《閑話》 憧れの乙女ゲーに転生したと思ってたら、ひょっとして詰んでる?コレ?(ミシェル)
皆様の温かい”ホイミ”や”ケアル”でイオナズンやミナデインぐらいは耐えられるHPに回復できましたw
私は、大森 茅野17才。花の女子高生……だった。
あの日、私とやっちゃんはいつも通り、登校の為に歩いて駅へ向っていた。
話題は勿論、今絶讃どハマり中のゲーム『君の為に全てを賭けて』の攻略について。
やっちゃんは、パソコンで先行発売されたこのゲームは既に攻略していて、今は追加ソフトを繰り返しプレイ中らしい。追加ソフトはどれもR18で、どエロな内容らしい……。生き生きとエグい話を聞かせてくれるやっちゃんに、私は少し引き気味だったりする。だけど、そういう事が気になる年頃でもあるので、敢えて彼女の話を止めたりする事はない。
やっちゃんは、所謂なんでもこいな腐女子で、彼女に下ネタを振ると時間がいくらあっても足りないという……。
私は家庭用ゲーム機でこのゲームをやってるので、追加ソフトのプレイはできない。それ以前に本ソフトの攻略も終わってないんだけどね……。
その攻略も、殆どやっちゃんに助けてもらってる。だって、攻略サイトより、攻略本より、やっちゃんの方が色々と詳しく教えてくれるんだよ。「この選択肢が、後々追加ソフトのあの場面で関係してくるんだよ」とか、「多分この選択肢を選ぶ事で、あの攻略対象の好感度が上がり易くなったはず」なんて、どの攻略サイトや本の何処にも載っていない様な情報まで、独自に分析してるんだもん!
今は、憧れのカイル様ルートに挑戦中の私には、やっちゃんの情報は神の福音に思える。
信号待ちの間も、私たちは夢中でゲームの話をしていたから、トラックが突っ込んできた事に気付いたのは、ぶつかる直前だった。
気付くと私は、ゲームをしてる夢を見てた。
私が主人公になって攻略対象達と仲良くしてた。「あ、このシーン知ってる!!」とか「ここの選択肢はこうだったよね〜。」なんてのんびり”夢”を見てた。しかも、ハーレムルートをプレイ中みたい。
でも、ゲームのハーレムルートとは少し違うみたいなんだよねぇ……。やっぱり夢だから、私はまだプレイできていないハーレムルートの内容が、想像で補完されてるんだろうなぁ……。
どうやら私は、あの事故で危篤状態になってるらしくて、目は開かないんだけど病院にいる事は理解してた。私の側で、両親や友人達が泣きながら何かを話してるのを、いつもボンヤリと感じてた。
話している内容迄は聞こえなかったから、やっちゃんが助かったのかどうかが解らなくて、それだけが気がかりだった。
私の意識は、殆ど病室にあるんだけど、時々眠る様に意識が薄れる時があって、そんな時は必ずゲームの夢を見た。
ゲームのヒロインになっているのは嬉しかったんだけど、ヒロインの性格が思ってたより残念で、かなりガッカリしたし「え!?」ってなった。……まあ、夢だしこんなものなのかなぁって思って、自分を慰めてた。
攻略対象達もゲームとはだいぶ性格が違うみたいで、ガッカリなキャラクターも多かった。だけど、ゲームより萌えるキャラクターもいた。
カイル様なんて、ヒロインに凄く冷たくて、チョット傷ついた。でも、婚約者に対する瞳とか態度は滅茶苦茶甘くて……。かえってその”婚約者を溺愛していて、甘やかす”っていうベタなキャラ設定にキュンキュンしちゃったんだけどね。
ロバートは相変わらずのチョロさ全開だけど、思ってた以上の脳筋で引いた。
ブラッドも、鬼畜眼鏡というよりは、犯罪者よりな変質者って感じでドン引きだし……。
代わりに、攻略対象じゃ無いのに素敵な人が沢山いて、目の保養になったよ。カイル様の親友ルイスも、執事のダニエルも超絶イケメンなんだよね。
それ以外にも、モブっぽい人達でもイケメンさんが沢山いて、夢の中の私は、そんな人とも恋愛ゲームを楽しんでるみたいだった。
ヒロインのビッチぶりには、本気でドン引きだったよ……。
夢の中で思い通りに進まないゲームの進行を見ながら、「私はきっと、このまま死んじゃうんだろうなぁ」って思ってた。だって、段々意識が病室にある時間が減って来てるんだもん。
夢の中で「このままじゃ、ヘンリールートに突入しちゃうじゃん……」って思い始めた頃には、私は病室に意識がある時間より夢で過ごす時間の方が増えてきていた。
ああ、もうすぐ私、死んじゃうんだなぁ……。ゲームの攻略結局出来なかったなぁ。
せめて、夢の中のゲーム内容は最後まで見届けたかったな。
なんてボンヤリ考えてたのよね。
今ならあの頃の私に、「ヒロインをもう少しなんとかしようと頑張れ!」って言ってやりたい!!
