20 転生者がいっぱい!?
また半分書いた所でデータが飛んだ…。
もう書きたくない。
今日も午後から数時間は、6人でカフェテリアで過ごした。
驚いたことに、ミシェルが一緒に居なくてもヒューイ、ヘンリー、ジャッキー、ブラッドの攻略対象4人組は仲良くカフェテリアで過ごしていた。
ミシェルの周囲に集っている内に、友情でも芽生えたのだろうか? まあ、逆ハーレムを形成出来る位なんだから、男共の仲が悪いとはあまり考えられない、か。
其々に対して思うところがあるのだとしても、そんな事を表面上に出して争う程馬鹿じゃないんだろう。……その分、水面下での足の引っ張り合いは凄そうな気もするけどな。
そして、4人のこちらに対する態度も様々なものだ。
まずヒューイは、ブラッドーー鬼畜眼鏡と楽しそうに話しており、頑なにこちらを見ようとしない。
若干、ヒューイの頬が嬉しそうに赤く染まって見えるのは、俺がゲスいフィルターのかかった目で見ているからなのか?
ヒューイ……おまえ……、ケツ、無事なのか……?
ヘンリーはいかにも「いろんな事企んでるよ!」って感じの目で、こちらをチラチラ見ている。
俺がヘンリーに視線をやると、わざわざ執事を召喚し、こちらをニヤニヤ笑って意味ありげに見ながら、何事かを耳打ちしていたりする。
そのわざとらしさがまた、小物臭プンプンで、見ていて切なくなってくるのだ。
鬼畜眼鏡は………。
俺 は 何 も 気 付 か な い !
なに、あの視線! 女子が妊娠したらどうしてくれるのさ!!
いや、男だって孕むかもしれない! それ位危ない種類の視線なんだよ!?
ああ……尻に幻痛が……。
隣を見ると、ルイスも怯えた顔をして腰を引いている。
昨日の話を聞いて、気のせいなんかじゃ無かったと確信したら、恐怖が倍増しましたよ?
しかもヤツは鬼畜眼鏡だ。考えている事もマトモなモノではないだろう……。
適温な筈のカフェテリアで、寒気が止まりません。全身サブイボだらけになりました。
ダニエルが、せっせと温かい飲み物を用意してくれているが、追いつきません。淹れるそばから冷めていく、そんな感じ。
全く……。“鬼畜眼鏡クーラー”恐るべし! だよ。
そして、ジャッキーなんだが……。
あんな4人の中で、コイツだけはいたって普通に過ごしている。それはもう、空気のごとく。
その姿にかえって違和感を感じた。
だって、あいつらをスルーしてマイペースに過ごすって、何気にスゲェ事だぞ? 何も主張してないのに、そこに居るのが当然の様な顔をして、でも全く目立ってない。
ゲームの中では俺様キャラだった彼なのに、この世界では性格的特徴を捉える事も出来ない。
意図してなきゃ出来ない事だと思う。
だからこそ、そこに怪しさを感じるんだ。
なんだか、誰も彼も転生者に見えてきた。
今ここに、俺とミシェルが転生者として存在してるからには、他にもいると思っておいた方が良いだろう。
ミシェルが転生者と知って、俺が1番に考えたのは、「後何人転生者が潜んでるんだ?」って事だった。
俺が事故にあった時、少なくとも10人は信号待ちをしていた。
その中の何人が死んで、何人がこの世界に転生してるっていうんだ? その中であのゲームを知ってるヤツは果たして何人いる?
俺は追加ソフトについての知識を持っていない。ミシェルも、美味しい部分だけを聞きかじっているだけだ。
全てを完クリしている“やっちゃん”みたいなヤツが、敵として転生していた場合、どう対処して良いのか全く解らん。
そいつの頭の中がマトモなら良いが、ありがちな宇宙人脳の場合は、全く行動予測が付かなくなってしまう。
そして、あんな内容の追加ソフトを、一枚ならまだしも全て完クリしてるとか、確実に腐女子って奴か、両刀のどちらかだろう?
