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《閑話》 発情した彼女の慰め方(ジャッキーの場合)

無理やりな描写があるので、苦手な人は避けて下さい。

ココまで飛ばして頂くと、不快感はあまり感じないかと思います。


油断していた。


今日の騒動の原因は簡単に言えば、この一言に集約されるのだろう。

未だに何が奴のヤル気スイッチを入れてしまったのか、全く解らない。ただ、アイツはオレとミシェルが、気持ちを通わせている事を知っていたようだった。あの行動の意味は、そういう事だとしか思えない。


今朝、カイル殿下とルイスは、今回の計画の詳細とブラッドとヘンリーの危険性について、アンジェリカとジェシカに説明すると言っていた。

結果的にはこの行動が、オレとミシェルを助けることになり、アンジェリカとジェシカを巻き込む原因となった。女の子たちには申し訳ないが、オレはこれが天の配剤だったのだと思っている。



昼食後にブラッドから声を掛けられた時、オレは特に何も感じなかったし、疑うこともなかった。「3日後の計画について確認したい事があるから、今からボクの部屋に来て欲しいんだけど」って声を掛けられた時も、「情報でも集めに行っときますか」位の軽い気持ちでいたんだ。

部屋に入ってからも、使う予定の拘束具や防音の魔術具を見せられ、ヘンリーから渡される予定になっている、姿を隠すための魔術具の調子を確認をさせられていた。

ブラッドには特におかしな行動も見られず、ただの確認作業とコレクション自慢にしか見えなかった事もあり、「早く終わらせてくれよな。」なんて間抜けにも、気を散らせていたんだ。


「あと、このボクのお手製のこの道具も使うつもりなんだよ。」


怪しく笑いながら差し出された魔術具を見た瞬間、捉えられた俺と変態なブラッドの映像が見えたのだが、既に魔術具へ手を伸ばしてしまっている。

手を引き戻す暇も無い程ギリギリの状況で見えた映像に、悔しさを感じながら魔術具に触れる。その瞬間、思った通りに『パチン』とスイッチを切ったように、意識がなくなった。



次に気がつくと、オレは奴の部屋の床に、両手を頭上に拘束され、猿轡を咬まされた状態で転がされていた。

とっさに状況の判断が出来なくて、軽くパニックをおこしてしまう。しばらくして昼の出来事を思い出したのだが、なぜこんな事になったのか、その理由は全くわからなかった。

アイツはオレに対しては、何も興味を持ってなかった筈なんだ。なのに、なぜ急にオレを捕まえる事にしたんだ?

色々理由を考えてみた所、一番しっくり来た理由が、今日のミシェルとの放課後デートの順番がオレである事、その順番を自分の物にしたかったのだろうと言う、根拠としては弱すぎる物。

でも、それぐらいしか思い当らないほどに、オレを捕まえようとする理由は見当もつかなかったのだ。


拘束から逃れようと、色々試してみたのだが、魔術具から抜け出ることは出来ない。そうこうしていると、部屋の外から複数の女性の声が聞こえてきた。中の一人には覚えがある。この声は……そう、ミシェルだ……。

なんでこんな所に来たんだ? ここがやばい場所だという事は、知っているはずなのに……。

不思議に思っていると、部屋の外が急に静かになり、ブラッドが次々と意識のない女生徒を部屋に運び込んできた。

その女生徒3人にはとても見覚えがある。ひとりは勿論ミシェル。後の2人は……アンジェリカ嬢とジェシカ嬢だった。


「いつの間にこの子たちが、こんな仲良くなってたのか、君は知ってるのかい? ミシェルを此処へつれて来ようとしたら、何故かこの2人が付いて来たんだよ? 不思議だろう……? まぁ、彼女たちも一緒に手に入るだなんて、ボクは運命の女神から愛されているんだと、痛感したんだけどね! これで、簡単に彼らを手に入れることも出来るよ!」


ブラッドがうっとりと微笑わらい、彼女たち一人一人を拘束していく。

多分、ミシェルがブラッドに連れて行かれそうになって居る所を、2人が見かけてミシェルを助けようとでもしたんだろうな……。

一緒に連れてこられた経緯は理解したが、2人には「何故こんな事に首を突っ込んだんだ? まずいと思ったなら、まず君たちの騎士ナイトに報告に行くべきだろう!!」と怒鳴ってやりたい。

カイル殿下もルイスも、彼女たちの無事を最優先とし動いていたというのに。なのにこんな事に巻き込まれてるとか……。不憫すぎるよ……。


この状況で無理とは解っていても、女の子たちだけでも、なんとか助けられないかと必死で考える。だが、身じろぐ事も声を出す事すらも出来ない俺には、どうする事も出来ないのだ。2人に付いていたであろう執事が、カイル殿下の所へ救援を求めてくれているはずなので、助けを待つしか無い。

女の子たちの心が傷つく前に救援が来る事を願いながら、唯一自由がきく目をあちこちへと動かして、視覚情報を少しでも多く採集する。

そして、情報が増えれば増えるほどに、見たくも無い様なおぞましい道具等が視界に入ってしまい、「それで誰に何をするつもりなんだ!」と叫びたくなる。

オレは、落ち着くためにした行為で、更に焦ってしまったのだった。


そんな焦る俺の目の前で、ミシェルが何か変な液体の入った瓶を嗅がされた。次にジェシカ嬢にも同じものを嗅がせ、更に彼女には、口の中にも少量の液体が入れられている。


あの液体、何だ? まさか媚薬、じゃないよな……?

