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22.イライラ後のお散歩デート

ソロソロ閑話を入れたい

ライゼルとの面会を終えた俺たちは、一旦俺の部屋に引き上げることにした。


そこで、ダニエルからの報告を聞き、先程聞いた話と擦り合わせを行いながら、今回の面談の場を求めた真の目的が何なのかや、今後の対応を考える事にしたのだ。


部屋に入って直ぐ、俺は大きなため息をつきながら椅子に腰掛け、出されたお茶を飲む。

今日のお茶は、最近俺が気に入っているダニエルお手製のハーブティーだ。最近は、色々と心乱される事が多いので、精神安定効果のあるこのお茶が欠かせなくなってきている様な気がする。


「ルイス、お前はウルハラについてどの程度の情報を持ってるんだ?」

「僕も君と同程度のものしか持っていないよ」


俺の知らないヘンリーの処罰内容を知っていたから、何かしら情報を持っているのかと思ったが、そんな事はないらしい。

それじゃあ、共にダニエルから情報を貰って考えをまとめていきましょうかね。

ダニエルにチラリと視線をやれば、心得ているとでもいう様にニコリと微笑まれた。


「先程ティールームでお聞きした情報に、嘘はない様です。あと、色々と付け加えるとするならば……」


そう言って教えてくれたウルハラの内情の恐ろしい事と言ったら……。


王太子であるヘンリーの兄は、このまま自分の母である正妃の失脚を画策している様で、色々と正妃の派閥に罠をばら撒いているらしい。

その内の一つがジュードなのだとか。


王太子は出来た人物らしく、母の常軌を逸したような父の側室たちへの仕打ちを防いだり、異母兄弟たちを守ってくれたりと精力的に動いてくれるらしい。そのお陰もあって、異母兄弟たちは命の危機を何度も救われ、マトモな教育を受けさせてもらえた事で、ライゼルの様な感性の持ち主が育ったらしい。

なので、兄弟は一丸となって兄の治世を支えようと協力している様なのだ。

正妃は自分の思い通りにならず、あまつさえ自分に対して非難、注意までしてくる息子をかなり疎んで、ヘンリーを王太子にしてしまおうと画策していたとか。

さらに彼女はまだその野望を諦めきれていない様で、“ヘンリーの処罰にショックを受けて、社交界を退いている”と見せかけて、その裏で何やら色々と動いているらしいのだ。

どうやら、ジュードは正妃から重大な密命を受けているらしく、その情報を掴んでいた王太子が罠をはる事にしたんだと。

表向きは、ヘンリーの失脚によって被害を被る事になったジュードの救済という事で、ライゼルの側近候補という立場を与え、その行動を見張っているらしい。


何やら正妃は皇国の貴族とつながりがある様で、今回の密命もその貴族からの情報らしいのだが、内容がハッキリしないので此方に協力を頼む事もできない。

ただ、どうやら正妃は俺に恨みを持っているらしいので、今回の企みも俺に関する事という予測が立っているという話だ。

ウルハラとしてはこれ以上俺に迷惑をかけ、被害を与えるのは良くないと考えて必死に水際で食い止めようとしている最中らしい。


ロナルドは、ライゼルの乳兄弟であり、幼い頃からライゼルの側近となる事が決まっていたので、他分野に渡って厳しく教育を施されており、今回の計画ではライゼルの護衛とジュードの監視も引き受けているらしい。

ジュードの性格を考えれば、俺に対してどの様な態度を見せるのか解らないので、かなりの賭けだったらしいが、伝え聞く俺の性格を考えて、今回の計画に踏み切った様だと言われた。


うん、ちっとも嬉しくない。

皇国内の事情だけでも大概ややこしい事になっているというのに、この上ウルハラの内情まで絡んでくるとか、何処のクソゲーだよ。

ホント、シナリオ作家呼んで来いって話だ。

絶対に俺が貧乏くじを引く役目になるに決まってるんだから、もっと単純な話でイージーモードにしておけよな!


