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13 もう一度調べてみよう

内容がかなり鬱です。筆がのりません……

解散を告げても、何故だかダグラスはこの部屋に残っていた。

ビッチの側にいる時にも思ったのだが、その表情は俺の知っているダグラスとは違っている様に感じる。

そして、ここに残ったって事は、俺たちに何か話したい事があるんだろう。なんか、口をパクパクしてるしな。

何か言いたいが、話し出すきっかけが掴めないのだろう。


「ダグラス、お前はあいつらと一緒に行かなくて良いのか? ……それとも、まだ俺たちに何か話でもあるのか?」


取り敢えず、少しでも話しやすくなる様に水を向けてやる。

俺から声をかけてやると、ダグラスは驚いたような顔をして俺たちを見つめた。その様子から察するに、まさか声をかけて貰えるとは思っていなかった様子だ。

声をかけられた事に、一瞬嬉しそうな表情を見せたダグラスは、だが直ぐにその表情を、泣き出しそうな情けないものに変えて俯いてしまう。

そのまま暫しの沈黙が続き、冷めてしまった紅茶をダニエルが淹れなおし始めたタイミングで、嗚咽をこらえる様な声がダグラスから聞こえてきた。

誰もダグラスを急かす事などなく、彼が落ち着くまで優しい沈黙を保つ。


俺たちは、ダグラスが落ち着くまで、ゆっくりと紅茶を楽しんだ。

嗚咽が聞こえなくなるまでの間に、俺は紅茶を二杯も飲んでしまったから、お腹がガボガボだ。そんな俺を、ダニエルが残念な子を見る眼差しで見つめているのに気付いた。

ちょっ! だから、何度も言ってるけど、そんな目で俺を見ないで!!

しょうがないだろ!? 間が持たないんだよ!

俺は、シリアス体質じゃないから、こんな空気に耐えられないんだ! でも、空気を読んで我慢してるんだぞ!?


俺が心の中でダニエルに必死で文句を言っていたら、今度はダニエルに面白そうな、俺の反応を楽しんでいる様な笑みを向けられてしまった。


くそ! ダニエルめ!!

俺の心を読んでるんじゃないだろうなぁ!?


俺がダニエルと遊んでいる間に、ダグラスは落ち着きを取り戻した様で、顔を俯けたまま目元を片手で覆い、前髪をクシャリと掻き、聞き逃しそうな程小さな声で話し始めた。


「ボクはもう、自分がどうなっているのか、解らないんだ……。……助けて…くれ……」


ダグラスと知り合って十数年間で、初めて求められたSOSだった。



俺の知っているダグラスは、自信家で頭の回転が早く、油断できないヤツだった。

それが変わってしまったのは1年前。

相思相愛だった婚約者が病気で死んでしまった事で、ダグラスの心は少し壊れてしまった様で、全く笑わなくなった。自分の殻に閉じこもってしまい、俺たちを一切寄せ付けなくなってしまったのだ。

覇気がなくなり、家族とすら殆ど会話をしない。食事も、生きるための必要最低限程度しか食べないので、ドンドンと痩せていった。


でもこういうのってさ、結局は自分自身で乗り越えるしか無いだろう?

ゆっくりと時の流れが傷を塞いでくれるのを待つか、奇跡の出会いが訪れるか。


だから俺たちは、近づきすぎず、離れすぎずで様子を見守る事にしていたんだ。

……まあ、約1名を除くわけだが……。そう、ロバートだ。

奴は空気も読めないが、人の気持ちを思いやる事もできない。落ち込んでいるダグラスに付きまとい、「女は腐るほどいるんだ! 元気出せ!!」なんてデリカシーの欠片もない事を平然と言っていた。


そんなロバートを、俺たちはダグラスから引き離し、心が癒えるのを祈っていた。

ダグラスは1年経って、やっと貴族の標準的な外面を保てるくらいに快復してきたんだが、ビッチと出会ってしまった訳だ。

そのせいで、ダグラスはこんな風になっている訳だが……。

ビッチとダグラスが急速に近付いた理由。

……俺には、一つ思い当たる事があったりする。


確か、逆ハールートには、ダグラス攻略の裏技があった。

まず、出会いイベントにロバートを巻き込む。そうすると会話選択肢が増えるんだよな。

えっと、なんだっけあん時のセリフは……。

「何処か、痛いんですか?……まるで塞がらない傷を、必死で隠している手負の獣みたいに見えます」だったか?

