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11 あいつだけは敵に回すな!

何とか今日中に間に合いました。

後もう一本間に合うかな?

ここだけの話だが……。

実は、ロバートとジェシカの事は、もう殆ど話が決まっていたりする。両家の筆頭執事に学園に来て貰い、現状を双方に伝えて貰った。その上で、ウチの両親(まあ、皇皇帝と皇妃だな)に俺の意見を伝えて、両家の間に入ってもらう様にお願いしてある。

その分、いつもより多めに書類が回ってきているのだが、可愛いアンジェリカと友人の為ならなんという事は無い。


もし今日、ゲームの中盤での山場である、あの「婚約破棄未遂イベント」が起こらなければ、王家の責任の元、穏便に“婚約解消”が行われる事になっている。しかし、あのイベントが起こってしまった時には、ジェシカ方のローリング侯爵家から、婚約破棄を行う事に決まっていた。

ジェシカにも、勿論その事は伝えている。

最初はショックを受け、ロバートとの関係継続を希望していたジェシカだったが、あの様子を毎日見ている内に限界が来たのか、最後は諦めた様子だった。


最近は、俺、ルイス、アンジェリカ、ジェシカの4人で過ごす事が多い。俺はアンジェリカと2人きりの方が嬉しいのだが、あんなに傷ついた状態のジェシカをそのままにしておく事は出来なかったんだ。

まだロバートと婚約している状態のジェシカを、ルイスと2人きりにする事も出来ない。そんな事をすれば、彼女まで『ふしだらな女』と言われてしまうから。

だから、4人で過ごすのが一番自然だったんだ。

俺とアンジェリカというカップルと、其々の親友だからな。その上、ルイスはアンジェリカの兄だし……。

まぁ、それをアンジェリカが望んでいたというのが、一番の理由な訳だが。(コレ大事!)



最近俺は、少しずつカイルの記憶が自分の物として、融合してきているのを感じる。元の俺を主体として、各人物へのカイルの気持ちが上乗せされていってる感じだ。

ルイスに対する信頼と友情の気持ち、ロバートには頭の可哀想な友人に対しての心配と憎めない奴と言う思い、ダグラスに対しては心配がとても強くあり、ヒューイには出来の悪い弟に対する様な気持ちが、ジェシカの事は妹の様に思っている。


ゲームキャラとして見ていた頃は、たとえ没落しようと、失脚しようと、何とも思わなかっただろうが、今は違う。出来るだけ何とかしてやりたいと、思っているのだ。

だからこそ、奴らには再々苦言を呈しているというのに、あいつらときたら……。


その分も、俺の怒りは、更にビッチに向かってしまう。俺のあいつへの好感度はドンドンと下がり続けている。もし好感度メーターがあれば、凄い事になってるよ? 下限がねーんだから。画面真っ青。バッドエンドまっしぐらだね。


いけねぇ、つい熱くなってしまった。ビッチへ毒を吐き始めると、止まらなくなるんだよな。

話を戻して……と。


アンジェリカに対しては、妹を思う様な気持ちと尊敬と、それから……少しの嫉妬をカイルは抱いていた様だ。

カイルは、アンジェリカが何の気負いもなく努力している姿に憧れ、嫉妬していたようだった。彼女が弱音を吐いてくれれば、「自分も辛いのだ」と、「一緒に頑張ろう」と言えるのに……。

彼女は、一切弱音を吐かず、当たり前のように努力する。ずっと心の奥に閉じ込めてはいたが、その姿が、たまらなく妬ましかった。

ビッチは、この嫉妬の部分を上手く刺激して利用する事で、2人の関係にヒビを入れたんだな、と、今なら解る。

だが、今、カイルの中の人は俺だ! 俺は、アンジェリカに対して、嫉妬など感じた事も無い。ただただ、可愛いとは思っているが、な!

だから、ビッチの策略などに、翻弄される筈がない!!


カイルの記憶を受け入れた事で、アンジェリカへの尊敬の気持ちはさらに強くなった。それ以外の物は、俺の気持ちが書き換えてしまったので、更に彼女を好きになってしまっただけだ。

これ以上好きにさせて、俺をどうする気なの?

……アンジェリカ……、恐ろしい子!




