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33 いかさま博打って、どうやったら勝てると思う?

今日も1日腹痛と仲良くしてました。

ロキソニンの効きが悪い。

しかし!復活した!!

「ジャッキー。お前さぁ、ホントに国、捨てられる?」


本音で話がしたいので、素で声を掛ける事にする。

俺の纏う雰囲気が変化した事で、奴も姿勢を正し、探るような視線をこちらに向けてくる。「間違えた答えを出さないように」と、緊張しているのが伝わってきた。


「ええ……。ミシェルの為なら……」

「ミシェルの為だけに、国を捨てるのか?」

「……ええ……。彼女の為に、全てを、掛ける……」


その答えが、なんか引っかかるんだよな……。まるで、ゲームのセリフみたいじゃね?まさしく、「君の為に全てを賭けて」だ。

今日、ジャッキーが発する言葉には、彼らしい物と違和感だらけの物がある。ジャッキーが持つミシェルへの気持ちは『ホント』だと思う。ただし、「彼女のためなら……」という辺りは、『ゲーム補正』が働いている様な気がするんだ。

ミシェルのためにってのが、腑に落ちないんだよなぁ……。


ジャッキーは子供の頃からずっと、ヘンリーありきで動いていた。

この国に留学してきたのも、妹をヘンリーから守る為に奴を自国から引き離したかったからだった。ミシェルの逆ハーに所属したのも、ミシェルを生贄にするつもりと、ヘンリーの動向を見張る為だった様だし……。

それが、ミシェルの中身が変わった途端に、恋に堕ちたとか言って、ヘンリー失脚を企み出した。

ここまでの間に、『国を捨てる』なんて選択肢は全くなかったくせに、どうして今更その選択肢一択で話をし始めたのか?

そこが気になるんだよな……。

それがゲーム補正によるものなのか……。


こいつは、最近までミシェルに興味がなかった。他の連中には、ゲーム補正が働いていたようなのに、こいつにはそれが無かったんだ。

ジャッキーがミシェルに惚れたのは、ミシェルの中身が変わったから。これは、ゲーム補正じゃ無くて、ただの恋愛だった筈だ。

それなのに、今のジャッキーには明らかにおかしな言動がみられる。

これがゲーム補正なのだとすれば何故、今頃になって補正が働き出したのか。

そこが気になるんだ。

ミシェルと相愛関係になってから働く、“補正”って意味があるのか?


しかも、今この世界は、一つのゲームの中で4つの要素が入り乱れている。本来のゲーム展開+追加ソフトの展開だ。

本来なら個別の筈のものが、入り乱れてカオスになってる。

だから、ゲーム補正と言っても、どの展開の補正かが解らないんだよ。

さらに、どうやら複数のシナリオが一度に進んでいて、イベントトリガーを引いたら、強制的にイベントスタートみたいだし。

しかも、俺もミシェルも、追加ソフトによるゲームシナリオを詳しく知らない。

例えば、今のこの状態が追加ソフトのシナリオの一環だったとしても、それに気付けないんだ。だから、余計に予測が立てられない。

さらに、今起こっている出来事をどんなに回避しようとしても、補正の力で、イベントは強制的に進んでしまうらしい。

ロバートの婚約破棄や、昨日の誘拐・強姦未遂のように……。


今回の件で、どう頑張ってもイベントをスルー出来ない事は解った。なら、ありとあらゆる予測を立てて、事後処理を完璧に行えるように準備をしておく必要がある。

何がイベントトリガーなのかも解らない状況での事前準備は、実質不可能だろう。それでも、根回しだけはドンドン進めておいて、いざという時に直ぐに対応できる様にしておかないとな。


あとは……。

進んでいるシナリオの予測が難しいなら、消去出来るシナリオでも考えてみるか?


まず、ロバート、ダグラス、ブラッドのシナリオは消えたと考えて良いだろう。

そして、ブラッドが退場した事で、ヤリチン版のシナリオは消えたと思いたい。だが、俺を主人公として選択出来るらしいから、まだ可能性は捨てきれない。

あと、一番恐ろしいBL版の存在だが……。

しかしコレは、ヒロインの働きでカップル誕生に繋がると言ってたし、ミシェルを隔離してしまえば、シナリオも消える筈だ。うん、直ぐにでも消してしまいたい!


