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第三百四十六話 閑話 カレンの初任務(前編)

 

 帝都出発の数日前。


「ねぇ。ギルドカードってどうやって作ったらいいの?」

「あっ、そうですね。作っておかないといけないですね」


 孤児院を訪れていたカレンに問い掛けられる。


「じゃあ今日はギルドカードを作りに行きましょうか。手続きは簡単ですので」


 そうしてギルドカードを作りに冒険者ギルドに向かった。



 ◇ ◆ ◇



 ギルドに入るなり周囲の視線を浴びるヨハン。二種類の視線。


「おい、見ろよあのガキ。えらい美人と可愛い子連れているじゃねぇか」


 一つ目は一緒にいる女性達、容姿端麗なカレンと見た目可憐な少女のニーナのこと。


「やるか?」


 ニヤッと下卑た笑みを浮かべて立ち上がろうとする男の肩を隣の男がガシッと掴む。


「やめとけって。お前なんて一瞬でやられちまうぞ」

「あん?」

「知らねぇのか? あのガキ、この前の武闘大会で優勝した奴だ」

「……あんなガキがか?」


 まるで信じられない。懐疑的な目で見た。


「それに噂じゃ色々とかなりヤバいらしい」

「ヤバいって?」

「優勝するだけの実力はもちろんだが、なんでもバックにすげぇのが付いてるとか」

「ってことはカタギじゃねぇのか? かぁっ。見た目じゃわかんねぇもんだな」


 ひそひそと話されているのは、栄誉騎士爵の授与に始まり、ラウルを始めとした帝国の主要権力者に目を掛けてもらっていることが噂に尾ひれを付けている。


「ねぇ。あることないこと色々と言われてるみたいですけど?」

「ほっておけばいいのじゃない?」


 カレンのギルドカードを作成するまでああでもないこうでもないと言われ続けた。


「けっ! 面白くねぇ」

「お、おいゼン!」


 ガタンと立ち上がり、ギルドの出口に向かうのは冒険者ゼン。その後ろを仲間達が追いかける。


「あんなガキが優勝できるわけねぇだろ。どうせ何か裏があるに決まってやがる」

「いやでもめちゃぐちゃ強かったって話だぜ? ゼンもほらっ……――」


 仲間の男が以前大食い大会でヨハンに倒されたことを口にしようとしたところでゼンがギロリと睨んだ。


「くだらねぇことは忘れろ。おら、いくぞ。しょうもねぇゴブリン退治だ。さっさと終わらせてやる」


 ドカドカと歩き、ゼン達五人はギルドを出ていく。



「……へぇ。これがギルドカードねぇ」


 顔の上にかざしながら嬉しそうにしているカレン。どこか無邪気さを孕んでいる姿はまるで子供の様。


「ねぇ、せっかくだから何か依頼受けましょうよ!」


 初めてギルドカードを手にしたことで気持ちが昂り我慢できなくなった。


「そうですね。せっかくだから何か受けましょうか」


 カレンの気持ちもわからなくもない。冒険者たるものギルドカードを手にすれば依頼を受けたくなるもの。


「といってもまだカレンさんはEランクだからあまり大きな依頼は受けられないですけどね」

「それはまぁ仕方ないわね。けどすぐに昇格してみせるわ!」


 そうして依頼が貼り出されている掲示板を眺めていると横から声を掛けられる。


「おや? そこにいるのはカレン殿とヨハンにニーナではないか」

「アリエルさん」

「そうか。そういえばギルドカードを作りに来たのだったな」

「はい。それで依頼を受けることにしたんですけど、どれにしようかと……」


 カレンなら低ランクの依頼などすぐに達成できるレベル。となると効率良く昇格したい。


「ふむ。ならばコレはどうだ?」

「これって?」

「いやなに、ちょっと問題が起きてな」


 アリエルが差し出す一枚の紙。

 どうでも良さそうとばかりに欠伸をしているニーナ。


「「問題?」」


 ヨハンとカレンは紙に目を通すとすぐさま顔を見合わせた。

 アリエルが持っていたのはギルドからの依頼書であり、そこには『ゴブリンの大量発生を討伐して欲しい』と書かれていたのだった。


「――……そういや知ってるか?」

「なんだ?」


 ヨハン達がギルドを出た後、冒険者達は思い出したように話し出す。


「最近、久々に帝都からS級に昇格した奴が出たって話だよ」

「ああ、そのことか。聞いたぜ。すぐに帝都を出るらしいが、一体どんな奴なんだ?」

「さぁ。どうにも異常なぐらいのスピード昇格したらしいぜ」

「そんな奴いたか?」

「もしかしたら女かもな。風迅と爆撃の時は気付くのが遅れたからな」

「あん時はマジでビビったぜ」

「あの二人が引退して結構長いしそろそろそういう奴が出て来ても良い頃だろうしな」

「もしかしてさっきのガキだったりしてな」

「いやいや、それはいくらなんでも言い過ぎだろ」

「がはは。冗談に決まってるだろ! いくらなんでもあんなガキがS級になったら俺らの立場がねぇだろ!」

「ちげぇねぇ!」


 盛大に笑い声を上げる冒険者の横を通りながらアリエルは内心思う。


(既にお前らの立場などないがな)


 フッと笑みをこぼしてギルド長室に向かって行った。



 ◇ ◆ ◇



 ゴブリン討伐。これはどのランクからでも受けることができる。

 ほぼ最下位ほどの低ランクに位置する魔物であるゴブリンは駆け出し冒険者の経験やスキルアップにも用いられていた。

 それがわざわざギルドからの依頼。アリエルによるとそれが今回は異常発生しているのだと。依頼内容は殲滅及び可能であれば原因究明。

 通常いくら多く発生したとしても、これまでであれば一度では数匹から数十匹程度だったのだが、それが数百にも昇ると。



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