21 俺の周囲は危険地帯か!?
更新、お待たせしました。
また、頑張っていきますので、お付き合いお願いします。
今回、変態要素高めなので、苦手な方は退避して下さい。
ミシェルの話の内容をなんとか消化し、次は、今まで集めた最新情報の話し合いをする事にした。
この間、ダニエルに丸投げしたアレだ。ダニエルには、ブラッドの監視をお願いしたんだ。
そうして俺達は、あまりアイツに関わらない様にしている。だって怖いじゃん?
近づき過ぎて、変質者の魔の手に落ちたりしたら洒落にならないし、あの視線の先に居たくない。自分の事だけじゃなく、好きな子をあの視線に晒すのも、本気で嫌だし……。
ダニエルなら、全てを完璧にこなしてくれるはずだから、安心して任せておくだけで、必要な情報が入手できるのだ。
明日のミシェルを交えた話し合いまでに、こちらの方向性をある程度決めておく必要があるから、今日は議題も多くなる予定だ。
「ブラッド教師は、時々ご自身の空き時間でマナーや行儀作法の個人レッスンをされている様ですよ。暫く観察しておりましたが、そのレッスンは、特定の生徒しか受けていない様ですね。多い日で一度に3人程が教室に入っていかれ、どの様なマナーを学ばれているのか、裸になられたり縄を使用されたりと、とても斬新なマナー教育をされていらっしゃいました」
相変わらず、素晴らしいタイミングで視界に入ってきたダニエルは、俺たちにお茶のおかわりを提供しながら、なんでもない事の様に爆弾を投下してくれた。
ゾッとした。一気に部屋の温度が、5度は下がったぞ!?
それ、普通のマナー教育じゃないよな?
なんですか、その“変態紳士・淑女育成講座”は!?
ここは、貴族の子息・子女が社交のイロハを学ぶ学園であって、変態のイロハを学ぶ場所ではないはずなのに!
「先生、不潔よ!」なんて思春期の女子みたいな事を言うつもりもないし、人の性癖をとやかく言うつもりもないが……。
教師なんだから、マズイでしょ? ダメでしょ?
とんだ淫行教師だよ!
いくらこの世界が、“生徒と教師”というタブーが薄いといっても、流石に貴族からお預かりしている大切な子供達相手に変態プレーはどうなんだ!?
しかも、一度に複数とかって……。
この世界のモラルに当てはめても異常だよ。
俺たちって、そんなのに目をつけられちゃってる訳?
絶望した!
自分でも、顔色が悪くなっているのが解る。
ルイスを見ると、ヤツの顔も土気色になっていた。
もし、ブラッドに捕まった場合、漏れなく同じ目にあうのかと想像してしまう。
想像しただけで、トラウマになりそうだ。
「男子・女子関わらず、懇切丁寧に指導されている様です。中々厳しい講義の様で、悲鳴が聞こえる事も多々ございましたよ。……そうそう、かの教師の個室にはカイル殿下、ルイス様、アンジェリカ様、ミシェル様のお写真が飾られていたのですが、なんだかベタつく液体で汚れておりました」
何かを思い出す様に、少し上を見上げる様な仕草をした後、なんでもないことの様にダニエルは笑顔で、俺たちに、さらなる爆弾を投下してくる。
ダニエルってば、B29も真っ青な爆撃機と化していた。雨の様に降ってくる真実に、俺たちは逃げ場を無くしてしまっている。
ぼ、防空壕は何処ですか!?
衛生兵! 衛生兵を早く!!
