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どうやら乙女ゲームの攻略対象に転生したらしい  作者: みなみ
番外編という名の補足話
60/100

もう1人の転生者

番外編です。

その日もいつもと変わりのない、毎日の延長だと思っていた。




何時ものように友人と、ゲームの話をしながら学校へ行って、授業を受けて、またゲームの話をしながら帰宅して。ネットで色々な情報を集めて、友人とラインでやり取りしながら、ゲームをして、時間になったらご飯を食べて、お風呂に入って寝る。また、朝、目が覚めて、学校へ行って……。


そんな繰り返しの毎日。

その日も、そんな一日になる筈だったのだ………。





最後に覚えているのは、自分の目の前に迫っていたトラック。周囲から聞こえてくる、阿鼻叫喚の悲鳴ーーー




気が付くと私は、皇国の王女になっていた。名前は“リリス”。とんでもない名前だと思った。


聖書に出てくる悪魔の名前じゃん!


アダムの最初の奥さんで、別れた後悪魔に身体を売って、守って貰ってた女の名前。

「どんな名前付けてんだよ!」って思ってたら、私のすぐ上の兄の名前は“アベル”だった。なのにその上の兄の名前は“カイル”って、中途半端だな、おい!

そこは、“カイン”って付けとけよ!

と、そこまで思った所で気付いた。


あれ?もしかしてこれ、死ぬ前まで嵌ってた乙女ゲーム、“君の為に全てを掛けて”の世界じゃないの?


ネットで集めてた、続編情報、スピンオフゲーム情報にあった、カイル皇子の詳しい設定。

攻略対象の中でも、一番人気だった彼は、スピンオフでミステリーゲームや、RPG、シューティングゲームの主人公として、色々企画が進んでいた。

乙女ゲームとしても、“2”の発売が決まっており、今度は王宮を舞台に物語が進むと、ネットに情報開示がされていて、「隠しお助けキャラとして、人気のあの攻略対象が出てきます!」なんて煽りと、明らかにカイル皇子のシルエットが載っていた。


更に、“2”の発売に先駆けて、カイル皇子を主役にしたスピンオフゲームが出る事になっていた。そのゲームの中で、乙女ゲームの中でも意外な程に人気だったお邪魔キャラ、アンジェリカがカイル皇子と結ばれるという、救済シナリオがあるというので、発売前から話題騒然だったのを覚えている。


乙女ゲーム転生って言ったら、主人公か悪役令嬢がテンプレなのに、どうして私は攻略キャラの妹に転生したのか……。

全く……。自分の残念さにガッカリする!配役の選び直しを、要求する!!


でもまぁ、王女だし続編ではライバルキャラになるみたいだし(不確定情報だけど)、良しとするか。


私が転生に気付いた翌日には、学園の入学式があり、「ああ、ゲームが始まったんだなぁ…」とか思ってたんだけど、王宮には何も変化が無かったので、その内気にもしなくなった。

そうしたら突然、主人公であるはずのミシェルが、攻略対象の1人であるジャッキーと一緒に城に送られて来た。

表向きは、学園で起こった事件の事情聴取とスパイ容疑の取り調べ。でも実際は、ミシェルの特殊能力から起る問題の阻止と、保護の為に国で2人を隠す事にした為だった。

どうやらミシェルは、チャームの能力を持っているらしく、力は強いけど不安定で制御も出来ないらしい。


ミシェルって、そんな能力持ってたんだ…。

どうりで攻略対象を簡単に落とせるわけだよ!




でも何故、ミシェル一人じゃなく、他国の貴族であるジャッキーまで一緒に、城に送られてきたのか……。

その理由は、ジャッキーとミシェルは付き合っているらしく、一緒に居ても居なくても、ミシェルが問題を引き起こしそうなので、屋敷を用意してそこで2人を軟禁する予定だという事だった。



私は城にいる間の、ミシェルの世話を任された。ミシェルの世話は女性にしかさせられないので、私が進んで引き受けたのだ。

だって、乙女ゲーの主人公と親しくなる機会なんて、滅多にないでしょ?カイルお兄様の采配で匿われるとか、超意味深だし。


初めて彼女の部屋に入った時、強烈な郷愁を感じて、不思議に思ったのを覚えている。

それは彼女も同じだったらしくて、私達はあっという間に仲良くなった。まるで、生前からの親友の様な感覚だったんだけど、こんな事彼女に言っても笑われそうだから、内緒にしてたのよね。

そしたらある日、私は彼女が窓から空を眺めながら「やっちゃん…」と呟いているのを聞いてしまったのだ。

”やっちゃん”それは、私の生前の親友チノッチが、私を呼ぶ時に使っていた呼称。


「えっと、もしかして……。チノッチ?」


確信が持てなくて、恐る恐る呼びかけると、ミシェルは瞳を大きく見開いて、私を見つめ


「やっ…ちゃん?」


と、ボーゼンとした様に呟いた。

その瞳は雄弁に「信じられない!嬉しい!!」と語っていて、変わらない親友の素直さに思わず頬が緩む。


それから私たちは、お互いの転生してからの出来事を語り合った。

親友は、転生してから意識を持つまでに時間が掛かった様で、気がついたら詰みかけてたらしいんだけど、カイルお兄様に助けて貰って、なんとか今の状態を手に入れたらしい。

チノッチは「カイル様は、転生者じゃないって言ってた」なんて言ってたけど、あんたの話聞いてたら明らか転生者じゃんか!

しかも婚約者であるアンジェリカとラブラブとか、フラグ回避率の高さとか、結構やり込んでるよね?



カイルお兄様が暴行され、ヘンリーが失脚したというニュースが城に届いたのは、チノッチの件を知った翌日だった。

カイルお兄様を暴行したのは、ヘンリーの執事という事で、各国の貴族の間に激震が走った。

執事が理を曲げたのだ。その衝撃はかなりの物で、魔族にも動揺が広がっているらしい。

お兄様の執事はかなり優秀なので、全ての後始末を任せたとお父様が言っていた。それは、問題の執事の始末を任せるという事。

魔族の方も、彼に後始末を一任した様で、その後その執事がどうなったのかは、私もよく知らない……。

お父様や、魔族の上層部は知ってるみたいなんだけど、お父様に聞いても顔を青くして、「世の中には知らない方が幸せな事もあるんだよ?」なんて言われてしまえば、それ以上は聞けなかった。


そうこうしているうちに、チノッチの新しい屋敷の準備が整い、2人は仲良く移り住んで行ったので、私は3日と空けずに会いに行っている。

前世では彼氏も出来ず、喪女として過ごしてた私達なのに、チノッチは今やリア充だ。

爆ぜろ!……とまでは流石に思わないけど、やっぱり妬ましい。私の春はいつやって来るんだろう?


カイルお兄様が、クリスマス休暇を利用して、友人達と別荘で過ごすと聞いたので、私も押し掛けてみようかな?

転生者同士、話したい事もあるしさ。



誰か良い男を連れて来てくれる事を願って、その日を楽しみにしていようと思う、今日この頃。

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