この世界を“現実”と捉えてくれていれば良いが、“ゲームの延長”とでも考えられていたら、面白半分で何をされるか解ったものじゃない。
権力を使ってでも、危険な人物は排除した方が良いのかもな……。
……でも、どうやって危険な奴を見分ける? 排除した奴が、普通の人物であった場合、俺はその人の人生にどうやって責任を取るんだ?
そんな重り、俺に背負えるのか?
考えれば考えるほど、身動きが取れなくなっていくようだ……。
その日の夕食は、殆ど何も食べれなかった。胃の調子が、なんだかおかしい。
ルイスを見ると、彼も俺と同じで、食欲がないらしい。夕食の皿が全く手付かずだった。
これ以上食堂にいても意味がないので、「農家の皆さん、ゴメンナサイ」と心の中で謝って、席を立った。
げっそりとした気分で部屋に戻った俺たちに、ダニエルは甘めのロイヤルミルクティーを入れてくれる。
「頭を使うんですから、糖分の補給はしっかり行った方が良いですよ。」
慈愛に満ちたセリフと微笑み……。
俺たちは、出来る男の微笑みを見た!!
「なあルイス、頭の整理は出来たか?」
「イマイチ…かな?君はどうなんだい?」
心に染み渡るような甘さを堪能した後、俺たちは早速昨夜のおさらいを始めた。
「よくわからない事も多いが……。取り敢えず、俺たちがブラッドに変態な性的対象として狙われている可能性があるって事と、“転生者”とやらが他にいる可能性があるって事は理解出来た。」
全て理解出来たとは言えない俺は、ルイスも理解出来ていそうなあたりをチョイスして伝える。
多分考えてどうにかなるのは、これぐらいしか無いだろう。
「そうだね……。後は、ミシェルの「連れ去られそうだから助けてほしい」って希望ぐらいかな。僕たちが理解できて、対応ができそうな事って」
「そうだな。……権力で排除するしかないんだろうか?」
「……それをするにしても、何処までやれば良いと思うの? 誰が怪しいのかも解らないのに……」
ルイスは権力での排除は反対らしい。反対された事に、凄くホッとした。
俺もそれを望んでいないから。権力は、極力使いたくないのだ。
後の影響がでか過ぎるし、間違いを犯しやすいからな。
「やるにしても、もう少し様子を見て粛清対象は纏めて処分するべきだよ……。おかしなヤツは1人見たら30人は居るんだし、やるなら徹底的にやらなきゃ、ね?」
……いや、反対では無く、容赦が無いだけだった。
真っ黒な笑顔で、ゴキブリ駆除みたいな事を言う。
でも、確かに怪しいヤツを1人づつ処分していくのは効率が悪いし、例え転生者だったとしても全員がおかしなヤツとは限らないんだ。
俺たちに害がなければ、何を企んでても一向に構わないんだしな。
なら、取り敢えずは何処までを敵と見做すかの判断を優先して、疑わしい行動が見受けられる奴ら一人一人に探りを入れていくか。
ミシェルに関しては、放っておきたい気持ちはある。だが、彼女の中身は現在、マトモな人物が入り、貴重な情報を提供してくれるのだから、何とかしてやりたいよな。
「ミシェルについてはどう思う?」
「うーん……。急にあいつらから離すのはよく無いと思んだよね。ヘンリーの性格が彼女の言う通りだとすると、彼女が態度を変える事で、豹変させてしまう恐れがあるんじゃ無いかと思うんだ。」
それは、確かにその通りだ。
あいつは適度に独占欲が満たせていないと、突然病的になるからな。ゲームでも、選択肢を間違えた途端にバッドエンドになったりしてたしな。
「なら、今まで通りにバカを演じてもらいながら、自分に関わってくる人物から、怪しい奴をピックアップして貰うか」
「そうだね。今のところそれが1番妥当じゃないかな。君と僕に興味がある振りをして貰って、時々情報を交換したらどうだろう?」
「ああ。それなら部屋に訪ねてこられても言い訳が立つし、あいつらに近付き……たくは無いが、まあ、色々と対処しやすくはなるよな」
ヘンリーの独占欲と嫉妬心を上手く満たしつつ、俺たちと繋がりを作るなんて……。
言ったは良いが、実行するのはかなり難しそうだな……。
気力があればもう一話あげたいのですが…