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32 人の噂も75日って言うけど、3か月も我慢するのって辛いよね?

お久しぶりです。

今日は、体調と相談しながら、何話か更新するつもりでいます。

翌日になると、予想通りの噂が学園内を駆け巡っていた。


あの!ブラッドの教員室から、3組のカップルが出てきた。しかも組み合わせが………。

“誰を選ぶのか、皆が興味津津で様子を見ている”ミシェルと、“その取り巻きの一人”であるジャッキー。

“カフェテラスでの婚約破棄騒動で注目を浴びている”ジェシカと、“あの騒ぎの時に彼女を守っていた、そしてその後、彼女へアプローチをしている様子”のルイス。

そして、全ての騒動に何かと絡んでいる、この国の皇子とその婚約者。


男性それぞれが、自分の相手を抱きあげて、そのまま自室に連れ込んだ。ジャッキーと皇子の部屋からは、夕食終了ギリギリの時間にそれぞれ出てきたが、ルイスとジェシカはまだ部屋に籠っているらしい。

さらに、ルイスとジェシカの婚約は、昨夜急きょ成立されたという。婚約の成立した男女が、同じ部屋で一昼夜を共にするという事は……。


3組のカップルが出てきたのは、あのブラッド先生の部屋。


「え?……ブラッド先生のお部屋では、特別授業(・・・・)が行われているって噂がありますわよね?」

「ええ……。男女のマナーを教えてくださるって、噂になっていましたわね」

「 まぁ……!そんなお部屋から出てきて、直ぐに自室に籠るだなんて……、何をしてらしたのかしら?」

「あら、まだ籠ったままの方達もいらっしゃいますのよ?しかも、早急に婚約を調えたとか……」

「あら、まぁ!……婚約している2人が何日もお部屋に籠られても、学生の間に結婚する事になっても、何も言えませんものねぇ……」


その後、それぞれ部屋に連れ帰り、何時間も出てこない……。さらに、明らかに急がれた婚約………。

噂好きな貴族子女達の憶測は、さもそれが真実であるかの様に広がりを見せる。


「おい、聞いたか?今話題のブラッド先生は、健康上の理由ということで昨日付けで急遽退職になったらしいぞ?」

「え!?昨日までは、元気そうに講義も行っていたというのに……?」

「あぁ……。しかも、誰1人としてブラッド先生が学園を去る姿を見てないらしいぞ……?」

「そんな事……、ありえるのか?」

「噂によると、皇国の暗部が動いたらしいぞ……」

「え?あの、誰もその実態を確認した者は居ないが、皇国の存続が関わる時には必ず動きがあると言われてる、あの(・・)暗部が?」

「らしいぞ……?今回の件は、皇子とその婚約者も絡んでるからな……」

「え、それって……」


貴族子息達は、噂でしか知らない“暗部”の話題で持ちきりだが、最終的に行き着く憶測は子女達と変わらない。


……そして、一番の問題は……。もし、3人の女性徒たちが妊娠した場合、誰が父親なのだろう……。


この、ゲスな憶測に行き当たるのだ。


あまりにも予想通りの噂だった。

学園でも有名な人物たちのスキャンダルだ。皆がその噂に食いつくのも、仕方ない……。

そして噂というものは、ゲスなものであればある程食いつきが良く、様々な憶測を呼び騒がれるのだ。

今、この噂を消そうと思えっても、クーデターや戦争でも起こらなければ無理だろう……。



「いやぁ~……。思った以上の噂の広がり方ですねー……。」


一人で夕食を摂っていると、ジャッキーが困ったように笑い、人差し指で自分の頬を掻きながら、近付いてきた。


「やあ、ジャッキー。夕食は済ませたのかい?」


今日か明日には来るだろうと思っていたので、にこやかに声をかけ、向かいの席を勧める。

ジャッキーは、「夕食は先程済ませました。」と答えながら、俺の向かいの席に座った。ダニエルがすかさず、紅茶を提供している。


「じゃあ、もう少し待ってくれ。私の部屋で少し話がしたい。付き合って貰えるかな?」

「ええ、勿論ですよ。」


俺がジャッキーの話を聞く準備があると解って、彼はホッとしたようだ。おっとりと笑って、紅茶に口を付け始めた。


俺が夕食を終えるまでは、お互いの国の文化の違いや食の好みなど、とりとめのない会話をして過ごした。

周囲では、『今噂になっている2人が、一体どんな話をしているのか?』と興味津津に耳を傾けているようだ。この様子だと、明日には新たな憶測が追加された噂が流れるんだろうな……。

そして……、興味の視線とは明らかに異なる、攻撃的な視線がコチラに向けられている事にも気付いた。ヘンリーとヒューイだ。

どちらも、ジャッキーだけにでは無く、俺にも敵意を剥き出しにしている。


おい、ちょっと待てよ?お前ら。

ジャッキーに敵意を向けるのは解るよ?『皆のアイドル、ミシェルちゃん』と如何わしい噂が立ってるんだから、な。

なんでお前らの仲間に嵌められた俺にまで、そんな敵意を向けてるんだよ?

