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《閑話》 面白がって観察してたら”転生者”とか言い出して、うっかり嵌っちゃった(ジャッキー)

この前にも更新しています。


今回、チョット設定がグロい?ので苦手な方は回避を。

おれは、ジャッキー・ファイン17歳。この皇国の隣国ウルハラの、公爵家次男だ。

実は、おれには秘密がある。


子供の頃から”未来予知”が出来るんだ。それはふとした瞬間に、頭の中に浮かぶ短い映像。

おれが覚えている一番最初の未来予知は、10才の時に見た、妹の将来に関する物だった。

妹の7才の誕生日を家族皆で祝っている最中、大喜びでプレゼントの確認をしている妹の顔を見た時、突然頭の中に映像が浮かんだんだ。

見えた映像の中では、女の子が男に監禁凌辱されていた。


突然見えた生々しい映像に、おれはパニックを起こしてしまった。無理も無いよな。10歳の子供が見る様な映像じゃなかったんだから……。大人でも正視出来ない人もいるはずだ。

そんな映像(ヴィジョン)の影響で、突然恐慌状態になってしまったおれの所為で、パーティーは台無しになってしまい、おれも3日程寝込んでしまった。

寝込んでいる間、見えた映像の男女の顔に見覚えがあったおれは、アレが誰だったのかをずーっと考えていた。

そして、男の方がこの国の第五王子ヘンリー様に似ているという事に気付いたんだ。

今より大人に見えるソレは、ヘンリー様がこのまま成長すればそうなるだろうって顔。

吐き気がした。

女の正体はその時は解らなかったのだが、嫌な予感は何時迄も心の中に残っっていたのだった……。


それからは、何度も色々な未来予知映像を見る様になった。

家族には早い段階で自分の能力を打ち明け、その力を利用して家の力を強化していった。家に有利に働く力だったおかげで、家族はおれの力を簡単に受け入れてくれたようだった。

そして、何度もヴィジョンを見ているうちに、おれの未来予知は顔を見た本人の未来なんだって事が解った。

さらに、年を経る毎に妹の顔が、あの時の女の顔に近付いていくのに気付いていた。

あの映像が妹の未来だと確信した時には、妹とヘンリー様の婚約が内々に進んでいた。おれは直ぐに父に未来予知の内容を話し、婚約の話を止めてもらった。

幸いな事に、父は妹を溺愛している。

妹の幸せと政略結婚なら、妹の幸せを優先してくれる人だ。体を張ってでも、婚約を阻止してくれるだろう


それでもおれには、多少の不安が残った。だって相手は王族なんだぜ?

差し出せと言われたら、臣下であるおれ達には逆らえない。

しかし、ちょうど良い事に、妹には相思相愛の幼馴染がいた。直ぐさま2人を婚約させたのだが、それでも安心はできない。

普通なら婚約者のいる相手を欲しがる事などありえない。だが、相手はあのヘンリー王子なのだ。

だからおれは父と共謀して、ある計画を立てたんだ……。


おれが15才なるのを待って(ヘンリーも同い年の為)、2人で隣国に留学する事を王に提案した。

国際交流を目的とすれば、第5王子であるヤツの“将来の為の勉強”という大義名分を立てる事ができる。それに、隣国の皇子はおれ達の1歳下なので『皇子の御学友』になる事ができ、将来の外交にも役立つと思われたのだ。


案の定、王からは二つ返事でお許しが出た。

ヘンリー王子と一緒に留学するおれは、王子の監視も任せられていた。隣国の王族に対して問題を起こしそうな時は、おれの能力を使って戦争回避を第一に考えて、動いて欲しいと言われた。

おれの能力を知っているのは、父と王様と次期国王になる第一王子の3人だけ。

その為、こんな密命が出たのだ。


元々、正妃の子であるヘンリー王子は、第5王子ではあるが、正妃の子としては二番目の王子となり、王宮でかなり好き勝手な事をしていた。

王族全体の評価を落としかねないヘンリー王子の事を、実の兄である第一王子は憂いていた。母親と共に、何度も教育の見直しを行い、質の良い執事を専属で付けフォローさせたのだが、上手くいかなかった。

間違えた方向に有能な執事を付けたせいで、かえって上手く水面下で事を進めるようになり、問題が表に出なくなってしまったのだ。その分、更にたちが悪くなった。

表立って問題を起こさないから、注意すら出来ない。しかし、留学すれば、どうだろう?

隣国の皇子に専属として付いている執事は、歴代最優秀だという。

それなら、もしヘンリーが学園で何か問題を起こせば、皇子に気付かれて国に苦情が来るかもしれない。そうなれば、ヘンリーの失脚も実行しやすくなると考えたらしいのだ。


なのでおれは、ヘンリーの監視をして国に報告はするが、基本的には問題を起こしても見守るように言われている。

隣国の皇子に対して何かを仕掛けようとしている時だけは、戦争回避の為に動くのだ。


我が家では、おれ達が留学している間に、妹の婚約話はドンドン進めてもらうようにし、妹が16才になったと同時に結婚する手筈になっている。

そしておれは、留学中に王子に別の女をあてがう様に父から言い付けられている訳だ。勿論、留学先で相手を見つけられなかった時の為に、妹が結婚するまでは一切、社交場に出さない事に決められた。


