11.身内の前でイチャイチャするには、ラインの見極めが重要
昨日が書籍発売日でした♪(´ε` )
しかし、私のよく利用する本屋さんには置いていなかったので、皆様も目にする機会が無いんじゃないかと地味に凹んでますorz
運良く、入荷してくださっている本屋さんにたどり着いた際には、是非イラストを確認してくださいマセ。
とっても素敵ですよ!
「カイル様……。私、旅行はとても楽しみなのです。ですが、冬季休暇に入ってすぐに出発だなんて、カイル様のお身体は大丈夫なのでしょうか?」
アンジェリカが笑顔から一転、心配げに眉を寄せて俺の怪我の具合を聞いてくる。
アンジェリカの心配は、もっともな事だ。
実際、俺の怪我は“命に別状がない”というだけで、結構酷いものだったんだよ。
まず、肋骨が3本折れて2本ヒビが入っていた。幸い折れた肋骨が内臓に刺さったりはしなかったから、内臓へのダメージも致命的なものはなかったのだけれども、それなりのダメージはあった。そして何よりも、打ち身からくる内出血がかなり酷かったんだよ。
実際の怪我の内容を知らなかったとしても、パジャマの胸元からチラチラ見えるそのアザをこの部屋でいちゃついている時に何度も見ているであろうアンジェリカにとっては、心配するのに十分な存在だもんね。
その上、俺は未だにベッドから出る許可が下りていないんだしな。
暴行を加えられた後すぐに、ダニエルが自己回復の魔術をかけてくれたし、医者にも診てもらっているから今は大きな痛みも無く過ごせているんだけど、まだ安静が必要だって言われている。
治癒促進の魔術具も常時発動させてベッドの上で使っているから、内臓へのダメージはもう殆ど回復したようだし、肋骨もくっつというところまではいかないまでも、動く事への支障はそろそろ無くなるんじゃないかと思う。
治癒促進の魔術具は、生命維持に重要な所から早く治るように促す魔術具だから、未だに内出血は当初のままで残っていて、見た目的には良くなっている感じがしないのが難点なんだよな。
これを見て、順調に回復しているなんて思う奴は早々いないだろうから。
「問題ありませんよ、アンジェリカ様。明日辺りから徐々に活動制限を解除して行く予定になっておりますので。冬季休暇が始まる頃には、運動までは無理でしょうが日常生活程度でしたら、全く問題なく送れるようになっていると思われます」
アンジェリカの心配はもっともな事だから、その辺りについて詳しく説明をしてやって欲しいと、チラリとダニエルに視線をやって心の中で命じれば、彼は心得たように俺の状態を説明してくれた。
「そうなのですか……。それを聞いて安心しました」
アンジェリカはダニエルの説明を聞いて「ほっ」と安堵の溜息を吐き、次に俺の顔を見て「でも、無理はなさらないようにしてくださいね、カイル様?」と、小首を傾げて訴えてきた。
グハッ!
何それ、アンジェリカ!
超、萌えるんですけど!!
もう、さ。
俺だけのナースエンジェルになって、付きっきりで看護してくれないかな!?
内心はベッドの上でゴロゴロ転がりたいくらい悶えている俺だけど、そんな事はおくびにも見せない。
ここはカッコ良く、キラキラしいイケメン王子として振舞わねば!
「解ったよ、アンジェリカ。約束だ」
優しく微笑んでそっと手を伸ばせば、アンジェリカも嬉しそうに俺に向けて腕を伸ばしてくる。
視界の隅に、苦笑いのルイスと気まずげなジェシカの顔が見えるけど、ここは敢えて無視しよう。
伸ばされた腕を掴んで引き寄せれば、彼女は簡単に椅子から俺の腕の中へと囚われてくれた。俺の腕の中に収まった彼女に、額をくっつける様に合わせ「ちゃんと約束は守るから、何かご褒美を考えて欲しいな」と、甘えてみる。
「ご、ご褒美、ですか……?」
「そう。俺が喜ぶ様な……、アンジェリカにしか用意できないご褒美が欲しいんだ」
「私にしか、出来ない………」
俺のオネダリに、アンジェリカは瞳を甘くとろけさせて、そっと目を伏せて唇を……。
「はい、アンジェリカ。そこまでだよ。僕の目の前で、それ以上の事は許可できません」
「……え? お兄……さ、ま? え、あ! す、スミマセン! カイル様!!」
今どこにいるのかとか、他にもこの部屋には人がいるんだって事を思い出してしまったアンジェリカが、慌てて俺の腕の中から抜け出して行く。
真っ赤になってアワアワしている様子は、すっごく可愛いんだけど、俺は残念でならないよ!