俺の脳内では、俺たち2人は防空頭巾を被って、爆撃の雨あられの中を必死に逃げ惑っている気分だ。
正に“死に体”ってな状態で、俺もルイスも一言も口を聞く事もできず、フリーズしてしまっている。
俺は、ティーカップを持つ手が不覚にも震えてしまって、中身が溢れて手がビチャビチャになってしまった。ルイスなんて持ったティーカップを支える事が出来ず、中身を全てテーブルに飲ませている状態だ。
ダニエルはそんな俺たちを楽しそうに眺め、手早くテーブルを片付け、新しいお茶を淹れてくれた。
「まあ、殿下たちが近づくのは、やめておいた方が良いと思いますよ。あと、彼の興味は殿下とルイス様とアンジェリカ様なので、ダグラス様やエイプリル様とは別行動を取った方が良いと思われます。ジェシカ様はルイス様の弱点なので、側に置く事をお勧めしますが……。まあ、引き続き観察を続けますので、またおもしろ……変わった事が御座いましたら、ご報告致します」
ダニエル、今、面白そうって言おうとしたよね……?なんか、イキイキして見えるし。
それに、いつにも増して楽しんでる気配がするんだが……。
ってか、確実に面白がってるよね? 俺たちが怯える姿を見て、楽しんでるよね!?
俺たちの尻が非常事態に見舞われているのが、そんなに愉しいのか?
そんな不満が、ついつい顔に出てしまう。
ダニエルはそんな俺の不服そうな表情に、「おや?」ってな感じで眉を上げて、
「殿下、“未知なる世界”の扉を開いてみたいのですか? 王となる方には、あまりお勧めしたいものでは御座いませんが、殿下が望まれるのでしたら、個人レッスンの申し込みをしておきますよ?」
壮絶に艶やかな微笑みを向けられた。
「いえ、結構です。引き続き“ダニエルが”観察を行ってください。スミマセン、オネガイシマス」
尻を両手でさりげなく隠して、棒読みでお願いしておいた。
“個人レッスン”マジで怖い……。
「明日はもう、執務室から出ない様にしようか。僕たちだけなら兎も角、アンジェリカも狙われてるみたいだし、ジェシカやエイプリルがいつ目をつけられるか解らないし……。ダグラスとエイプリルに、今後の事を話す必要もあるし」
何処か遠い目をしたルイスが、つぶやく様に言った。
ルイスの両手も、さり気なく尻を隠す様に動いているのを、俺は見逃さない。
「だな。俺たちには、まだまだ理解できない人物の様だし……。今後は、出来るだけブラッドの目に触れない様に、関わらない様に行動する事にしよう。……そして、ヤツには早めに学園を去ってもらう様に、裏から手を回してみるよ」
俺はある種の決意のこもった瞳でルイスを見る。
「その裏工作、一刻でも早く成就する様に、僕に出来ることは全て協力するから!」
ルイスからも力強い微笑みと言葉が返ってきた。
俺たち2人はお互い両手で尻を隠しながら、瞳を合わせ力強く頷き合ったのだった……。
あとは……ヘンリーのあの企み顏についてだが。
まだはっきりした事は解らない様だが、ブラッドを利用して俺たちに何か仕掛けようとしているらしい。
……なにそれ、怖い……。
そして、やっぱり漂う小物臭。
普通に考えたらさ、向こうも王子なんだから、政略的な仕掛けをしてくるとかじゃないの!?
さすがヤンデレな小物は、考える事がひと味違うよね。
敵を排除する為に、諸刃のヤイバになりえる変質者を投入するとか!
変態とか変質者なんて、こちらの予想外の動きをしてくるからこそ、変態・変質者って呼ばれるんだぞ? なんでそんなのを、手駒に使おうと思えるんだ? 俺には理解出来ん。
自分なら、『変質者を上手く操縦出来る』とでも思ってるんだろうか? それとも、“ヤンデレ”という変態属性のヘンリーなら、“変質者”であるブラッドと心通じる何かがあるんだろうか?
俺には、操縦が効かなくなって、すごい事態になる光景が見えるんだが……。
余りにも巨大な身の危険を感じて、俺は身震いしながら自分の体を抱きしめた。
最近、変態度数が上がってきて、手に負えなくなってきてるキャラが数名…