そう考えると、本編のシナリオで残っているのは、俺・ヘンリー・ヒューイ・ジャッキーの4人。

その中で、俺のシナリオはありえない。恋愛イベントが起こる程、好感度が上がっていないからな。

ジャッキーのシナリオは進んでいるのだろう。国外逃亡の話までしてるんだから、間違いなくシナリオ進行中だ。

後は勿論、ヘンリーによるミシェルの「監禁凌辱END」だと思う。

ヒューイは……、解らん。まぁ、シナリオが進んでいてもいなくても、どうでも良いだろう。

あいつからは、ヘンリー以上の小物臭が漂っている。例え何かを計画していたとしても、上手くいくとは思えないんだ。


しかし……、ジャッキーに働いてる気がする、この補正はなんだ?

今後の展開にどう関係してくるっていうんだろうか?


不確定要素が多すぎる上に、どんなに手を回しても無駄になる可能性が高い。

まるで、いかさまポーカーで、勝負させられている気分だな。完全なる負け戦。

しかし俺は、今まで何とかこのいかさまな勝負で勝利している。それは、俺も“いかさま”を使っているからだ。いかさまに勝つには、いかさましかないんだよ。目には目を、いかさまにはいかさまを、だ。

俺の場合の持ち札は、“転生による知識”と“ダニエル”。

この二枚のカードを駆使して、勝負を進めることで、俺は今まで勝ちを拾えているんだ。

なら、これからも方針を変える必要はない。この二枚を、上手く使えるかが問題なんだ。

“転生による知識”があてにならなくなってきた最近は、特にコチラに不利なゲームが進んでいる様に感じる。俺が知ってるゲームの世界とは、かけ離れているから、俺の知識じゃ役に立たないのが原因だ。

攻略本の存在しない、先の見えないリアルなゲーム攻略中みたいだ。しかも鬼仕様!!


そして、ジャッキーのこの様子が、新たな展開を示唆しているのか……。今はそこが気になる。


「ダニエル……。」

「はい。何らかの影響を受けていらっしゃるのは、間違いないかと……」


ダニエルに問えば、やはりジャッキーには、なんらかの力が働いている事が解った。それがゲーム補正なのかどうなのか……。

彼の意志と補正。それがアンバランスに混じっているせいで、彼の歪さが際立って見えるんだな……。


まぁ、何が起きるか予想がつかないのであれば、その人物たちを隔離してしまえば良い。今回なら、ミシェル・ジャッキー・ヘンリー・ヒューイの4人。

このうち俺がどうにか出来そうなのは、ミシェルとジャッキーの2人。ヒューイはこのまま泳がせておいて、将来を見極めよう。

では、ミシェルとジャッキーを、この学園から遠ざけるにはどうするか?

そこは、ヘンリーの十八番である、“監禁”を使ってやれば良い。ヒロインがいなくなれば、こんなゲームは終了するしか無いんだし、一気に何もかもが解決するかもしれない。

監禁するときも、2人を一緒に閉じ込めてやれば、お互いに不安も感じないだろうし、かえって喜ばれるかも……。

勿論、監禁するにはそれなりの理由が要るわけだが、それもヘンリーがゲームで使った物を使ってしまおう。


「ジャッキー。お前をしばらく、この国で拘束しようと思う。もちろん、ミシェルも一緒にだ」

「どういう、事、ですか?」


俺のいきなりの提案に、ジャッキーが訝しそうな表情を見せる。

そりゃそうだ。いきなりこんな事を言われても、意味分かんないし「はい、解りました」なんて言う奴いないよな。だから、ちゃんと説明はするよ?


「ヘンリーから身を隠す為だよ。この国で、“犯罪の恐れあり”と拘束していれば、いくら他国の王子でも手は出せない。ただ、これは時間の勝負だ。だから、今から2人を拘束する。表向きの理由としては、昨日の事件の重要参考人だ。その後は、スパイ容疑で監禁させてもらう。もちろん、事態が落ち着けば学園に戻ってきてもらうつもりでいるが、それがいつになるのかという約束はできない」


拳を唇に当て、俺の提案を聞いていたジャッキーは、数瞬、何かを葛藤しているような顔をしたが、直ぐに覚悟を決めたようだった。


「成程。国を捨てる覚悟が要りますね……。でも、素晴らしい提案だと思います。ミシェルの為にも、おれの安全の為にも、ね」


ジャッキーは、どこか晴れ晴れとした表情で俺を見て、「お願いします」と頭を下げた。

そうと決まれば、今から行動だ。


「ダニエル、ミシェルを連れて来てくれ。あと、皇帝にも連絡を」

「承知致しました。」


ミシェルを呼んで説明をしたら、取り敢えず今夜は城に拘束してもらおう。その後の事は、あしたルイスにも相談して、順番に決めていく事にしようか。

今は、身柄の確保だけを考える。それ以外は後回しだ!

いかさまにはいかさまを。

ジョーカーは使いどころを間違えてはいけません。

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