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《閑話》 私の皇子さま(アンジェリカ)

実は、アンジェリカ視点で話を書くのが苦手です。

精神的にはキツイけど、ブラッド視点で書く方が書きやすいとか……


色々終わってる……

今日、私たちが危機に陥ったのは、私の浅はかな行動が原因でした。

あの時私は、直ぐにカイル様に知らせに行くべきだったのです。カイル様からも、何度も彼には近付かないようにと、念を押されていたのに……。

さらに、私の行動を一生懸命諌めようとしていたジェシカを、巻き込んでしまいました……。その上、酷い目にあったのはジェシカとミシェルさんだけ。私も拘束はされましたが、ただそれだけだったのです。

自分のせいで、親友が目の前で苦しんでいる姿を見るのは、とても辛い事でした。あの時、カイル様とお兄様が助けに来て下さらなければ、私は大切な親友を失っていた事でしょう……。


いつも私のピンチに現れて、助けて下さるカイル様は、本当にお話の中の王子様のようです。

この学園に入学して、カイル様と過ごす時間が増えれば増えるほど、私のカイル様への恋心はドンドン大きくなっているのです。


カイル様は普段から、あまりご自分の持つ権力を使おうとはなさいません。あまり皇子という身分を表に出さないのです。

確かに学園は、「学園内では身分の上下なし」を謳っていますが、実際には身分を踏まえた付き合いや態度を取っている者が殆どです。

なのにカイル様は、本当に身分をあまり気にせず、どなたとでも気軽に接しておられます。さらに、学園の決まりを守った従者の数しか、付けていないのには驚きました。

他国の王族や上位貴族などは、特別申請をして従者の数を増やしているというのに……。


「皇子だからといって特別扱いに甘んじるのは、無能だと思うんだ」


いつでしたか……、何故他の貴族と同じ扱いを受ける事に何も仰らないのか聞いた時、カイル様はその様に答えてくれました。

カイル様は、昔から自分に厳しい方なのです。少々意地っ張りな所も有りますが、そんな所も年相応な魅力に見えてしまいます。


この国の皇子が既定の人数しか従者を連れていないので、我が国の学生も皆、規定数の従者しか付けていません。

カイル様にはとても優秀な執事が付いているので、どれだけカイル様が公務を抱えていても、従者は十分足りているのでしょうが、他の貴族は結構苦労しているようです。

しかし、下級の貴族では執事も付いていない学生もいるのですから、規定数の従者を付けているのに手が足りないなど、口にできる者はいないでしょう。だって、そんな事を口にすれば、如何に自分が無能であるのかを宣言している様なものですもの。


そしてカイル様は、ご自分の問題の解決に権力を使う事を、あまり良しとはされません。以前、そんなカイル様を不思議に思って、お兄様に何故なのか聞いてみた所、「なんでも権力でゴリ押しすれば良いという考え方は、無能のする事だよ。」と言われてしまいました。

権力はここぞという時に使うものであって、使い方を誤れば独裁者になってしまうそうです。なので基本は根回しで対応していき、権力を使う必要があるかを見極めて、タイミングを見定めているそうです。そして、「学園は将来政治を行う時のシミュレーションを行う場である」とも教えて頂きました。

その考え方で学園生活を考えるなら、私は、将来の王妃として学園での女性社会を仕切り、組していかなければならないのです。

そうして、社交界での情報操作を学び、カイル様の力になる事が、私の学ばなければいけない、一番大切な事なのでしょう。

カイル様が権力での物事の解決を嫌うのなら、私がその様に力になって見せます!



何時も、そう思っていたのに……。

力押しを嫌うカイル様。

その彼をサポートできる様、私は努力していた筈なのに……。


なのに私は……。

私のせいで、カイル様に酷い選択をさせてしまいました……。

あの時、カイル様の部屋で初めて見た彼の“怒り”。私に向けられたのではない事は、直ぐに気付きました。でも、私に対しても思うところはあった様で……。

向けられる視線を『怖い』と感じたのは、あの時がはじめてでした。


さらに、彼の口から出た『お仕置き』という言葉に、恐怖とは違ったゾクリとした感触が、背中を走りました。

その感触を煽るかのように、カイル様から怪しい色気のような物が漂ってきて、私をトロトロに溶かしていきます。

しかし、カイル様が浮かべていたお兄様そっくりな笑顔を見た時、正に今、苦しんでいるであろうジェシカの事を思い出してしまいました。

そう、私は薄情にもカイル様との時間を楽しみ、親友の事を忘れてしまっていたのです!!

確かに私には『お仕置き』が必要なのだと思いました……。


私は子供の頃に、家庭教師からお仕置きを受けた事があります。習った事が出来なかった時などに、両掌を硬い木の鞭で叩かれたのです。お仕置きを受けた日は、手が痛くて食事も上手く出来ませんでした。

私のその様子で、お仕置きを受けていると知ったお兄様が、両親に訴えてくれたので、その家庭教師は直ぐに居なくなってしまいました。なので、実際にお仕置きを受けた回数は2度ほどだったのですが、とても辛い思い出です。

ですが、今の私にはあの時の様な『お仕置き』が必要だと思うのです!いえ、もっと酷いものでなければ!!



だから「うんと酷くして欲しい」とお願いした筈なのに……。

どうして私は今、『恥ずかしいお仕置き』を受けているのでしょう……?

しかも、恥ずかしいだけじゃなく、とても嬉しいのです。

カイル様の膝に座って、私の指からクッキーを食べてもらったり、紅茶を飲ませてあげたりなど……。

どう考えてもこれは、恋人同士の甘い戯れです。これをお仕置きだというのなら、カイル様が私に仕掛ける触れ合いは、全てお仕置きになってしまいます。

これでは、ちっともお仕置きになっていませんわ!!


そのようにカイル様に伝えたところ、「俺が君にそんな“酷い事”が出来るとか、本気で思ってるの?」と言われてしまいました……。

確かに私にはとことん優しいカイル様が、“酷い事”なんて出来る筈がありませんわね……。

でも、こんなのは断じて『お仕置き』などでは有りません!

これは唯の『睦言』ですわ!!

これが『お仕置き』だというのなら、私は、もっとお仕置きをして欲しくて、悪い子になってしまいそうですわ……。

それ程にカイル様のお仕置きは、甘くて、優しくて、クセになる様なものだったのです。



そんな『お仕置き』という睦言が終わると、カイル様は私に、償いの機会を与えて下さいました。

ジェシカのフォローをするなんて当然な事なのに、それを私の償いにするようにと仰るのです。更に、今回の事は全て自分が悪いのだと仰います。だから私が罪悪感を感じる必要は無いのだと。

本当に、どこまでもお優しい方です……。

カイル様が全ての罪を背負うというのならば、私はそれに従います。でも、将来の伴侶として、共に背負う権利が私にもある筈です!

そこだけは、いくらカイル様が相手であっても譲れません!


私の覚悟と宣言に、カイル様はとても喜んで下さいました。ギュッと抱きしめられて、その腕の力強さに、思わず喉が鳴ってしまいました。

その声は、自分でも驚く程に甘くて……。


一気に甘い空気に満たされた室内に、酔ってしまいそうです。

なのにカイル様ったら、ニヤリと笑って「あと、俺だって狼なんだから……あんまり油断してると丸飲みにしちゃうぞ?」なんて言うんですもの……。

せっかくの気分が台無しですわ!


なので、「カイル様になら、齧られても、丸飲みにされても構わないです」って気持ちは、秘密にしておきます……。

アンジェリカ、カイルの事が好きすぎて、色々フィルターがかかってます。

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