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第九話 野外実習②

 

 叫び声のもとに辿り着くと、血塗れの学生達四人が視界に入ってきた。


「あれはなに!?」

「まさか!!」


 モニカとエレナが同時に声をあげる。

 血塗れの学生達の目の前には体長4メートルはあろうか、四つん這いの獣がいたのだ。


「早く助けないと!」


 ヨハンが助けに入ろうとしたところをレインが止めに入った。


「ヨハン、ダメだ!あいつは俺たちじゃとても適わない。逃げよう!」

「どうしてっ!?僕たちが逃げたらあの子たちが死んでしまうよ!」

「ちっ、あいつの気配、あれかなりやばいわね」


 今助けないと確実にあの子達が殺されるのはわかる。


「……あれは、ビーストタイガーですわ。私も本でしか見たことのない魔獣です。討伐ランクは確かAランクのはずですわ」


 エレナがビーストタイガーと呼んだ魔物はウルフでは比較できないほどの強さに分類される『魔獣』であった。

 魔獣は大きなくくりでは魔物に入るが、獣の外見をしていて一定以上の知能を有していること。さらに特徴的なのは、魔力の使用ができて討伐ランクがB以上のものを『魔獣』と総称している。



「で?どうするのよ?」


 モニカが確認する様に声を掛けた。


「助けに行こう!やっぱり見ない振りなんてできないよ」


「確かにそうだけど……」

「ですが、わたくし達が入ったところで助けられるかどうか」


 ヨハンはビーストタイガーをしっかりと見る。そしてモニカ達を見た。


「…………大丈夫。僕たちならやれるよ。それに、襲われている子の内二人はもう意識もないみたいだ。早く治療しないといつ死んでしまってもおかしくない状態かもしれない。時間がない」


 ヨハンが真剣な眼差しをモニカ達に向ける。レインは怖気を口にしようとするのだが、ぐっと喉の奥に飲み込んだ。


「――ああっ!くっそ!わかったよ!で!?実際問題、これどうするんだ!?」


「僕があいつの注意を引きつけるからモニカとエレナはあの子たちの救助と治癒魔法をお願い。レインは他の魔物が出てきたときに対処出来るように周囲の警戒を頼む」


「…………ほんとにそれで大丈夫なんだな?」

「うん、大丈夫、任せて!だからみんなも気を付けて!」


 モニカ達は顔を見合わせる。果たしてそれで大丈夫なのかどうか。

 だが助けに入ると決めた以上、迷っている時間はない。モニカとエレナはお互い顔を見合わせて頷いた。


「私たちも彼らを安全なところに移動させたらすぐに向かうから!」

「では早速いきますわよ!」


 ――即座に走り出す。


 ヨハンは走りながら火の魔法をビーストタイガーに向けて放つと、ビーストタイガーは魔法の気配を察知するなり後ろに跳び避ける。

 グルルと獰猛な殺気を放ちながら火が飛んできた方向、ヨハンを見つけると睨みつけた。


 ビーストタイガーがグッと地面に沈んだかのように見えた次の瞬間――――。


 ヨハンの眼前にはビーストタイガーの前腕の爪が鋭く振り抜かれ迫っていた。そしてヨハンの身体を引き裂こうとする。


「はやっ――」


 咄嗟に剣を抜き爪に当てて受け止めようとするが、身体ごともっていかれそうなところで反動を利用して後方に飛び退ける。


「あっちゃー、想定が甘かったかな…………。これは、思っていた以上にちょっと大変かもしれないかな?」


 思わず頬を冷や汗が垂れた。


「でもあの時のお父さんの速さに比べたらそれ以上に速いなんてことはないかな。とにかく時間を稼がないと――――」


 明らかにヨハンを敵と認識したビーストタイガーのさらに奥を見る。そこには迂回して襲われていた学生達の下にモニカ達が駆け付けた姿が見えた。


「あっちを気付かれるわけにはいかないな……」


 とにかくビーストタイガーの気を逸らし続けないといけない。


 手の平に魔力を集中させ、勢いよくビーストタイガーに向かって火魔法を放つのだが、すぐに躱される。


「くぅー、不意打ちでも避けられたんだから正面からだとそりゃ当たらないよね。それにさすが獣型だけあって本能的に避けるみたいだし。こんなことならもっと速く魔法を撃つ練習をしておけばよかった。…………それに、なんだか怒らせたみたいだしね」


 どう見てもビーストタイガーは怒っているようにしか見えない。先程よりも唸り声が低くなっている。



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