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31 神(アンジェリカ)様、懺悔します

打って変ってシリアス回(?)

事後処理がもう少し残ってるので、この後もシリアス多めになるかな。

ふぅ。


一通り『お仕置き』は楽しんだので、アンジェリカには少し、今後についての話をしておかないとな。

『お仕置き』が適度なショック療法になった様で、彼女の顔からは、あの悲痛さは無くなっている。話しておくなら今だろう。


アンジェリカを俺の膝の上から降ろし、ソファーの隣に座らせる。まだ真っ赤な顔でやや俯き加減な彼女の瞳を下から覗き込むと、俺の雰囲気が変化した事を悟った彼女も表情を正して顔をあげる。


「アンジェリカ……」

「なんでしょう?カイル様」

「今回の事だが……。取り急ぎ、ルイスとジェシカの婚約を進めることにした。今夜中には、全て整う筈だ。あと、数日はジェシカは講義に出る事は無いと思う。その間ルイスがジェシカに付き添う筈だから、直ぐにあらぬ噂が立つと思うんだ……」


ここまで説明すると、アンジェリカは全てを理解してくれたようで「解りました。私に出来る限り、最大限のフォローを致します」と答えてくれた。

ホントに彼女は察しが良い。俺が1つ言えば、10の事柄を読み取ってくれるのだ。

そんなところは、ルイスとよく似ている。

優秀な一家だよ、ホントに。


今回の事は、噂好きな貴族にとっては格好のネタになる。

良からぬ素行が噂されていた教師の退職。その部屋から出てきた2人の、急がれた婚約。さらに、2人は何日も同じ部屋に籠っているのだ。

「勘ぐって下さい」と言っているようなものだ。

貴族なんて皆、噂好きの詮索好きばかりなのだ。明日には、様々な憶測がさも真実であるかの様に、噂されるだろう。そして、一度たった噂を消す事は容易ではない。なら、周囲が徹底したフォローをするしかないだろう。


あの部屋から出てきたカップルは3組だ。

当事者である俺たちが平常通り、いやそれ以上に仲睦まじく過ごしていれば、下世話な詮索からは多少逃れる事が出来るだろう。

ルイスの事だから、ジェシカにトラウマなんて植えつけることも絶対にない。あの部屋から出てきたジェシカは、きっと、ルイスにメロメロで幸せな少女になっている筈なんだ。

幸せそうなジェシカの姿を見れば、ゲスな勘ぐりをする者は減る筈だ。

ルイスが側に居れば、ジェシカの事は奴がその身に変えても護るだろう。例えそれが、見えない悪意の声だとしても。

ルイスの政治的な手腕は、この歳にしてはズバ抜けている。

そのうえ、アンジェリカやジェシカが絡む事に関してだけは、格下貴族の子息や子女を表舞台から葬る事など、平気でやってのけるのだ。

だから、ジェシカが絡んでいる内容で表立ってルイスに逆らう学生など、この国には居ない。


なら、俺たちが側にいない時に、アンジェリカがジェシカを悪意から守ってくれれば、問題はなくなる筈だ。


彼女にはそれだけの力があるんだしな。実際、ロバートの件の時も、かなりの悪意に満ちた噂が立っていた。その悪意からジェシカを守っていたのは、アンジェリカなのだから。

その為になら、俺の威を借りる事だって辞さなかった彼女だ。

今回は更に自責を感じている事もあって、更に強固にジェシカを守ろうとするだろう……。


俺たちでは、女性社会の悪意からジェシカを守る事は難しい。だからアンジェリカに頼むしかないのだが、俺は彼女の心も心配だ。

今回の件で、誰が一番傷ついたかなんて、誰にも解らない。でも、確実にアンジェリカは傷ついている。それが解っていて、こんな事を頼む俺は、酷い婚約者なんだろうな。

それでも俺は、彼女の強さを信じている。そして、こうする事が、一番彼女の傷を癒すだろうとも思っている。


「……アンジェリカ……。今回の事は、確かに君の軽はずみな行動で引き起こされた。……でも、それだけが原因じゃないんだ。どうにか穏便に片を付けようとして、結果的には問題を大きくしてしまったのは、俺だ。いくら卑劣な犯罪者だったとしても、法に委ねることもせず、精神を破壊させて闇に葬ったのも俺だ。例えそれが一番正しい答えだったのだとしても、君をこんなに傷つけたのは俺なんだ……」


ただ、今回の事で必要以上に自責の念を抱える事はして欲しくないから、俺は丁寧に言葉を選んで彼女に語りかける。


「今回の件は、最後まで後手に回ってしまった俺に、一番の非があるんだ。一番罪深いのは、“俺”なんだよ……」


彼女の傷を軽くしたい。その為だけに、今回の件で一番罪深いのは誰なのか、一番知られたくない人に自分で伝える。

アンジェリカは最初、目を見開いて俺を見つめていたが、やがて何かを決意したように強い意志を瞳に宿し、そのまま俺の胸にしがみついてきた。


「カイル様がそうおっしゃるのであれば、そのように思う事に致します。……ですが、私はカイル様の婚約者です。なので、その罪は私の物でもあります!」


俺の胸の中で、ゆっくりと、しかし力強くアンジェリカが宣言し、「一緒に背負わせて下さいませ……」と小さく掠れた声で呟いた。

俺の罪は自分の物だと言ってくれる彼女に、愛しさが込み上げてくる。その気持ちの侭強く抱きしめると、「くふぅん」とアンジェリカがノドを鳴らす音が聞こえてきた。その声は、満足そうな音にしか聞こえなくて……。


神様!最高の嫁を俺に与えて下さって、ありがとうございます!!


俺がどんなアンジェリカでも、「可愛い」「好きだ」と思っているように、彼女もどんな俺でも好きだと思ってくれているのだろう。

こんな事を言われてしまうと、か弱い俺の理性がグラグラしてしまうのだが、何とか耐える。

そして、理性に悪いこの甘い空気は、勿体ないが壊しておいた方が良いのだろう。

だって、このままでは間違いなくR18フラグが立ってしまう!


そう思った俺は、一度強くアンジェリカを抱きしめた後、彼女の身体をそっと離した。その動作に釣られて顔をあげ、俺を見つめてくる彼女に視線を合わせ、いたずらっぽく笑いかける。


「でも、二度とああいう無茶はしないでね?今回の狼は、好物は後でゆっくり食べる派だったけど、好物を一番に急いで食べる狼だって、世の中には沢山居るんだから、な?」


しっかり今後に釘を刺しておく。

そして、もう一つ大切な事も教えておかないとな……。


「あと、俺だって狼なんだから……、あんまり油断してると丸飲みにしちゃうぞ?」


二ヤリと笑って注意しておいた。

そんな俺の言葉に、アンジェリカは茹でダコの様に真っ赤になって、口をパクパクしていた。


その様子があまりにも可愛いかったので、派手な音を立てて額にキスをしておいた……。

誘拐イベントを乗り越えて、少し2人の距離感が変わりました。

それに伴い、カイルの行動と口調が若干変化してます。


この辺が乙女ゲーって感じですね。

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