《閑話》 監禁(捕え)たい程愛してる(ヘンリー)
変態視点第二弾
今回の変態は、まだソフトです。
私はヘンリー。隣国の第5王子だ。
将来は、外交を担当することになっているので、その勉強のためにこの国に留学して来た。
この学園に入学した当初は、『つまらない国と学園』だと思っていた。
その気もちが変化したのは、今年の新入生であるミシェルと出会ってからだった。彼女は、性格は良いし、何事にも一所懸命に頑張り、逆境にもめげずいつも前向きだった。
知り合ってすぐに彼女に興味を持った。
好意が恋にそして愛へ変化していくのに、時間はかからなかった。
彼女はとても異性から人気があり、取り巻きと言える人間が私を含めて6人もいた。
誰が彼女の愛を勝ち取るのか。私達はお互いに牽制しながらも、日替わりでミシェルと1時間ほどのデートを楽しみ、その後は皆で仲良く一緒の時間を過ごしていたのだ。
皆と一緒にミシェルを囲んで過ごす時間も楽しかったが、2人きりで過ごす時間はその何倍も素敵な時間だった。
ミシェルとのデートは、今まで経験した事が無いほど、とても楽しかった。彼女は良く何もない所で躓く娘で、その度に唇と唇が触れてしまったり、彼女の胸に顔を埋める事になったりと、ラッキーなハプニングが起こった。
これは私だけではなく、他の取り巻きたちにも起こっていたようだった。
ハプニングが起こるたびに、2人の距離が近付く気がして、デートの時には、わざと足元の悪い道を散歩したりしていた程だ。
自分の気持ちの変化に初めて気付いたのは、カフェテリアでロバートが婚約者とその友人達と問題を起こした時だ。
その時問題を治めたのは、この国の皇子だった。彼は、ロバートに対して思う所があったようで、別室へと誘っていた。多分、何か苦言を言うつもりだったのだろう。
そこへ、ミシェルがロバートを庇うように立ちふさがったのだ。
私はその姿に感動した。そして、彼女が庇っているのが自分で無い事に、とても腹が立った。さらに、皇子に無下に扱われている姿を見て、守ってやりたくなった。
そして……、ミシェルにあんな冷酷な瞳を向ける、この国の皇子を憎悪した。
あの男、絶対に許さない……。
私のミシェルに対して、あんな仕打ちを……!
そしてミシェル、私はこんなに君を愛しているのに、君の瞳には沢山の男が映っている。色々なものに傷つけられている。
それが許せない。
何故だ?
どうすれば、彼女を私だけのモノにできるんだ?
日に日に私の中で独占欲が強くなっていく。彼女を誰の目にも触れさせたくない。しかし、一緒に過ごす内に仲間意識が芽生えてしまった彼らから、ミシェルを取り上げることも出来ない。
私達の誰も“ミシェルの特別”にはなれていない。それが救いだった。
“私達のミシェル”なのだと考えれば、自分の衝動もなんとか抑えられていた。
私が気にしなければいけない存在。それは、カイル皇子だった。
ミシェルはヤツに、私達へ向ける以上の関心を持っているようだったのだ。なのに、皇子のミシェルへの態度はとても辛辣で、私のヤツへの憎悪は強くなるばかりだった。
今はミシェルに興味を持っていないようだが、あの男がいつ彼女の魅力に気付くか解らない。
あいつは、排除しておくべき存在だ。
だから、ブラッドに協力してもらい、ヤツを嵌める事にした。
ブラッドはヒューイと同じく、気の多い男で、この学園でも多くの生徒と破廉恥な関係を持っていた。ミシェルの事は大事にしている様なので、見て見ぬふりをしていたのだが、どうやら彼は、カイル皇子に興味を持っているらしいのだ。
ならば、ブラッドにヤツを与えて、破廉恥な事をさせれば良い。男の良さを覚えれば、ミシェルに興味を持つこともなくなるだろう。
そう考えて念入りに計画を立て、後は実行するのみ!……だったのに、ブラッドが暴走したせいで、せっかくの計画が潰れてしまった。
しかもその事件が切っ掛けで、ジャッキーとミシェルの関係が深まったらしいのだ!!
私達皆のミシェルだったのに……。ジャッキーの物になったのか?
………裏切られた?
いや、彼女は私の物だ!
取り戻すためにはどうする…?
……そうだ、閉じ込めてしまおう……。他国とはいえ、男爵家ごときでは私に逆らう事はできまい。
直ぐに国へ連れ帰り、私の自室に繋いでしまおう。
毎日飽きるほど抱いて、子供でも孕めば、完全に私の事しか考えられなくなるだろう。
抱き方も工夫して、私を求めずにはいられない身体にしてしまおうか。
ブラッドに聞いた破廉恥な話が、こんな所で役に立つなんて思わなかった。
楽しい妄想。
それを現実にするために、準備を行う。
しかし、準備が出来る前にミシェルとジャッキーは、私の前から消えた。犯人は、カイル皇子。
またお前か!!
ヤツは、私から最愛のミシェルを奪っておいて、自分は婚約者とイチャ付いていた。……私の目の前で!!その上、ミシェルとジャッキーを同じ部屋で、監禁しているなんて言いやがったのだ!
許せない!!
思わず、詰め寄って行ったら、ヤツの執事に止められた。
守られ、安心と信頼の眼差しを執事にむけている、カイル皇子。
ヤツはいつも何かを守っていた。強い眼差しで周囲を牽制し、婚約者を、友人を、その背中に隠している姿ばかりを見せていた。
なのに、執事にはそんな顔を見せるのか!?
許せない。
(なにが?)
許せない!
(なにを?)
許さない!!
(誰を?)
私の中で、ドロリとした何かが生まれた瞬間だった。
それはきっと、もっと以前から私に種を宿し、ゆっくり育っていたのだろう。
そして今、実ってしまった……。
翌朝、カイル皇子の姿を見つけると、考える前に側に近付いていた。
自分に向けられる、張りつけられた笑顔と、軽い嫌みが心地いい。
なんて、卑劣な奴だ。私の心をこんなに乱すとは!!
(もっと、乱されたい…)
見え透いた社交辞令を言いやがって!!
(共に過ごす時間が嬉しい……)
私と席を共にしているのに、私に許可も求めず臣下を同席させるとは!!!
(2人の時間を邪魔された!許せない………)
私も居るのに、2人で目で会話するとは失礼だろう!!!!
(私以外にそんな目をむけるな!!許さない…………)
“(私以外、見れない様にしてやる!!)”
さて、どうやって捕えようか……?
この後、ヘンリーがア○サンになるのです。




