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《閑話》 執事の領分(ダニエル)

みんな大好きダニエルさん(?)のチートな設定です。

わたくしは、カイル殿下専属の執事をしているダニエルと申します。


カイル殿下の専属になってからはまだ3年程ですが、それ以前より王家には仕えていましたので、殿下の事は、勿論幼少の頃から知っています。


本日は、殿下の事を語る前に、まず執事というものを皆様に説明したいと思っております。


この世界で、執事という職はある特殊な種族しかつく事が出来ません。

その種族とは、魔族。

魔力を持つ人型種族の事を魔族と呼ぶのですが、その中でも“魔力を持ち、魔術が使える、健全な精神を持つ者”のみが、執事となる権利を与えられるのです。


我々は、執事の資格が自分にあるのかを知るため、専門の学校で幼少の頃より学びます。適性の無いものは次々と振い落されていき、魔族の中でもほんの一握りだけが執事となる事を許されるのです。

学校で学ぶ際、執事には厳しく“領分”という物が教えられます。これは、世界の理や運命を、己の欲望や人の希望で簡単に変えてしまわないための大事な教えです。

我々が能力に任せて動くと、簡単に世界を変えてしまいますのでね。

我々は、日常生活におけるアレコレや、各種作法についてなど、ありとあらゆる教育を施され、その中で運命や理について学んでいきます。

そうして、真に“領分”を理解したと、魔族が至宝と崇める石に認められた者だけが、洗礼の間と呼ばれる空間で資格を与えられ、やっと執事となれるのです。

石に認められても、洗礼を受けられなかった者もいるので、年間で執事となれる人数は両手で余るほどしか居ません。

石に認められ、洗礼を受けるまでは学校から卒業出来ませんが、認められさえすれば、学んできた年数や年齢は関係ないのも、執事の特徴でしょうか?

魔族自体、人間に比べるとかなり長寿ですので、学ぶ期間の長さには拘りません。執事と認められる事こそが栄誉であり、その後の人生こそが意味あるものなのです。


洗礼を受け執事となった後は、協会に登録し、持っている力に合わせて執事としての階級が決められます。

この階級は、執事となった後も能力に応じて変更されるのですが、階級が変更になった執事というものを、わたくしはまだ見た事がありません。

この先長い人生の中で、一度くらいは目にする機会があるのでしょうか……?


さて、執事となった後ですが。

我々の配属先は、協会に契約依頼が来ている中から選ぶことになっています。この際、階級の高い者から順番に、自分の希望を選ぶことができるのです。

依頼を出しても、何年も執事が配属されない事なども多々あります。

なので、身分の上下を問わず、幾人もの執事を抱える家もあれば、子供の専属を作れない程のギリギリな人数の執事しか持たない家もあるのです。

そういう家は逆に言うと、執事がそれだけ必要ないのです。没落しても良いような家であり、重要性も低いと配属先を選ぶ執事たちが判断しているのです。

全ての選択権は、執事が持っているのですよ。なので、執事が主家を見限って協会に戻ってくる事なども、よくある事です。

我々の寿命は長いので、仕えていた主人が死んだ後も、その家に長く仕えるのですが、仕える価値がなくなる事がそれだけ多いという事なのです。


我々は、依頼書を手に持っただけで、その後の依頼主と自分の未来が漠然と見えるという、能力を持っています。その未来は確定ではありませんが、かなりの確率でその通りか、それに近い状態になるので、選ぶ際にはかなり参考になります。