その言葉でダグラスはビッチに興味を持ち、ロバートは「ミシェル!君ならダグラスを救えるかも知れない!」とか寝言をほざいて、ダグラスの情報を教えて、2人が会う機会を積極的に作るんだよな。そのお陰で、ダグラスの攻略難易度がかなり下がる。


……ロバート。……もう、何も言うまい……。


あとは、「彼女の分まで幸せになる義務がある」とか「忘れる事は罪じゃ無い」とかも言ってたな。

んで、落とされるセリフが「私にはその傷を隠さなくて良いんです! 痛むなら、私が手当てします! 是非、させて下さい!」だったか?


ビッチは、本当に男の心の弱みを見つけるのも、そこに付け入るのも上手いよな。

ただ……。そんなチンケなセリフに騙されるなよ、とも思うけどな。



「クラリスが死んで、あの時にボクの心も一緒に死んでしまったと思っていた。でも、まだ1年しか経ってないのに、あの頃よりも悲しみが薄れてしまっているんだ!! コレは彼女への裏切り、なんだよ……。だから……だからボクは、日毎薄れていく悲しみに苦しんでいたんだ!」


ダグラスは静かに涙を流しながら、語り始めた。

今度は嗚咽をこぼす事もなく、涙だけがとめどなく瞳から溢れている。


「そんな時に出会ったのが、ミシェルだった。彼女が僕に与えてくれる言葉は、まるで瘡蓋を無理矢理剥がそうとしている様で、塞がりかけていた場所から再び血が流れ出す様だった。なんだか……、薄れていた痛みが元に戻っていく様で、コレでボクはクラリスを裏切らずに済むと、そう思えたんだ……」


静かに、ビッチと出会ってからの心情を語るダグラス。その瞳に宿る感情は、一体どんな種類のものなのか……。

聞いてる方が、辛かった。……なんだよそのMプレイ。まるでセカンドレ○○だ。


そっか……。心の痛みに依存してたのか……。

そんな状態じゃまともな判断なんて、何も出来なくなってても不思議じゃない。でもな? 国を支える人間がそんな事では困るんだよ……。


ダグラスが抱えていた事情は理解した。

でも……、どうすっかなぁ……。


手っ取り早いのは、元凶と引き剥がす事か?

後は、カウンセリングでもして、リハビリして貰うか。

幸い、人材には心当たりがある。

なら、早速実行してしまおう!


「ダグラスは暫く、ミシェルとの接触は禁止だ。当分の間は、俺たちと過ごすようにして、講義以外は執務室に来るんだ」


ダグラスは隔離する事にした。





しかし……。

ダグラスの事は、かなりショックだった。まさかあのセリフで、あんな風に精神攻撃を受けていたなんて、な……。

話し合いが終わってから、アンジェリカとジェシカを部屋まで送り、ついでにダグラスも自室に送り届け、彼の執事に今日の事を伝えておいた。

カウンセラーには、ダニエルから依頼を伝えて貰っている。全ての根回しは完璧だ!


皆を部屋に送り届けた後、俺はルイスを部屋に招待して、お茶を飲んでいる訳だが……

お互い、何を話したら良いのか解らない状態だ。


「ねえ、カイル。あのミシェルっての本気でどうにかしないと、この国に影響が出てくると思うんだ。この学園内でも、解ってる6名以外にも色々と協力したり、隠れて求愛している奴らもいるみたいなんだよ……」


その噂は俺も聞いていた。

立場も身分も関係なく、ビッチに魅了されていく貴族子息達。このままでは、取り返しのつかない問題が起こる様な気がして、気が気でない。

これは、もっと詳しくビッチの事を調べる必要があるんじゃないのか?


「ダニエル」

「承知致しました」


ウチの有能な執事は、名前を呼んだだけで俺の言いたい事を察してくれたようだ。

流石、エスパーだよな!


「ルイス。お前もジェシカと2人で、学園内でのあの女の噂をもっと深く探ってくれないか?」

「勿論! 喜んで協力いたしましょう、カイル殿下……」


“ジェシカと2人で”って所が気に入ったのだろう。ルイスはとても嬉しそうに笑って、ご機嫌でこの任務を引き受けてくれたのだった。

少なめですが

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