ちっ! あとチョットだったっていうのに!!
アンジェリカからの“初めてのちゅー”だったっていうのにさ!
ルイスめ! これくらい見逃してくれたって良いじゃねぇか!!
俺が表情はにこやかに心の中で悪態をついていたら、ルイスがにっこり笑って「浮かれているのも解るけど、あんまり度がすぎる様だと……、解るよね?」なんて、脅しをかけてきた。
うっ……。
解りましたよ! TPOを弁えろって事だろ。
確かに、ちょっと調子に乗ってたからね。お兄様の前では、以後気をつけます!
だから、その笑顔はやめて下さい……。
旅行の手配は順調に進んでいる。
魔術馬車も無事に借りることができた。皇族所有の魔術馬車の中でも、外国のキャンプカー並の大きさと快適さを持つ物を一台、軍の人員輸送に使う様な物を一台、の二台を借りる予定となっている。
まさか、あの馬車を貸し出してくれるとは思っていなかったので、話を聞いた時にはちょっと驚いた。
今回借りた俺たちが乗る予定の魔術馬車は、本来は皇族専用の物だ。皇族暗殺の罠や魔術具を仕掛けられることがない様に、皇族とその執事しか乗ることが出来ない馬車なんだよ。
本来の使用方法を考えれば、ルイス達を乗せることは出来ない筈だった。ただ、今回はタイミングが良かった。
この馬車が古くなってきたので、丁度新しい物を作らせているところらしいんだよ。
なので俺たちが使った後、その馬車は廃棄される予定になっている。と、いうことは、最悪何か事故か事件で壊れても構わないって事でもある。
…………ホント、何のフラグなんだよって思うけどな。
それに、魔石の手配も素晴らしくスムーズに済んだ。父がかなりの量を融通してくれた上にフォンティーヌ公爵が「我が家の子供達の為ですから」と言って、これまた沢山準備してくれたからだ。
そのおかげで、当初は俺とルイスの個人資産を注ぎ込む計画だったのに、全く出す必要が無くなったのだ。
ただ、父がどうやってそれだけの量の魔石を手配したのか、それがちょっと気になるところではあるんだ。
普段の父の言動を考えれば、あんな量の魔石を用意してくれる様な人じゃないからね。
ただ、これで当初予定していたよりも、人員を増やすことが出来る様になった。
まあ、俺にそのつもりは全く無いので意味は無いが。
護衛も最小人数(騎士団から2人、忍部隊から2人)という俺の意見を、半ば無理やり通して貰った。
護衛については「学園の様にセキュリティーが万全な場所に行くわけではないのだから、もう一台馬車を出して、護衛の人数を増やす様に」と、何度も父や フォンティーヌ公爵から言われた。
でも、不穏分子がはっきりしていない現状で、俺が行動を把握出来ないほどの人数を引き連れて旅行(と言う名の外交)に行くなんて、俺は絶対に嫌だ。
カゲ君2人は俺の昔からの顔馴染みを選んだから信用できるけど、騎士2人は父の推薦で決まった様な人物だからイマイチ知らない相手で、それだけでもかなり苦痛だ。
それが何人も増えるなんて、考えただけでもウンザリする。今回は俺一人で出かけるわけじゃ無いんだから、よく知らない、しかも信用していいかどうかも判断できない様な奴はあんまり連れて行きたく無いんだよ。
それに、ウルハラの王子も“お忍び”という名目でキャンデロロ子爵領にやって来るんだから、護衛なんてつけていたとしても1人か2人の筈だ。
それを考えれば、俺が護衛をゾロゾロ連れて行くなんて「お前の国は信用できないからな」って、言っている様なものだろう?
仮にも、“謝罪を受ける”と言って場所をセッティングしているんだから、いくら何でもそれはマズイと思うわけだよ。
そんな事を何度も説明していたら最終的には諦めてくれて、無事、俺の意見が通ったんだ。
購入して下さった方々には、特大の感謝の気持ちを╰(*´︶`*)╯♡
そして、記念SSを9日、10日の活動報告にUPしていますので、其方も是非( ´∀`)
今日もSS書く予定ですが、ネタがないので何かリクエストがあれば教えてくださいませ!