ある日を境に、私は完全に夢の中で活動するようになってた。それまでは、どこか別世界で、勝手に進むゲームを眺めているだけだったのに、完全に私の意識で動くようになってた事にマジでビビった。
かなり戸惑ったけど、「ああ、コレが今はやりの乙女ゲー転生かぁ」って納得した時は、嬉しさよりも恐怖におののいちゃった。
だって、明らかに“チェックメイト!”って感じで、『ルート中唯一ハッピーエンドは有りません』って言われてる、ヘンリールートに片足突っ込んでたんだよ?
あの絶望感は、言葉に出来ないね。
転生に気付いてからは、暫くこれからどうしたら良いか解らなくてアワアワしてたんだけど、ふとある可能性に気づいたのよ。
転生があるなら、「もしかしたら他にも転生者がいるかも知れない」って事に気付いたんだよね。
そしたら、明らかに怪しい人が居るじゃない!
そう! カイル様!!
あと、ルイス様も怪しいんじゃないかと思ったわけよ!
そう思ったらもう、いてもたってもいられなくなって、直ぐに確認しに行っちゃいましたよ! 同じ転生者なら、もしかしたら助けてくれるかもしれないでしょ!?
でも……あては外れちゃって、2人とも転生者では無いって言われちゃいました……。
しかーし! お2人は私の話に興味を持ってくれたようで、私の話を信じてくれて対処方法まで一緒に考えてくれたの!
凄い優しいよね!? 感動しちゃう!!
だって、私が転生したこの“ミシェル”は、2人にはとっても嫌われてたから。こんな風に優し接して貰えるなんて思ってなくて。だから、凄く嬉しかったの。
「これからも、一緒に協力して欲しい」
って言われた時は、本当に安心したのよ?
だってもう、一人きりで悩まなくて良くなったんだもん。相談できる人がいるって、それだけでとても心強いのよね……。
だから、毎日言われた通り飽きもせず空を見ながら「やっちゃん…」って呟き続けたの。
4日ぐらい続けたところで、急にジャッキーが
「最近いつもそうやって呟いてるけど、それは誰?」
って聞いてきた時には、かなり焦っちゃいましたよ。
お2人に直ぐにどうしたら良いか相談したかったんだけど、次の会合は10日後だし、変な動きをしてヘンリーやブラッドを刺激しないようにって、何度も念を押して言われてたから……。
どどどどどどどうしよう……。
ジャッキーは、攻略対象の一人として私の取り巻きとして側に入るけど、あまり私に興味が無いみたいなんだよね。別の理由で側にいる気がするの。
そんな人物に、私の怪しげな行動を見咎められて、指摘されるなんて……。私は、オドオドと視線を彷徨わせてしまう。
そんな滅茶苦茶挙動不審な私に、ジャッキーは今までとは違う笑顔で「そんな今ここに居ないヤツに頼らなくても、おれが助けてあげるよ?」なんて、優しく言ってくれた……。
その瞬間、頭の中で鐘が鳴り響いて胸がキューンってなって……。
後から、自分のチョロさ加減にガッカリしたorz
次も閑話です。




