、いえ、こちらこそ生意気を言ったみたいで」

「あなたが最後に言った言葉、もし私に手伝えることがあればなんでもするからね」


 まるで先程の模擬戦を意に介さない様子が困惑に拍車を掛けた。


(私なんか眼中にないってこと?)


 悔しさが甦って来る。


(だったら……――)


 それならばこちら(サナ)にも考えがあった。


(――……私もあなたを利用して強くなってみせるわ)


 ニコッと笑みを向ける。グッと力強く握手を交わした。


「そういえばリーダーは誰がするんだ?」


 不意にレインが浮かぶ疑問。ユーリ達は互いに顔を見合わす。


「そうか、リーダーを決めないとな。前のパーティーでは俺がリーダーだったのだが、サイバルかナナシーのどちらかに頼めないか?」

「いや、オレはリーダーって柄じゃない」

「わ、私だってそうよ!」

「それにオレ達は人間の世界の情報に疎い。だからリーダーはお前がそのまま続けてくれればいい」

「……いいのか?」

「よろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げるナナシー。

 苦笑いしながらユーリはサナを見た。


「サナはいいのか?」

「うん。私もユーリで良いと思うわ」


 サナは笑顔をユーリに向ける。


「……わかった。じゃあこれからよろしく」


 そうして一つのパーティーの解散が決まり、新たなパーティーが誕生した。



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