まぁ、ヘンリーは前からだから解るとしてもだ、ヒューイのあの目は、何が理由なんだ?

俺、ヒューイには何もしてないぞ?


そういえば……。ヒューイって、ブラッドにヤケに懐いてるっぽかったよな……。

…………まさか……、ヒューイってば……。

いや、考えるのは止めよう。


あまり良い予感がしないので、手早く夕食を終え部屋にひきあげることにした。



「で、今日はどんな調子だったんだい?」


ダニエルに食後の緑茶を淹れて貰い、数口飲んでからジャッキーに水を向けてやる。

ジャッキーは不思議そうな顔で、緑茶をしばらく眺めていたが意を決したように一口飲み、目を見開いていた。その反応みて、思わずニヤリとしてしまう。


「え……。あ!ミシェルには、今日明日は休むように言ってます。おれの方はまあ、予想通りですね……。」


緑茶に気を取られていたジャッキーが、焦って顔をあげ、答える。こちらを向いた時の顔には苦笑が浮かんでいた。

きっと噂を聞いたヘンリーとヒューイの嫉妬が、凄かったのだろう……。

ミシェルは休んでいるし、主犯であるブラッドは既に学園に居ない。噂として出回っているものは、とんでもない内容だし、事情を聞けそうなジャッキーは食わせ者だ。2人の仲がどうなっているのか解らなくて、悶々としてるんだろうな、あいつら。


「あいつらには、何て説明してあるんだ?」


何といって今日1日を乗り切ったんだ?


「昨日は、デートの順番がおれだったんです……。なので、『順番を変わってくれ』とブラッドに言われて断ったら、監禁された……と。何故か、ミシェルと一緒にアンジェリカ嬢とジェシカ嬢も連れてこられたけど、直ぐにカイル殿下達が助けにやって来た。なので、おれは自分の順番だったデートを楽しんだだけだと。そう、説明しておきましたよ」


俺の興味津々な質問に、ジャッキーは苦笑しながらも答えてくれる。

色々と突っ込みどころはあるのだろうが、大筋では嘘をついてない。なので、嘘を見抜く魔術具を使われていたとしても、誤魔化す事が出来るはずだ。


このまま、ジャッキーだけが奴らの相手をするのなら、何も問題なく誤魔化し続けることも出来るだろう。

……しかし、あんな事があった後で、ミシェルがジャッキーへの気持ちを隠せるとは思えない。

ジャッキーもそう考えたから、ミシェルを休ませているのだろうし……。

だとすれば、「監禁凌辱END」まで秒読みだ。


「ヘンリーの暴走まで秒読みだな。」


あえて無表情で言ってやると、ジャッキーの顔が泣きそうに歪む。それを隠すように湯呑を持ち、顔を伏せた。


「ですね……。あの………、」


顔を伏せたまま、とても言いにくそうに、しばらく口ごもっていたジャッキーは、突然顔をあげ、強い決意を込めた瞳で俺を見つめ、「何か良い案はありませんか?彼女を助けてもらえるなら、おれは何でもします!」と言った。


「彼女のためなら、おれの全てを掛けても良い。全て捨てられる!国も、家族も!!」


そんなゲームの中セリフのの様なことを言って、俺に助けを求めてくるジャッキーの顔は、昨日までとは違っていた。ミシェルへの思いが、数段強くなっているように見える。

昨日、あの後に“愛が深まるような何か”があったんだろうな……。


くっ!羨ましい!!

まあ、俺も良い事あったけどね!!プラトニックだけど!!!


でも、ここで恩を売ってジャッキーを俺の配下に付けるのは、良いかもしれない。こいつって結構優秀だし。ミシェルを押えておけば、裏切ることもなさそうだ。

そうとなれば、俺にできる限りの配慮はしてやろうじゃないか。


たしか、ヘンリーがミシェルを自国へ連れ去った時の理由って……。


それなら、こちらがそれを利用して、先に動けるな……。

なら、ジャッキーにも覚悟を決めて貰おうか。明日の夜には、ルイスも部屋から出てくるだろう。

なら、決行は明日の夜だ。



俺は、ジャッキーの覚悟を確認する事にした。

取り敢えず、お腹痛いので、今から薬飲んで寝ます。

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