しかも、持っている力が強ければわかる未来の精度も上がりますし、いく通りかある可能性も見えてしまうのですよ。

ただ、やはり未来は不確定要素も多く含まれるので、何百年先まで見渡せるという事はありません。

それに関しては、どれだけ強い能力を持っていても変わらないのです。



わたくしは、歴代最高の評価を頂いて執事の資格を手にしたのですが、配属先を選ぶ際に奇妙な事に気付きました。

ある国から出ている依頼書の全てで、未来が判然としないのです。

これは、未来に関して不確定要素となるものが、その国にあるという事です。

なにが不確定要素となっているのか。

それを知りたくて、わたくしはその国の依頼書を全て集めてみました。

すると、王家からの依頼書のみ、未来が全く見えなかったのです。きっと、ここに不確定要素があるのでしょう。


それを見つけた時、わたくしは、まるで子供のようにとてもワクワクしてしまいましたよ。


そんなワケでわたくしは、王家を配属先に選んだのです。



では、本題の王家について語りましょうか……。


カイル殿下には公式発表として、2つ下にアベル王子、3つ下にリリス王女の2人の弟妹がいらっしゃいます。

アベル様はとても純粋な方で、騙されやすいところがあり、更に打たれ弱いところが御座います。なので、国の中枢を担うことは精神的にかんがえても、まず無理であろうと思っておりす。

リリス様は物怖じしない性格で腹芸も得意ですし、大局を見据える目も持っています。なので、3人の中では1番、王としての素質は高そうなのですが、男性の趣味が余り良くないので(破滅型の男性を好む傾向があるようです)、国を任せる事は出来ないでしょう。

そしてカイル様は、正に努力の人でした。子供の頃から良い王になろうと、様々な分野を学び、不安や重圧にも必死で耐えていらっしゃいました。

素晴らしい事だとは思うのですが、正直、あまり面白みの無い方だと思っておりました。

イメージ的には、ただの優秀な子供。一緒にいて楽しめる要素を見出せませんでした。


なので、専属の提案をされた際も、最初は断るつもりだったのです。

しかし、わたくしの勘が彼の専属になる様にと告げてきましたので、取り敢えず専属になってみることにしたのです。

魔族の人生は長いので、勘に頼って戯れに流されてみるのもまた一興、と思ったのですよ。それに、何時でも契約を切ることは出来ますし、ね。

しかし今となっては、あの時のわたくしを褒めたいと、心から思っています。


最近までのカイル様には、やっぱり面白みも何もありませんでした。

公爵家のルイス様やアンジェリカ様に仕える方が、色々と楽しめそうな程だったのです。

なのに、そんな状況が変化したのは、今年の入学式前日に食堂でカイル様が倒れた後からでした。


あの時から、人格が入れ替わった……いえ、混ざったのでしょうか?

元の真面目で努力家で情の厚い所はそのままに、観察力と判断力が格段に上がった様な気がします。さらに、何でも一人で抱え込んでいた所も、使える人材を最適な状況で使う事を考え、自分に余裕を持たせ始めたのです。私の事も、上手く使い始めたのではないでしょうか?

まあその分性格は少し悪くなった様な気がしますが、そこも殿下の魅力をさらに引き上げただけの様な気がします。

性格が悪くなったと言いましても、年齢相応の可愛らしいものですし、これからの殿下を良い方向へと導くものでしょう。

今のカイル様は、わたくしが“殿下”と呼ぶに値する方になってきました。

わたくしには、殿下が何を考えているのかがある程度伝わってきますので、思わず笑ってしまいそうになるのをこらえる事に苦労しております。

本当にあの方は……。



今ならば解ります。この国の“不確定要素”はカイル殿下であったのだと。



「近々、資質不足の側近を入れ替えて、各名門貴族の跡取り問題発生ってな事になると思うから、そのつもりで対応しておいて欲しい。それから十五日後位には、ロバートとジェシカが婚約解消するのだが、その影響で、その後隣国のヘンリーと軋轢が発生する可能性がある。ヘンリーには失脚してもらうつもりではいる。だから、大丈夫だと思が、関係各所に伝えて国際問題が起きないよう準備を進めておいてくれ。」


カイル様がカイル殿下になってから、そう間を置かずに告げられた言葉……

まるで、神から国への宣告を受けたかの様でした。

どんな問題が起こり、カイル殿下がそれにどう対応して、どのように成長していくのか……。

これから起こる出来ごとと、それによる若者たちの成長。それに思いを馳せると、自然と頬笑みが浮かんでしまいまうのです。

本当に今のカイル殿下は、わたくしを楽しませる天才だと思います。

あの時にわたくしは、カイル殿下にこの先も誠心誠意仕える事を誓ったのですよ。


人に仕えるのをこんなに楽しいと思った事は、はじめてなのです。

後日、チョット書き足すと思います。

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