~部活作りの少女~_Will you join our club?_
「は?」
あの少年のはじめの反応はそれだった。どうやら意味を理解できて無いらしい。なので私はもう一回言った。
「あなた、私の作る部活に入らない?」
「はぁ。」
あの少年の次の反応はそれだった。小さい「あ」がはいってクエスチョンマークが消えた。このまま三回目を言ったら反応がまた変わると思った。だから言った。
「あなた、私の作る」
「あのぉ、何回言えば気が済むんです……?」
途中で遮られた、でも反応が変わった。ならば良しとしましょうか。
「そりゃぁ、あなたから『はい』っていう一言が得られるまでよ。ちなみに『YES』とかでもいいわよ。」
当たり前でしょう?
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…凄い子がいた。いや、痛い子がいた。僕のセンサーは確実にこの子が危険だとこう警報を鳴らしていた。『この子の言う部活に入ると碌なことにならない』とだから自分が言う言葉は決まって
いた。
「嫌で…」
「あなた、私の作る部活に入らない?」
最後まで言わせてもらえなかった。どうやら僕の警報はとてもよく作動しているらしい。さて、どうすればこの修羅場を切り抜けられるだろうか(配点:これからの高校生活)
A.無言で去っていく。
B.この場凌ぎで『はい』と言う
C.無視
Bは選んでは駄目な気がする。多分、いや、確実にこの子は録音機材をもっている。僕のセンサーがそう告げている。AかCか……
Cを選んだ。
「………。」
さて、これで諦めてくれるだろう。
「沈黙は肯定、つまり『はい』ととれるわね。時間がないわ、ついてきなさい。」
駄目だった。…これはもう面倒事の予感しかしない。最後の抵抗とばかりにその言葉を無視した。
「私がここで『きゃー痴漢ーーー!!!』って叫べばどうなるかわかっているわよね?」
恫喝された。しかたない。あまり気乗りがしないけどあいつに助けを求めようか。
そう思って僕は後ろを振り返り
「たのむ、こいつをどうにかしてくれ。」
と言おうとした。のだが、実際僕の口から出たのは
「え…?」
だった。
あいつがいなかったのだ。
「あぁ、あなたの後ろにいたいかにも体育系ですって奴ならさっきどっかいったわよ。」
少女の発言を聞いて思ったことが二つある。
『あいつ逃げやがったな。』
と
『この子はやばい子だ。』
である。あいつが逃げ出す。そんな時はきまってとても面倒臭い事に巻き込まれる。(ちなみに逃げたあいつも決まって毎回面倒事に巻き込まれている。)せめてもの救いはあいつが自分に
何も告げずに逃げたと言う事は警察沙汰みたいな事にはならないと言う事だろうか。
『いや、多分そんな事は救いにもならないんだろうな。』
さてこれからどうしようかと思っている所を少女の一言で現実に引き戻された。
「なに呆けてるのよ。あ、そうそう自己紹介がまだだったわね。私の名前は天上ヶ岳 末々《てんじょうがたけ すえずえ》あなたと同じ2年生よ。」
こうして僕はこれからの人生をこの子に振り回されるという、望んでいた人生とはまったく違う人生を歩むことになるのだった。
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…あいつ大丈夫かな。
それが錦川の唯一の友である、阿武川 義興があの少女から逃げた後の心配だった。あの子からの分岐は逃げれば面倒事に巻き込まれないというような物ではなさそ
うだったが、それでも逃げておきたかった。それがたとえ刹那の現実逃避だったとしても。幸い(錦川にとってはただの不幸だろうが)今日は2年生はもう帰っても良いことになっている。
(ちなみに3年は入学式の準備があるため帰ることが出来ない。これもまた幸いだった。)
だが、彼は彼で自分の友を心配する暇もなかった。なので
『まぁ、あいつならどうにかなるだろ。』
最終的にそういう事にした。
『さて、それはさておき、まずはこれをどうにかしないとな…』
そこにあったのは倒れ、意識を無くしている10人の黒いスーツに身を包んだ柄の悪い男たちと15歳にも満たないであろう女の子だった。
『はぁ、面倒な事になってきたな。』
彼もまた面倒な事に、巻き込まれているのであった。
軟弱者だぁ!!!
どーもぜりぃです。今回はメロン味です。
因みに↑の答え(つまり前回のクイズの答え)は小田和正さんのアルバム名です。
それでわ。