執務と悪巧みを終えた俺とルイスは、学園のカフェテラスで待ち合わせている、アンジェリカとジェシカの元へ行くため、廊下を少し急ぎ足で歩いていた。

しかし、どんなに急いでいても、決して優雅さを忘れてはならない。

放課後のまだ人気も多い廊下。立場的にも、常に人目を気にしなければならないのだ。


「そろそろロバート、限界だと思うんだよね。……ウチの妹ったら、あいつに毎日チクチクと嫌味を言いつづけてるから。あぁ! 早く爆発して、自滅してくれないかなぁ……?」


優雅な早足で歩いていると、天気の話でもする様な気軽さで、ルイスが毒を吐いた。

「ふふっ」なんて嬉しそうに笑っているルイスの笑顔、安定の黒さです。


「……ルイスは、ジェシカ側からの婚約破棄を望んでるんだよな?」

「もちろんそうだよ?……だってあいつ、ジェシカの事馬鹿にし過ぎだろう?いくらロバートがお馬鹿だからって、限度があるよ。ーーこの間なんか、中庭であの女とキスしてて、さ。それも、ジェシカの見てる前で。彼女が見ている事を知っている上で、だよ……? ……本気で、殺してやろうかと思ったよ。」


最後の一言の所で、ルイスが無表情になった。マジで怖いよ、ルイス。

そしてロバート……お前って奴は…。もう、フォロー出来ねえよ。馬鹿すぎるだろ?

俺がルイスのマジ怒りに引いていると、それに気づいた彼に


「もし君が僕の立場だったら、………どうする?」


と、俺を試す様に笑って、聞かれた。


ふむ。

アンジェリカがもし俺の目の前で、ズタズタに心を傷つけられたら………。


「……許さないな。とことん迄追い詰めて、俺を敵に回した事を死ぬ程後悔させてやる……」


俺は笑って答えたが、きっとこの笑顔はルイスと同じく、魔王のソレだろう。

ルイスは俺の答えに満足したのか、「でしょう?」と言って笑った。その笑顔の意味は、「解ったら、邪魔すんなよ? もし、邪魔したら……」って事だ。

邪魔なんてするわけがない。そんな恐ろしい……。

だから、了承した印に俺も笑って見せた。

黒い靄が漂っていそうな、俺たちの黒い笑顔での会話はしかし、学園のお嬢さん方には堪らなく麗しく見えた様だ。

俺たちが歩いている廊下の其処彼処から、感嘆の溜息が聞こえてきた。


しかし、ロバート……。

おまえ、一番敵に回してはいけない人物を……。

成仏、しろよ?




俺たちがカフェテリアに到着した時、中では何か騒ぎが起こっているようだった。


え?

これって、もしかして!?


嫌な予感がした俺たちは、集まっている人を掻き分け騒ぎの中心に近づいて行く。しかし、人だかりが凄くて、中々近づく事ができない。


「ですから! 貴方も貴族なら、もう少し醜聞を考えて行動なさったら? と、言っていますのよ! みっともないですわ!!」


何時もの冷静な彼女とは違って、少し感情的になっているアンジェリカの嫌味が聞こえてくる。そして、ジェシカの啜り泣く様な小さな声。


これは……!

イベントが始まってるじゃねえか!!

確かゲームでは、このイベントには、最初からカイルも一緒に居たはずだぞ!?


「みっともない事などあるものか! オレは、ジェシカじゃ無くミシェルを愛してるんだ! その為に必要だと言うなら、こんな婚約、はーーーーー」


慌てて人混みを掻き分けて、強引に近寄ろうとするのだが、間に合わない。今まさにロバートはあの言葉を言おうとしている。

アンジェリカが扇を振り上げーーー


ダーーーーーーーンッ!!!!


ロバートの言葉を遮る様に、大きな音がカフェテリアに響き渡った。

アンジェリカは音に驚いて、扇を振り上げたまま固まっている。


では、あの音はどこから……?


集まっていた人垣が、音のした場所に向かって、左右に開いていく。

開けた視界に見えたのは、誰もいない場所にあったテーブルセットが、派手に蹴り倒されている光景とーーーー


「ごめんね? 足、引っ掛けちゃった……」


今までで一番綺麗に笑うルイスの笑顔がそこにあった。

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