ウルハラの内情にまでは構っていられないので、当面は何も気づいていないフリで情報収集をする事にして、今回は解散する事になった。



ややこしさが増していく話を聞いた事で、ハーブティーの効果なんて全く期待できないほどにイライラしてしまった俺は、一番の精神安定剤である“最終兵器”な小悪魔を迎えにいく事にした。

この館の中庭は、魔術具のお陰で常に雪掻きがされている様な状態に保たれているらしいので、そこへ誘ってみようと思っているのだ。いくら雪を整えていると言っても、かなり寒いだろうことは予測できるので厚着をしておく。

ルイスもジェシカと一緒に来るそうなので、一旦自室へ着替えに戻って行った。


クラックの元に医師が到着するのは昼前になると言っていたし、それまでの間楽しんでいても構わないだろう。館内を散策するにもちょうど良い機会になるだろうし、良いデートスポットが見つかるかもしれない。

そして見つけたスポットで、昼食の後はアンジェリカと2人でデートを楽しむのだ。


「アンジェリカ、ただいま」

「おかえりなさいませ、カイル様」


「ただいま」と声をかけながらクラックの部屋を訪ねた俺を、アンジェリカが笑顔で出迎えてくれる。


なんかこれって、新婚さんみたいで萌える。


そんな事を考えながらクラックの様子を訪ねてみると、アンジェリカは表情を曇らせて首を振った。

どうやらまだ、意識は戻っていないらしい。


「そっか……。ねぇ、アンジェリカ。気分転換も兼ねて館内の散策をしながら、中庭に行ってみないか? リリスも一緒に行くかい?」


ルイスが俺の隣でジェシカを誘っているので、リリスへは俺が声をかける事にする。

アンジェリカの返事は勿論「はい、ご一緒します!」だったけど、リリスは真剣な表情でクラックを見つめたまま首を横に振るだけだった。


「解った……。あまり根を詰めない様にするんだよ? あと……、どんな内容でも兄様が相談に乗ってあげるから、1人で悩まない様に、ね?」


優しくそう声をかけて、アンジェリカを促しながら部屋を後にした。



俺たち4人は子爵の許可を貰って館内を散策して周り、プレイルームや図書室など暇を潰せそうな場所を探し、尖塔に登って上から領内の景色を見渡したりと、次々にデートスポットを探し出した。

中庭に出る頃には軽く汗をかいていたので、外の寒さが心地よく感じたほどだ。


中庭は、4つの東屋とそこに通じる道、バラの植え込み周囲だけが雪が退けられていて、それ以外の場所は50cm程雪が積もっていた。ちょっとした立体迷路の様になっていて、東屋で椅子に座ってしまえばかなり2人きりの気分が味わえそうだ。

俺とルイスはそれぞれ1人ずつ護衛を連れて、別の東屋へと向かった。

積もる雪を円形に削り取った様に配置される東屋と、そこに至る一本の通路というのは、ちょっとした秘密基地の様でそれだけでも胸を擽られるものがある。

東屋に到着した俺はアンジェリカと横並びで椅子に腰掛け、アレク・Jには東屋と通路の境目あたりで俺たちに背を向ける様に立ってもらう。

それだけで、2人きりという気分は強くなり俺は彼女の背後から腕を回して、そっと髪を撫でてみた。

アンジェリカは俺のそんな行動に酷くてれている様子で、顔を俯けてしまいながらもそっと俺の肩に擦り寄せてくる。


何これ、なにこれ、ナニコレ!

すげー可愛いんですけどー!!


あまりの可愛い仕草に内心で悶絶しながら、それを隠す様に視線を周囲の雪へと向け、気持ちを落ち着かせる様に全く違う事に意識を持っていく事にした。

だってさ、そうでもしないとこの場で抱きしめて、色々したくなっちゃうじゃん。

ほら、俺ってばそういう年頃だし。こればっかりは仕方がない衝動だろ?

本来なら円周率でも暗唱したいところだけど、ここは状況に合わせてこの雪のことについてでも考えてみよう、うん。


昨夜館に到着した際は、館の周囲には10cm程しか積もっていなかったはずだ。吹雪は今朝にはおさまっていたので、一晩で40cmも積もったという事だろう。

先程尖塔から見た領内の様子を考えても、何かしら問題が起こってもこの領地から出る事は難しいかもしれない。


「はクチュンっ!」


考え事をしていた俺の耳に、とっても可愛らしいくしゃみの音が飛び込んできた。

どうやら汗が引いてきた事で、アンジェリカの身体が冷えてきたらしい。


これはいかん。

ここが雪山なら、裸で暖め合わなければならなくなる様な案件だ。

だが、生憎とここは子爵の館の中庭だ。館内に入れば直ぐにでも暖が取れてしまう。

しかし、それでは俺が楽しくない。


「アンジェリカ、俺に暖められてみる?」

「は、はい。お願いします」


なので俺は、コートを広げてアンジェリカを誘い込む事にする。

コートを開いてもちゃんと服を着ている俺は、アンジェリカに逃げられる事もなく、難無く彼女の捕獲に成功したのであった。

ちょっとしたクローズドサークル状態な、キャンデロロの領地。


明日は、又してもミステリー要素が……。

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