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どうやら乙女ゲームの攻略対象に転生したらしい  作者: みなみ
番外編という名の補足話
66/100

エイプリルは不憫属性?

エイプリル視点で、婚約解消の辺りのお話です

「ヒューイ様が、今年入学した男爵家の娘にご執心らしいですわよ」


この噂が流れた時、あたしは崩れ落ちそうな気分を味わったーーー



あたしとヒューイの婚約が決まったのは3年前。


もう直ぐ学園に入学しなければいけないというのに、あたしの婚約は何時までも決まらなかった。

原因はあたしの性格。

あたしの長女気質な性格が、同年代の男性にとっては鼻に付くらしい。

同じく、性格的に難の多いヒューイの婚約者も中々見つからず、『あの甘ったれた性格のヒューイには、エイプリルのような母親タイプの女の方が合うだろう』という、下らない理由だけであたし達の婚約は決まったのだった……。



「ヒューイ……。恋愛は自由だけど、私に迄悪評が立つような行動は控えて貰えないかしら?」


どうしてこんな当たり前の事を注意しなければいけないのか。

そんな苛立ちを必死で押し殺して、ヒューイに声をかけたのだけど……。


「何を言ってるの? エイプリル。年上女の嫉妬とか、醜いよ?」


甘やかされて育ったお坊ちゃんには、貴族の常識なんてものは期待できないようだった。

ヒューイはあたしの事を見下しているところがあるので、こんな暴言は日常的だったりする。

あたしは気の強い性格なので、いつも言い返してやりたくて堪らないんだけど、家の事情が絡んでるだけに簡単に婚約を破棄する事もできなくて、いつも悔しい思いをしていた……。



あたしの家は『伯爵家』とは言っても、余り裕福な家では無く、しかも子沢山なために更にお金がかかるという、負の要素が高い部類の家。

歴史だけはあるので、格はそれなりに高いんだけど、逆に言うとそれだけしかない。

ヒューイとの婚約も、誰もが『ちょっと……』と言うような彼と結婚する事で、我が家にはそれなりの援助があるし、歴史の浅いウッドロイド伯爵家には、我が家の『格』を取り込む事ができるという、本当に政略的なものだった。

なので、ヒューイが愛人を作ろうとどうしようと構わないと思ってはいる。だけど、最低限のマナーは有ると思うのよ。

『1人の女性に何人もの男性が集って愛を囁いている』とか、『カイル皇子から何度も苦言を貰っているのに、無視しているらしい』なんて噂されているとなると、話は違ってくる。

更には『そりゃあ、年上の口うるさい女より少しでも若くて可愛らしい女を選んで当然だろ?』なんて、あたしの名誉を傷つけるような内容の物まで出て来れば、文句の一つも言いたくなるでしょう?


なのに、『もう少し周囲の目を気にして、少なくとも皇子の不興を買うような行動は謹んで欲しい』という当然の事を言っているだけなのに、ヒューイから返ってくる言葉は斜め上なバカ発言。

もう、どうしたら良いものか解らなくて、実家にもウッドロイド伯爵家にも事情を話して相談してみることにした。


その結果……。


あたしが『もう、無理!』と思った時点で、婚約はウッドロイド家の有責で解消する事に決まったの。

なんでも、カイル皇子様からも苦情が届いているらしくて、ウッドロイド家の方からも、何度もヒューイには『態度を改めるように』と手紙を出しているらしい。

その上専属執事にも態度を改めるよう、何度も苦言を貰っているらしいのにあの態度。ウッドロイド家としても、ヒューイの今後の扱いを検討している所なのだとか……。


それならば、後少しだけ様子を見て、それでもヒューイの態度が改善されないようなら切り捨ててしまおう!


そうあたしが決意した翌日、あの事件は起こった。



『脳筋』と、貴族の間でも評判のロバート様と、カイル皇子様の婚約者であるアンジェリカ様が起こした、カフェテリアでのあの騒動……。

カイル皇子様とルイス様の機転のおかげで、あんな衆人環視の中での『婚約破棄宣言』はなんとか未然に防ぐ事が出来た。けれどカイル皇子様は、かなりお怒りの様子で……。

こんな馬鹿な騒ぎを起こしたロバート様に対しては勿論、彼と一緒にいてその行動を止める事もしなかったヒューイとダグラスに対しても、怒りを感じている様子だった。


なので……。

カイル皇子様は、当然の如くそれを注意する為に、その3名を呼び出したのだけど……。

その時のヒューイの態度ったらっ!


