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3.世の中には知らない方がいいことも沢山ある

なんとも理性が試された、本日のアンジェリカのお見舞い。


彼女が帰って行った後、ダニエルは何時迄も桃色気分が抜けない俺を現実世界に引き戻す為なのか、俺が意識を失っている間に起こった、其々の人物のその後を報告し始めた。

其々報告書には目を通しているが、やはり書類だと伝わってこない事が多くある。そんな部分を補完する様に語られるダニエルの報告に、俺は色々な意味でため息が止まらなかった。


まず、エリウスについて。

彼は現在、魔族の国で“領分”を侵した者が入る牢獄に入れられているらしい。詳しい処分内容は教えて貰えなかったんだけど、その話をする時のダニエルの笑顔が滅茶苦茶怖かったので、突っ込んで聞くのは断念した。

世の中には、知らない方が良い事も一杯あるからな……、うん。


次にヘンリー。

ヤツは、その立場を王族から抹消されたようだ。

現在は、ある伯爵家の別邸でこの後の生涯を、幽閉されて過ごすらしい。皇国の皇子(俺の事ね)を害して「あわや戦争か!?」なんて状況を作り出したにしては、何だか軽い処罰だと思った。

でも、この処罰に父とルイス、その上フォンテーヌ公爵やジャッキーの父親までが関わっていると聞いたので、内情的にはもっと酷いものだという事は想像が付いた。

きっとこれも、“知らない方が良い事”の1つだと俺の感が訴えてくるので、あまり突っ込んでは聞かない事にしておく。


そして、ヒューイだが……。

隣国に留学してもうすぐ2週間。ヤツは、既に何度も小さな問題を起こしているらしい。多分、この国では通じていた権威が、あちらでは全く通じない事に焦れているのだと思う。今までなら家柄をひけらかして我儘を通していた(ウッドロイド伯爵は、この国ではそれなりに力のある貴族なのだ)のに、他国ではそれが通用しない。ただでさえ自分の思い通りにならない事が許せないヒューイが、そんな環境に我慢できる訳がないよな。

このままでは、いつ大事をやらかすのか時間の問題だと思う。

だが向こうの国には、『何か問題を起こせば、遠慮なく罰してくれてかまわない』と伝えてある事だし、いくらヒューイをダメダメに甘やかしていたウッドロイド家でも、これ以上やつが失態を重ねるようであれば、それなりの対処をする筈だ。

俺はもう、ヤツを見捨てる事に決めているので、後の責任はウッドロイド伯爵家でなんとかしてもらうことにする。


後は……。

ミシェルとジャッキーのその後の経過だが。


2人は現在、隠れ家として用意した王都の外れにある小さな家で、新婚の様な甘い暮らしを楽しんでいるらしい。

ミシェルのあの(・・)能力も、ジャッキーと深く結ばれてからは、そうそう発現しなくなっているそうだ。

さすが自身も特殊能力を持つジャッキーだけあって、彼もあの異様な力には気付いていたらしく、「おれの気持ちが自分に向いていると確信して、精神的に安心できればあの力も発現しないようです」という報告書が届いているらしい。

2人の今後の予定としては、ミシェルは学園を中退。ジャッキーには学園に戻って貰い、特例として隠れ家から学園へ通う事になっている。

外部から学園へ通う表向きの理由は、『スパイ嫌疑を晴らすための尋問と、学園を卒業後は我が国の王宮で俺の子飼いとして働いて貰う為、特別教育を外部で受けさせるため』とするらしい。

それに、彼は隣国の貴族である為、この国の婚姻可能年齢には縛られない。あちらの国では、特に婚姻年齢に関する決まりがないので、いつでも結婚出来るのだ。

つまり、ミシェルとジャッキーは都合さえつけば、直ぐにでも結婚出来るという事である。


ミシェルについては、全ての事件の原因となった事に対する処分と、どこの国でもあまり見かける事のない“チャーム”の能力を持っているという事で、王宮でその存在を預かる事になった。その為、学園は退学して貰う事になった。

2人の結婚は、一応はこの国の決まりに合わせて(学園を卒業後はこの国の人間になる予定なので)ジャッキーの卒業に合わせて、行う予定になっている。しかし、もしそれまでに子供が出来るようであれば、結婚自体を早めるかもしれない、という事だった。


なのでジャッキーは、冬休みが明けた頃に学園に戻って来る予定だ。


…………。


てかさ。“深く結ばれる”とか“子供が出来れば”って、あの2人はそういう関係になっているって事だろ?

なんて羨ま……じゃなくて、そんなの不潔よ!!

ヘンリー風に言うなら、なんて破廉恥な男なんだ! ジャッキー!!

まだ3年も我慢を強いられることが決定している全俺を敵に回したな!


ホントに、性的なリア充どもは滅びれば良いよ!

この世界に於いて、ただ単に婚約者と仲睦まじいだけのリア充は、非リア充な奴らより辛い日常を送っているんだ。そこんところを、しっかり理解して行動して貰いたいものだ!



そして結婚といえば、もうひとつ嬉しい知らせがあった。


なんと! ダグラスとエイプリルの婚約が、正式に決まるようなんだ。

冬休みの間に正式に婚約をして、2人の卒業に合わせて結婚する予定で話が進んでいるらしい。

エイプリルはヒューイとの婚約を解消したばかりで、『格下の女に婚約者を奪われた女』『失態を侵して隣国に留学させられた(・・・・・)男の元婚約者』などと、学園内でも好き放題な噂が流れている。

その噂を払拭する為にも、ダグラスとの婚約は大々的に行う方が良いので、学園が冬休みで社交が盛んになる時期に、婚約発表をする事になっているのだ。

この国の冬休みは長く、2か月程の期間となる。それだけの期間があれば、社交界で2人の婚約を広め、エイプリルの献身ぶりを浸透させるのに充分な筈だ。


それに、エイプリルの家は……、言って見れば“貧乏貴族”ってやつで、今まではウッドロイド家から婚約者(エイプリル)への援助として、金銭面でかなり頼っていた様なのだ。その内情は、エイプリルが想像していた以上のものだったらしい。

ただ今回の婚約破棄は、非は全面的にヒューイにある事なので、今までの援助金の返還なんかは求められなかったらしいが、その代わり慰謝料的なものは一切出なかったとか……。

ロートン伯爵家としても、ダグラスが立ち直るのを支えてくれたエイプリルを、何時までもくだらない悪意ある噂話のネタにするつもりなどないし、今後の彼女に対する金銭的な援助を惜しむつもりもない様で、迅速な対応をしてくれているようだ。


俺としても、2人には幸せになって貰いたいと思っていたし、実に嬉しい知らせだと思っている。


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