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私のあとには残るのかな。
君がここに現れなくなってからも、
私のあとには残るのかな。
君はひとつ年上だから、
私が過ごす時間の少し手前を行く。
君はもうすぐ卒業する。
君の残像が欲しかった。
だからこの駅で君を見かける度に、
私がどれだけ君を見つめたことか。
いつも前を向いていた君は知らないはず。
君と話すあの時間が、私の足と心をとめる。
迎えの車が電車到着時刻より遅いのは
君との時間をつくるため。
君と眺めた木々。
雨上がり、空からのあまりの光に
黄に染まった葉たちが金色に輝く。
どうか、その形と色と明るさが
君と共に私の心に残りますように。
今日も見かける君の姿。
私の目に映るのは
冷えた空気に招かれた雪に覆われる世界。
君と過ごす最後の季節。
白い息と儚く呟かれた言葉が
私の瞳に沁みる。
“もう、あんまり会えないな”
この声は
響きは
残すことができないのかな。
低く何かを含んだような声は。
その時初めて、私の残像が
君の中にも残ろうとしていることが分かったんだよ。
それでも言えなかった。
言うべきではないから。
私は君に真っ直ぐに歩いて欲しい。
私を見ないでただ、前を向いて。
頑張ってね、最後まで。
これから歩いてゆく道を決められる時期。
ただ、あの限られた時間だけで。
私は。
幸せだった。
残像は見えているはずなのに
それは薄く薄く日々ベールを重ねてゆく。