カイル皇子様が気の長い方でなければ、どうなっていた事か……。

それ程に尊大で、礼儀なんて全く無い態度だったのよ?


あたしはこの瞬間に、ヒューイとの婚約を解消する事を決めた。


カイル皇子様から苦言を貰った後で、ヒューイはあたしと話し合う為に時間と場所を用意して来た。だけど、彼の口から出て来るのは言い訳と不満ばかり。反省なんて、欠片もしている様子は無い。

その事を諌めた執事に対しても、「一々うるさい! もう、お前は家に帰れよ!!」なんて言って、部屋から追い出す始末。


貴族のクセに、執事の重要性も立場も理解していないとか……。

あんた一体、どれだけ馬鹿なの??

本当に家で『貴族教育』を受けてきたのかしら?

私なんて、専属執事を付けてもらう余裕が家になくて、学園で四苦八苦しているっていうのに!


執事を部屋から追い出して、勝ち誇った様な満足げな表情をしているヒューイ。

そんな彼に、あたしは至って冷たく声を掛けた。


「ヒューイ()、今日限りで私達の婚約は解消しましょう。両家からの許可はもう頂いていますので、後は私から両家に伝えておきます」

「は? 何言っているんだよ、エイプリル? 君の様な女、ぼくとの婚約が無くなったら、マトモな結婚なんて出来ないぞ?」


婚約の解消を伝えたら、上から目線でかなり失礼な事を言われた……。


あんた、どれだけあたしを見下せば気がすむの?

確かに、ヒューイとの婚約を解消すれば、あたしみたいに可愛げの無い女には良縁なんて、もう来ないだろう。

でも、こんな馬鹿な男と結婚するくらいなら、一生独身で王宮の侍女として務める方がずっとマシだわ!


「貴方と結婚するくらいなら、一生独身の方がマシだわ」


なので、そのままの言葉をぶつけてやった。

この甘ったれた男は、こんな事を言われたらまず我慢なんてできない筈。

案の定、ヒューイは顔を真っ赤にしてプルプルと全身を震わせ始めた。


「な、な、何様のつもりなんだ! お前みたいな年増と婚約してやっていたっていうのに……!! その事に感謝もできない様な女、こっちこそゴメンだよ! もう顔も見たく無いから、さっさと部屋から出ていけよ!!」


想像通りの悪態をついて、「早く出て行け!!」なんてヒステリックに叫んでいる。


あたしは、ヒューイの感情を逆なでする様に殊更丁寧に暇乞いをして、彼の部屋を出てやった。

その間もヒューイは、「出て行け! 出て行け!! 出て行けーっ!!!」なんて、馬鹿みたいに喚いていた。


今までのイライラが、これで少しは晴れた様な気がする!

スッキリした気持ちで部屋へ戻ったら、カイル皇子様から『ダグラスが精神的に不安定なので、暫く彼に付いていてやって欲しい』という依頼が来ていた。


ダグラスは去年、婚約者を病気で亡くしている。

あたしもその頃のダグラスの様子はよく知っているし、最近の彼らしく無い行動も気にはなっていた……。


ヒューイとの事で、カイル皇子様には色々心配をかけた様だし、かなり根回しもして貰っていたみたいだ。

その恩を返す意味でも、そして、あたし自身の今後の事を考える為にも、この依頼を受けてみよう。



そんな風に軽い気持ちで受けた筈だったのに……。


あたしはいつの間にか、ダグラスのあのすがりつく様な不安定な瞳に撃ち抜かれてしまい、密かな恋心を抱いてしまう様になったのだった……。


あーあ。

こんな叶いそうもない恋をするなんて……。

あたしってば、つくづく不憫だわ。

ヒューイはヒューイなりにエイプリルの事が好きでした。

ただ、子供すぎたので表現の仕方がアレだったって感じです……。

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