ある名もなき従者の一日
活動報告から移植してきました
僕はカイル様付きの従者の一人です。名前は教えても、直ぐに忘れられると思うので言いたくないのですが……。クンクンと言います。
もう二度と教えないので、覚えるなら、今覚えて下さいね。
僕の一日は、ダニエルさんの「そろそろ起きませんと、人生を後悔する事になりますよ。」と言う、目ざまし時計よりも30秒早い声かけによって目覚めます。
従者一同、正しく飛び起きます。
こんな最悪な目覚めの後、気持ちを切り替える為に、顔を洗って身だしなみを整えるのです。が、カイル様の部屋では、身だしなみを整える際の道具一式は、カイル様と全く同じものを使わせて貰えます。
なんでも、「同じ物を使っている方が、それを使って主の手入れをする時に勝手が解って、良い仕事が出来るだろ?」と、言う事でした。
コレは、今年になってから突然カイル様が言いだした事で、今までは従僕はもっと安い物を使っていたのです。
カイル様の意識が変化したと皆が噂するのは、きっとこういう所を見て言うのだと思います。
良い方向に変化したカイル様に、私達従僕は高い忠誠心を誓うようになっています。
さて、良い道具と品を使っている影響でしょうか?
他の貴族付きの従僕と比べると、僕達はとても見目よく写るようです。
ソレが気にいったのか、最近はルイス様・アンジェリカ様・ジェシカ様の所の従僕達も、同じように主と同じ品で身だしなみを整えているらしいです。
今年のカイル様は、それだけに留まらず、食事事情も変えてくれました。俺達にも同じ食事を用意してくれるんです。しかも量が多い。
「栄養がいきとどいて、しっかりした体格が作られなければ、良い仕事はできないだろ?」との事でした。
これはとても助かりました!食べざかりな上、体力仕事の多い僕たち従僕は、今までの食事量では、かなり厳しいものがあったんですよ!!
しかし、食環境の改善のおかげで、僕達は本当に仕事の効率があがり、「流石王族は連れてる従僕も違う」なんて評価されてしまいました。
あとは、カイル様は皇子なのに、僕達にも気さくに話しかけて来られますし、挨拶や何かをした時に当たり前のように「ありがとう」と言って下さるので、言葉遣いやマナーも主に恥を書かせないため、徹底的に教えて貰いました。……ダニエルさんに…。
その頃の事は、何故かあまり記憶がないのです。なぜでしょうか…?
水も、火も嫌です!!チャンと頑張ります!二度と同じミスはしませんから!その動物は辞めて下さい!!!!
……はっ!
僕、今、何か言ってました?白昼夢を見てたみたいですね。
えっと何の話をしてましたっけ?……ああ、僕の一日でしたよね?
何処まで話しましたっけ?
あ、そうそう。
身だしなみを整えたら、カイル様から昨夜申し受けて発注していた花を受け取りに行き、昨日の内に用意されたメッセージカードを添えて、アンジェリカ様の元へ起床時間までに届けに行きます。
なんでも、目覚めた時一番に目に入るようにしたいらしいのです。
凄い独占欲ですよね?
そして此方も昨夜のうちに用意されていたと言う、メッセージカードの添えられた、アンジェリカ様が刺繍を施したハンカチや、贈られた花で作ったと言う、押し花の栞を持たされて、部屋に戻ってきます。
それらの物は、ダニエルさんに手渡して、後の事務処理をお任せしておいて、僕は他のメンバーと共に、朝食の支度に取り掛かります。仕上げの段階で、従僕が1人抜けますが、あとは盛り付ける位なので、問題はありません。
丁度準備が出来た頃、ダニエルさんに起こされて、身支度を終えたカイル様が、寝室から出て来られます。
「おはよう、皆」
と、僕達にも声をかけて下さるので、綺麗に見える角度で礼をして、「おはようございます、カイル様」と返事をします。この時、“皇子様”と言わないのがポイントらしいです。
カイル様は名前を呼ばれる事で、自分自身を認識して貰っているかどうかを、判断しているらしいのです。
なので、話しかける時は、必ず“カイル様”と声かけするようにしているのです。
カイル様が講義の為に出られた後は、ベットメイクや部屋の片づけ、夕食の仕込みを行い、その後、自分達の昼食を作りながら、アフタヌーンティーのおやつもいくつか用意します。
ダニエルさまも用意してくれているのですが、種類が沢山ある方がカイル様が喜んで下さるので、最低でも3品は毎回作るようにしています。
他の方に付いている従者は、料理をしないらしいのですが、この部屋では当然の嗜みになってしまっています。
昼も夜も、カイル様は学食で食べるのですが、その時に「今日はウチのが食べたい」と言い出す事があります。また、何故か食事をあまり摂らずに戻ってきて、夜中に「おなかすいた…」と仰る事があるので、何時でも対応できるように、この部屋には食料のストックがかなりあるのです。
消費されずに、古くなってしまう食材も多いのですが、少し古くなれば我々が戴けるので、正に一石二鳥なんですよ!
夕方から夜にかけては、また忙しくなります。
カイル様の部屋には、良く人が訪ねて参りますので、その方達への応対が中々苦労するのです。
一番大変な所は、ダニエルさんが受け持ってくれるのですが、話に興奮してくれば、鎮静効果のあるアロマを炊き、タイミングをみてお茶菓子を用意し、状況を読んで必要時、相手方の部屋へ指示より先に伝令に向かう。
伝令はダニエルさんに止められることもありますが、それ以外は言外に「行ってこい」と言われている様なものなのです。
そうしてお客様の対応をしながらも、湯アミの準備も整えていきます。お湯はかなり熱い温度で準備し、覚めない様に気を付けています。
お客様が帰られたら、明日の準備と指示が出ますので、それに追われてしまいますが、カイル様の湯アミが終わったら、我々にも使わせて下さるので、この時に一日の疲れを落としきるのです。
順番に湯アミをしながら、明日の準備を行い、全てが済んだら日付が変わる頃に就寝です。
コレが私達の一日の仕事ですが、こんな事ホントに知りたかったですか?
ミシェル母の話は、まだ500文字程しか進んでません。
マジ、書けない。




