プロローグ
テンプレの乙女ゲーム転生物です。
ウチの妹が乙女ゲームにハマった。
「君の為に全てを賭けて」そんなタイトルの、中世ヨーロッパをイメージしたファンタジー世界で、貴族達が通う『ホワイトローズ学園』を舞台にしたキャラクター攻略ゲームだ。
俗にいう、乙女ゲームってやつ。
このゲームは、パソコンソフトが先行して売らられ、人気が高かったため、各機体でもリリースされたというものだった。
妹は、毎日リビングのテレビを使ってそのゲームをしていて、俺に攻略を手伝わせていた。
攻略本は出ているのだが、それに沿ってゲームを進めるのは「負けた気がする」らしいのだ……。
「この場合、どっちの返答されたほうが、お兄なら好感度が上がる?」
などと選択肢が出るたびに、俺に聞いてくる。
俺に聞いて選択肢を選んでる時点で、’’自力’’ではないと思うのだが、それは別に構わないらしい。
少しゲームの内容を説明しておくと。
ゲームは、ヒロインが貴族の子息・子女が通う全寮制の『ホワイトローズ学園』に入学する所から始まる。
攻略対象は、通常は6人。
更に全ての対象のルートで、ハッピーエンド・バッドエンド・ノーマルエンド・そして、全てのキャラクターとのフラグを破壊して’’お友達’’になることで迎えるトゥルーエンドの全てを見ることで、隠しキャラが現れる。その隠しキャラを入れると、攻略対象は7人となる。
さらに、7人全てのキャラクターの全エンディングを攻略すると、逆ハーレムエンドへのシナリオが解放されるらしい。
妹は逆ハーレムエンドを目指して、夏休み中、必死で頑張っていた。甚だ遺憾ではあるが、それに付き合わされる俺まで、主人公と攻略対象の正しい選択肢の全てを覚えてしまう程に……。
現役大学生が、妹と夏休み中家に篭って何をやってるんだとは思うが、妹にお願いされると断れない程度にはシスコンなんだから、しょうがない。
それにしても……。
「この主人公ってとんだビッチだよな? どこが’’性格が良くて頑張り屋’’なんだ? まあ、ある意味頑張り屋なのは認めるけどな」
男をたらしこむ為の努力は認める。
「しかも行動がバカすぎるだろ? 常識も無さ過ぎるし。 婚約者のいる男に、何で平気で言い寄るんだ?? こんなやつ、リアルにいたらDQNだぜ? なのに、こんなのがヒロインなのか!?」
たかがゲームに、マジレスしてしまう俺。
そんな俺の意見に、妹はケラケラと笑いながら
「それは言っちゃらめぇ〜!!」
なんて言っている。
障害がある程燃える(萌える?)のだそうだ。
良く分からん。
俺としては、’’悪役令嬢’’として登場するライバルキャラの方が、よっぽど好感が持てるんだけど……。
隠しキャラの婚約者である公爵家の令嬢として、どのキャラクター攻略時にも登場する彼女。
顔立ちはキツめに描かれているが、かなりの美人さんだ。
正義感が強いのか、モブキャラ達から主人公への行き過ぎたイジメに対しては、止めるように注意し庇うが、主人公への嫌味はしっかり堂々と本人へ伝える。
俺からすれば、その嫌味はもっともな指摘だと思うのだが、主人公は「自分は嫌われているから」と思っており、バカな攻略対象達も「ヒロインタンを虐めるな!!」なんて言ってる。
マジでDQNだらけ。
DQNに囲まれた中では、貴族としての常識と矜持を持った公爵令嬢は、悪役になってしまうらしい。
恐ろしい世界だぜ。
あんな世界にいたらきっと、頭がおかしくなる。
俺は、現代日本で暮らしている自分を幸運だと思った。