この留学において、おれの役割は多岐に渡っている。

先ずは、ヘンリー王子におれを無害で凡庸な人物と認定させることから始めた。そうして、一年も経つ頃にはヘンリー王子は、おれを空気のように扱うようになってきた。


留学してから2年間は、特に何も起こらなかった。父からの指令である『ヘンリー王子に女をあてがえ』というのも、無視していた。

だって、あんな男に女をあてがうのは気が引けたからさ……。

隣国の皇子とも特に接点なく過ごし、おれは、このまま何事もなく卒業するのかと思いはじめていた。


そしたらなんと、今年の新入生に生贄候補が入学して来たんだ。

その女は、見た目の良い地位のある男なら誰にでも尻尾を振る様な、売女みたいなヤツだった。

ヘンリー王子をはじめとして、5人の男を次々と誑かし自分の周囲に侍らせていったんだ。その手腕には感服したね。あのヘンリー王子迄もが、取り巻きの一人に甘んじたのだから……。

おれも、ヘンリー王子がなんかやらかして国際問題を起こしたら困るので、そのメンバーに紛れ込んで監視する事にした。

最初、相手は身分の低い男爵の、妾の子供だし、ヘンリー王子が彼女絡みで問題を起こしても、大したことにはならないだろうと思っていた。

けれど、その女ーーミシェルの取り巻きのうち3人は、皇子の幼馴染で将来の側近候補であるらしい。さらにミシェルは、その皇子すらも狙っているようなのだ。


これは……。

とんでもない問題が起こる気がするぞ?

これは、ミシェルを観察対象として増やすべきだな……。


おれは、ヘンリーに加えて、ミシェルの事も監視するようになった。


観察していてわかった事だが。

ミシェルはとても変わっていて、会うたびに未来予知映像が見え、その映像が毎回変わるという、今までに遭遇した事のないタイプのヤツだった。

ほのぼのとした未来、落ちぶれた未来、幸せそうな未来、ヘンリーに捕まる未来……。

おれは、様々な未来が見えるミシェルに興味を持ち、彼女の観察を楽しむ様になった。


そんな楽しい観察を行っていた頃、ある出来事を切っ掛けにヘンリーのミシェルへの執着が一気に強くなったんだ。その上、ヘンリーはカイル皇子に対して敵対心の様な物を、ぶつけるようにもなっていった。

ヘンリーの強い執着に「これで未来は決まったかな?」なんて思っていたら、突然、彼女の未来が全く見えなくなってしまった。

そして、それと同時に彼女の様子が変化した。

表向きは、態度を変える事はなかった。でも、時々戸惑っている様に見える事はがあり、行動も言動も大きく変化させない様に、気を使っている様子だった。

しかしある日突然、ヘンリーやブラッドを避けている様な様子が見られ始めたんだ。

本人は今まで通りに接しているつもりの様だったが、奴等も彼女の変化を感じていたと思う。


あんた、それ逆効果だって!

そんな態度じゃ、悲惨な結末しかないだろ? あんなに上手くバランスを保ってたのに、どうしたんだろうか?


そう思いながら、おれはヒヤヒヤして彼女を見ていた。


時を同じくして、突然彼女はどこか遠くを見ながら「やっちゃん」と呟く事が多くなった。その声は小さいが、助けを求めている事がありありと解るものだった。

おれはそれに興味を持って、独自で学園内を調べてみたんだが、”やっちゃん”という人物は居なくて……。

毎日何度もつぶやかれるその声に、なんだか可哀想になってきてしまったのだっが、それ以上に嫉妬を感じた。どうやらおれは、近くでミシェルの観察を楽しんでるうちに、彼女に対して愛着を持ってしまったようだ。

だからおれは、ついつい言ってしまったんだ。


「そんな今ここに居ないヤツに頼らなくても、おれが助けてあげるよ?」


って。

よっぽど限界だったんだろう。おれのその言葉を聞いて、彼女は泣き出してしまった。

気付いたら、思わず彼女を抱きしめて慰めていた事に、おれは心底驚いた。

これがただの愛着なのか?

自分の行動に戸惑いながらも、なんとか彼女を落ち着かせて、ゆっくり話を聞いてやると、彼女は不思議な事を言い出した。曰く、


「私は、転生者なんです。」


という事らしい。頭がおかしくなったのかと思ったが、そういう訳ではないようで……。


話していると、彼女の不思議な状況に、強い興味を覚えた。そして、彼女の精神の幼さを、ヒシヒシと感じてしまったんだ。

下手をすれば、おれの妹よりも大分と幼い気がする。貴族の社交場に出して良い精神年齢じゃない。このぬるま湯のような学園でもアウトだろう。

それが彼女のいう”転生”の影響であるというなら、彼女には絶対的な庇護が必要だ。

なのに彼女には、専属の執事すらも付いていない。


なら、おれが守ってやらなきゃ……。


なんて思ってしまった時、彼女にズッポリと嵌ってしまっている自分の気持ちに、ようやく気が付いたんだが……。

悪い気は全くしないし、ヘンリーなんかにくれてやる気は、さらさらないのだ。

次からまた、本編に戻ります。

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