アンジェリカ嬢には使ってないし、な……。


現状の理解が追いつかない俺の目の前で、次々と事が進んでいく。

奴はオレのところにやって来たかと思ったら、乱暴にオレの服を脱がせ始めた。拘束されて上手く脱がせられない事に焦れたのか、服を切り裂かれて剥ぎ取られていく。そして、全裸に剥かれたオレの真横には、なぜかジェシカ嬢が横たえられた。

アンジェリカ嬢は、全てがよく見える場所に置かれた椅子に座らせられ、動けないように椅子に固定して拘束されて、猿轡を咬ませられている。

そして、ミシェルを抱えた奴は、オレから良く見える位置のベッドの上に座り、背後から彼女を抱きすくめた。

奴が、何かの魔術具を一振りすると、女の子たちは目を覚ましたのだが、ミシェルとジェシカ嬢の様子がなんだか可笑しい……。


「さあ、狂宴を始めよう!」


恍惚とした表情で宣言したブラッドが、開会のファンファーレの如く音を立ててミシェルの上衣を引き裂いた。同時に上がる大きな悲鳴。ミシェルは、首筋に口づけられ、胸を弄られている。

怯えと絶望を瞳一杯にに湛えて、精一杯オレに手を伸ばして助けを求めてくるミシェル。ブラッドは、その姿を嬉しそうに眺めながら「大好きなジャッキーに可愛い姿をいっぱい見てもらおうね?」などと、場違いなほど甘く囁きかけている。


やめろ! ミシェルに触れるな!! と叫びたいが、オレは今、動く事も声を出す事も出来ないんだ。目の前で好きな女が犯されるのを、黙って見ている事しか出来ないなんて……。

俺の隣では、ジェシカが泣きながら自分の服を乱れさせ、身悶えている。

その様子から考えると、先程使われたのは、やはり媚薬だったのだろう。ジェシカが使われた薬の量を考えると、マジでやばい量じゃ無いか?

ヘンリーが用意した薬を使っていたとなれば、下手をすればあの量は廃人コースだぞ!?

カイル殿下、ルイス! 早く助けに来てくれ!!

手遅れになる前に、早く!!


オレは、この一連の騒動自体、ヘンリーを失脚させれば、問題が解決すると考えていた。そうすれば、ミシェルの安全は完全に確保されるのだと思っていたのだ。

なのにこの状況はどうだ!?

ブラッドはヘンリーの思惑など、無視する様に超えてきた。完全なる単独プレー。

しかも、とびっきり危険な道具を多数取り揃えての登場だ。

このままでは女の子たちは全員、廃人待ったなしな調教を施されるのだろう。


誰か彼女達を助けてくれ!!

出ない声を、それでも精一杯張り上げて、誰に求めているのか自分でも解らない助けを求め続ける。


永遠に続くと思われた地獄のような時間は、だがしかし、突然に終わりを迎えた。


「おや、なんだかお取り込み中なのですね。しかし、パーティーは終了して戴きますよ?」


飄々とした声が聞こえた瞬間、オレの隣に誰かが走り込んできた。


状況の変化についていけない。

優雅な立ち居振る舞いで、パニクっているオレの隣に、カイル殿下の執事が立っていた。

執事殿が指を鳴らす。

それと同時にブラッドの体が吹飛び、背後の壁に激突した。オレの拘束も解け、傍らに切り裂かれたはずの服が現れる。急いで服を着て、オレはミシェルの元へ走った。

先ほどの指パチンで、彼女の拘束も外れており、オレが近付くと縋るように抱きついて来た。

縋りついてくるミシェルの体を抱きしめてやりながら、オレのジャケットを羽織らせる。

無事この手に戻ってきた、愛おしいぬくもりを確かめている間に、全ての事は片付いていたようだった。


「ジェシカ様とミシェル様には媚薬が使用されているようなので、ルイス様とジャッキー様はそれを念頭において、彼女たちに適切な対応をとって差し上げて下さいませ。対応を間違えれば、彼女たちの今後に大きな影響を及ぼしますので、くれぐれもお気をつけ下さい」


執事殿の言葉に、すぐさまミシェルを抱きあげ、オレの部屋へ向かう。部屋に着いたと同時に、メッセージと薬が届いた。曰く、ミシェルの媚薬効果は、2時間ほどで切れるらしい。届いた薬は、執事殿が作成したあの媚薬の解毒薬らしく、これを飲ませれば、効果の低減と媚薬の副作用を抑制する事が出来るとか。

早速届いた解毒薬を口移しで喉に流し込み、ミシェルの様子を見てみる。


しばらく観察していても、強い媚薬の効果は出ていないようだし、その位であれば、抱きしめてあやしていれば、時間が経つだろう。ただ、問題なのは……その間オレの理性が持つか……ということだ。


でも、大切な可愛い彼女の為だ。精一杯頑張って見せようじゃ無いか……!


「……ジャッキー…。じゃ……き…ぃ…」


ミシェルの、色を含んだ声に、今建てた誓いが早くも崩れそうになる。


精一杯、できるだけ、……いや、ちょっとくらい…

頑張れるかな?

次も閑話で、ルイス視点になります。

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